ビジネスQ&A

I.会社法務I.会社法務一覧へ

【第1編 取引・契約の問題解決】 - 第2章 契約の効力 -

債務不履行

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1997年4月:掲載

納品期限に違反した場合、違反した当事者に対しては、どのようなペナルティーが課せられるのでしょうか。

 甲は日用雑貨を取扱っている個人商店ですが、最近卸問屋の乙社からの納品が遅れて困っています。これではとても商売にならないのでクレームをつけたいのですが、どのような手段が取れますか。

甲としては、速やかに債務を履行するように要求(できたら書面で)した上で、契約を解除したり損害賠償を請求できます。

1.債務不履行とは?
 契約関係にあり一定の債務を負う当事者が、その債務を負うことによって当然期待される履行をしないことを「債務不履行」といいます。  つまり、債務の本旨にしたがった履行をしないことのことです(民法415条)。何が債務の本旨にしたがった履行であるかは、法律の規定や契約の趣旨、取引慣行等を基準として判断しなければならないのですが、通常次の3つに分類されます。

(1)履行遅滞
 債務の履行が可能であり債務の遅滞を正当化する事由がないにもかかわらず、債務者の責めに帰すべき事由により履行期に履行をしなかったことを言います。効果としては、遅延による損害賠償請求と契約解除権(同法541条)があり、契約を解除して損害賠償を請求することも出来るし(同法545条3項)、契約をそのままにしたままで損害賠償も請求できます。

(2)履行不能
 債務者の責めに帰すべき事由により、債務者の履行が不可能になることを言います。「不能」とは、物理的に不可能な場合に限らず取引観念上の不能も含まれます。効果としては、本来の履行に代わる損害賠償請求と契約解除権(同法543条)であり、両者の関係は1と同じである。

(3)不完全履行
 債務が履行されたが、その内容が債務の本旨に従わない不完全なものである場合をいい、1と2以外のものをいいます。効果としては、履行が不完全であったことによって生じた損害賠償請求と契約解除権が発生し、追完が可能であるような場合は債務の本旨にしたがった完全履行請求権も発生します。
2.契約期限が守れない場合は?
 設問の場合のような「履行遅れ」とは、債務を履行すべき時期にあり、且つ債務者が履行可能であるにもかかわらず債務者の責めに帰すべき事由により履行されないことを言い、履行遅滞の問題となります。
 そこで、債務の履行期限がどのように定められているのか明らかでないことから、場合分けして考えます。
 まず、確定期限付債務の場合ですが、そのような場合は期限が到来することにより当然に履行遅滞となります。もちろん一定時期を過ぎても商品を作成・供給することは可能ですから、約束の商品を遅れても債権者に納めた上で遅延賠償すれば足りる場合もあるでしょうが、商品の中には、時期が過ぎて商品を受け取っても全く意味がないこともあります(結婚式の引出物などのいわゆる定期行為と呼ばれるもの)ので、そのような場合は、債権者とすれば、時期に遅れて債務者が持参した商品の受け取りを拒絶した上で債務者に対して履行に代えて全部の損害賠償の請求が出来ることとなります。
 次に、期限の定めなき債務の場合は、債務の発生時に履行期にあるとされています。従って、債権者がいつでも履行を請求でき、債務者が履行の請求を債権者から受けた時に履行遅滞となります(同法412条3項)。ただ、消費貸借の場合は、相当の期間を定めて履行を催告しなければ履行遅滞にならないことは注意が必要です(同法591条1項)。
 最後に、不確定期限(例えば、巨人が優勝したらとか)付債務の場合ですが、この場合は債務者が期限の到来を知った時から履行遅滞になります(同法412条2項)。債権者からの催告は必要ありません。
対応策
 商品が季節ものであるような場合は、確定期限付債務である場合が多いでしょう。そのような場合は、甲とすれば、乙社に対して遅延による損害賠償の請求をすると同時に商品の一刻も早い納入を要求すべきですが、もし商品が五月人形とかクリスマスツリーとかいったものであれば、1年後に売るわけにはいきませんので、乙社が商品を遅れて納入してきてもこれを拒絶して履行に代わる全部の損害について賠償請求すべきでしょう。
 商品の納入に特に期限をつけていなかった場合には、甲がまず乙社に履行を請求する必要があります。それでも乙社が商品を納入しないようなら、先ほどと同じようなクレームになるでしょう。
 不確定期限の場合は、甲が乙社に期限の到来を確認(催告ではないことに注意)した上で乙社が履行しないようなら、これまた先ほどと同じようなクレームをつけることが出来るでしょう。

(C)2002 Makoto Iwade,Japan

ビジネスQ&Aトップへ

ロア・ユナイテッド法律事務所

〒105-0001
東京都港区虎ノ門1-1-23
虎ノ門東宝ビル9階

TEL/03-3592-1791(代) FAX/03-3592-1793

【受付時間】 9:30~18:30
【法律相談時間】10:00~18:00
(土日、祝日、臨時休業日を除く)

別途夜間法律相談を承ります。(要予約制)

法律Q&A