法律Q&A

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不動産登記簿の記載事項

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1997年4月:掲載

不動産登記簿を閲覧したら、表題部と甲区と乙区に分かれていました。これはどういう意味ですか。

乙社の事務所所在地の土地と建物の登記簿謄本を取寄せたのですが、なにぶん登記簿なるものを見るのが初めてで、どこをどう見ればよいのか皆目見当がつきませんので、登記簿の見方を教えてください。

不動産の物理的な現況については表題部、所有権関係は甲区、所有権以外の権利関係は乙区を参考にしてください。

1.登記簿の基本的記載事項
 不動産登記簿は、次の通り、大きく分けて3つの部分から成り立っています。
(1)表題部
不動産の表示に関する登記事項、すなわち不動産の物理的現況が記載されます。
(2)甲区用紙
所有権に関する事項の登記が記載されます。(不登法3条)
(3)乙区用紙
用益物権・担保物権・賃借権・採石権の権利変動(登記事項)が登記されます。
2.土地登記簿の場合
 表題部については、土地の存在場所を行政区画を基準としてあらわす「所在」、土地一筆毎に付せられる番号である「地番」、土地の用途のことで土地利用の現況を示す「地目」、土地の大きさ、面積を表す「地積」の合計4つがその主なものです。
なお、所有権の登記がない場合には、表題部用紙の一番後ろの空白欄に土地の所有者の氏名・住所が記載され、所有者が二人以上のいわゆる共有の場合も同じ欄に共有者のそれぞれの持分が表示されますし、土地の現況が変化した場合や土地の分筆や合筆により土地の個数が変化した場合は、登記原因とその日付が所定の欄に記載されます。
甲区用紙については、順位番号欄と事項欄に分かれています。前者は、登記の優劣を決定するためのもので、同区になした登記については順位番号により、また別区になした登記については受付番号によることとなっています(不登法4条)。従って、順位番号の順に所有権の移転状況が明確になるのです。後者には、所有権に関する権利変動が具体的に記載されます。例えば、「保存」「移転」「変更」「消滅」等が挙げられます。
乙区用紙については、用益物権(他人の土地を使用する権利)として地上権・永小作権・地役権の3つ、担保物権(他人の土地の換価価値により優先弁済を受ける権利)として先取特権・質権・抵当権(根抵当権を含む)の3つ、そしてこれらに賃借権と採石権を加えたものが記載される権利であり、記載される権利変動としては、甲区同様「移転」「変更」「消滅」等があります。
なお、土地そのものがなくなってしまった場合は、登記簿の表題部を閉鎖することとなります。
3.区分建物登記簿の場合
 建物とは、「屋根及び周壁またはこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供しうる状態にある」ものをいいます。登記できる建物であるかどうかは、所有権の対象(不動産取引の対象)としての独立性と用途性にあります。
まず、表題部ですが、建物の敷地を土地の地番で表示する「所在」、建物を特定するために登記所で定める番号である「家屋番号」、建物の用途である「種類」、建物の構成材料や屋根の種類、階数により表示する「構造」、建物の広さ・大きさを表す「床面積」の5つが主なものです。主たる建物と利用上ないし取引上一体をなしている物理的には別棟の建物を「付属建物」といいますが、これは主たる建物と不動産取引において一体として取扱われるので主たる建物と同一の登記用紙に登記され、登記事項は「種類」「構造」「床面積」です。更に、建物の物理的状況に変化を与えた原因とその日付と登記手続が完了した日付が記載されます。
なお、表題部用紙の一番最後の空白欄への所有者の記載については、前述した土地の場合と同様です。
甲区及び乙区用紙の見方は、前述した土地の場合と同様です。
4.建物登記簿の場合
 1棟の建物の各部分が構造上の区分性及び利用上の独立性を有していれば、その各部分は各別に1個の建物として扱われます。これを区分建物といいますが、その特殊性から登記簿は別に作られております。区分建物の登記簿には、1棟の建物の表題部が存在することと敷地権の表示が表題部において登記されていることの2点が、通常の建物登記簿と異なります。
まず、1棟の建物の表題部ですが、1棟の建物の存在する場所を示す「所在」、1棟の建物の番号がある時には「建物の番号」、通常の建物と同一方法にて算出表示する「床面積」、敷地権の対象となる土地の所在、地番、地目、地積を記載する「敷地権の表示」が記載されています。更に、専有部分の表題部ですが、登記所が付した「家屋番号」、主な構成材料と階数より表示する「構造」、各専有部分の内壁で囲まれた部分の水平投影面積による「床面積」、敷地権の目的たる土地の符号・敷地権の種類・敷地権の割合等からなる「敷地権の表示」が記載されています。
甲区及び乙区用紙の見方は、前述した通常建物の場合と同様です。
区分建物の所有者は、専有部分を処分する時には敷地利用権も同時に処分しなければならない(建物区分22条1項)ことから、登記においても、区分建物の表題部に敷地利用権を表示すると共に、建物の敷地の登記用紙には「敷地権たる旨の登記」をするのです。このようにして、専有部分と敷地利用権は一体のものとして専有部分の登記用紙に公示されるのです。

対応策

解説に述べたことを参考にすると、乙社の所有不動産に関する最低限の情報は入手することが出来るはずです。さらに調査が必要な場合は、設問[2-5-3]や[2-6-1]も参照して、より詳細異な調査をすべきです。

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