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定期健康診断で異常が発見された場合の二次健診に労災保険が使えますか?

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.06.19

問題

会社が行なった従業員に対する定期健康診断(健診)で異常が発見された場合、再度の健康診断(二次健診)についても申請により労災保険から支給されるのですか。

回答

 原則として、過労死に絡む健診項目のすべてに異常所見がある場合に限りますが、労災保険給付として、二次健診が受けられます。
解説
1 二次健診給付制度
 増大するいわゆる過労死の予防対策として、平成13年4月1日以降、労働安全衛生法(労安法)66条1項等の健康診断で業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生に関連する血圧検査等の検査の結果、労働者に異常の所見があると診断されたときに、その労働者に対し、医師による二次健康診断及びその結果に基づく保健指導が労災保険の保険給付(現物給付。以下、二次健診等)として認められることになりました(労災保険法26条乃至28条)。
2 給付の要件
 二次健診等が認められるのは、労安法 66条1項の規定による健康診断等による健康診断のうち、直近のもの(1次健康診断)において、血圧検査、血液検査その他業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生にかかわる身体の状態に関する検査であって、労災保険法施行規則で定める血圧測定等が行われた場合で(同則18条の16第1項)、その検査を受けた労働者がいずれの項目にも異常の所見があると診断されたときに、その労働者に対し請求に基づいて行われます。なお、1次健康診断の結果その他の事情により既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状があるものは除かれます(26条1項)。それらの者は、健康保険や労災保険の療養給付等が支給されることになります。
3 二次健診等の内容
 二次健診等の内容としては、先ず、脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査についての医師による健康診断(2次健康診断)で、その内容は、1年度につき1回に限りますが、空腹時血中脂質検査等です( 26条2項1号、労災保険則18条の16第2項)。

 その外、2次健康診断の結果に基づき、脳血管疾患及び心臓疾患の発生の予防を図るため、2次健康診断ごとに1回に限りますが、面接により行われる医師、保健婦又は保健士による保健指導(特定保健指導)が受けられます( 26条2項2号)。この特定保健指導も、前に述べた二次健診と同様に、2次健康診断の結果等により既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状があるものは除かれます(26条3項)。

4 二次健診後の事後措置
 2次健康診断を受けた労働者からその2次健康診断の実施の日から3箇月以内にその2次健康診断の結果を証明する書面の提出を受けた事業者には(労災保険則 18条の17)、その診断結果に応じた、業務の軽減措置等の義務(労安衛法第66条の4)が生じます(27条。事後措置の詳細につき「健康診断結果に基づき事業者が構ずべき措置に関する指針」平8.10.1指針1号、改正平12.3.31指針2号参照)。なお、二次健診等は、労働者の請求ある場合になされるものです。従って、前記指針も、二次健診については、事業者が労働者に対して、その受診を推奨すべきとしています。しかし、判例上使用者に課せられた健康配慮義務からは、より積極的に受診させる配慮が必要でしょう。

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