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【第10編 労務管理の問題解決】 - 第4章 労働契約と従業員の義務 -

内部通報制度を構築するうえでの留意点

弁護士 難波 知子 2018年1月:掲載

内部通報制度を構築するうえで留意すべき点は?

①秘密保持や不利益扱い禁止を徹底する環境の整備、②経営幹部主導による実効性の高い制度の整備・運用、③規模や業種等実情に応じた適切な取組の促進、④社内調査、是正措置の実効性の向上に留意して制度構築すべきです。

1.公益通報者保護法の制定・概要
 内部告発をした労働者を保護するための公益通報者保護法が平成18年4月1日から施行されています。
 公益通報者保護法制定の背景には、①終身雇用制度の崩壊や非正社員の増加による職場環境の変化等により、会社に対する忠誠心が薄らぎ、内部告発が増加したことのほか、②企業の不正行為により、国民の生命・健康が害される危険がクローズアップされてきたこと、③企業におけるコンプライアンス意識が高まってきたこと等があります。
 企業不祥事による国民への被害拡大を防止するために通報する行為は、正当な行為として事業者による解雇等の不利益な扱いから保護されるべきものです。
 そこで、公益通報者保護法では、事業者に対して、公益通報をしたことを理由とする解雇の無効やその他の不利益な取り扱いの禁止や、公益通報者に対する是正措置等の通知などが定められています。
2.事業者による適切な処理のためのガイドライン
ガイドラインの公表・改正
 従前、消費者庁(平成17年7月19日制定当時は内閣府国民生活局)は、事業者のコンプライアンス経営への取り組みを強化するために、労働者からの法令違反等に関する通報を事業者内において適切に処理するための指針として、「公益通報者保護法に関する民間事業者向けガイドライン」を作成、公表していました。このガイドラインは、事業者のコンプライアンス経営への取組みを強化するため、従業員等からの法令違反等の早期発見・未然防止に資する通報を事業者内において適切に取り扱うための指針として定められたものです。
 ところが、その後も企業の内部制度が機能せず、大きな不祥事に発展した事例が発生しました。
 そこで、消費者庁は、平成28年12月9日付けで上記ガイドラインを大幅に改正した「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」(以下「ガイドライン」といいます。)を公表し、内部通報制度の整備・改善を進めるため、事業者が自主的に取り組むことが推奨される事項を具体化・明確化しました。
 この改正により、その内容は、相当詳細かつ具体的になりましたので、ガイドラインを参照することにより、事業者は、制度構築がより容易になりました。今後、未だ制度を構築していなかった企業は、このガイドラインに基づき制度を構築し、既に制度を構築していた企業でも、適切に運用できていなかった、もしくは、通報が全くなかったような企業は、ガイドラインを参照しながら制度を見直すのがよいといえます。
 ガイドラインでは、主に以下の視点から事業者が取り組むことが推奨される事項が具体化・明確化されていますので、企業はこれらの点に留意して制度構築すべきです。

①通報者の視点:安心して通報ができる環境の整備
・通報に係る秘密保持の徹底
・通報者に対する不利益な取扱いの禁止の徹底
・自主的に通報を行った者に対する懲戒処分などの減免

②経営者の視点:経営幹部の主導による実効性の高い内部通報制度の整備・運用
・経営幹部が果たすべき役割の明確化
・経営幹部からも独立した通報ルートの整備
・内部通報制度の継続的な評価・改善

③中小事業者の視点:中小事業者の取組の促進
・規模や業種などの実情に応じた適切な取組の促進
・関係事業者全体における実効性の向上

④国民・消費者の視点:制度の適切な運用を通じた企業の社会的責任の実践
・法令違反などに対する社内調査・是正措置の実効性の向上
3.ガイドラインを踏まえた制度構築
(1)通報窓口の設置・制度の構築
 事業者は、通報の受付、調査、是正措置の実施、再発防止策の策定までを適切に行うため、通報を処理する仕組みを整備し、適切に運用することが必要です。
 まずは、内部規程等において経営幹部の役割を明確にすることや、経営トップ自らが経営幹部及び全ての従業員に向け、コンプライアンス経営推進における内部通報制度の意義、重要性等のメッセージを継続的に発信することが必要です。
 そしてガイドラインを参考に、まずは、内部通報の受理窓口を設置することが必要となります。通報窓口や受付方法は、規程等で明確に定め、どこに、どのように通報すればよいか明確にしておくことが重要です。外部の法律事務所、民間の専門機関、事業者団体や同業者組合等関連事業者共通の窓口を設置すること等、通報窓口を拡充することが推奨されています。経営幹部からの独立性を有する通報ルートの整備も重要です。
 制度の整備・運用にあたっては、従業員の意見等を反映したり、制度についての質問・相談を受け付けたり、周知・研修を継続的に実施したりすること等が必要とされています。また、通報窓口の利用者の範囲(パート、アルバイト、取引先、退職者等)や、通報対象となる事項の範囲を幅広く設定することが推奨されています。
 さらに、内部規程に従業員等の調査への協力義務を明記すること、通報対応状況につき第三者による検証等を行うこと、適切な担当者の設置・育成等が求められています。

(2)通報者等の保護
 通報の受付、調査実施における秘密保持の徹底も、非常に重要とされています。匿名の通報を受け付けることが必要とされているほか、通報に係る資料を閲覧できる者を最小限にする、資料は施錠管理する、関係者の固有名詞を仮称表記にする、といった対応例が挙げられています。さらに、調査実施においても、定期監査と合わせて調査を行う、抜き打ちの監査を装う、該当部署以外の部署にもダミーの調査を行う等の工夫が必要とされています。
 また、通報者や調査協力者に対して、法律上の公益通報のみならず、内部規程による通報、協力したことをもって、解雇その他不利益な取扱いをすることも、禁止されています。万が一、不利益取扱いがなされた場合には、救済・回復措置を講じること、不利益な取扱いを行った者に対しては、懲戒処分等を講じること等が求められています。

(3)フォローアップ・評価・改善等
 通報への対応が終了した後も、通報者等に対して何か不利益な取扱いを受けていないか確認したり、不正行為が再発していないか確認するといったフォローアップも重要とされています。
 最後に、内部通報製度の継続的な評価・改善も重要とされています。整備、運用状況・実績、周知研修の効果、従業員等への信頼度等、内部監査や中立・公正な第三者等を活用した客観的な評価・点検等を定期的に実施し、その結果を踏まえ、経営幹部の責任のもとで制度を継続的に改善していくことが必要であるとされています。

(C)2018 Makoto Iwade,Japan

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