労災Q&A

雇止めと試用期間

弁護士 大濱 正裕(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2007.01

問題

労働者の適性を評価・判断することを目的として、期間の定めのある新規労働契約を締結した場合において、その労働者との契約を終了させるにあたり会社が留意すべき事項。

回答

 上記目的により採用した期間雇用者の雇い止めは、同人との契約が1度も反復更新していなかったとしても、勤務成績不良や勤務態度不良といった客観的かつ合理的理由なく安易に行うべきではない。
解説
1 反復更新された有期労働契約の雇い止めに関する判例法理
 契約期間を定めて雇用している者に対し,契約期間満了時に契約を更新しないこととする場合を「雇い止め」と言います。かかる雇い止めについては、裁判例の蓄積により以下のような理論が形成されています。すなわち「反復更新された労働契約関係は、実質的には期間の定めのない契約と変わりがなく、雇い止めの意思表示は「解雇」と実質的に同一であり、解雇に関する労働基準法等の法規制(例えば、労基法18条の2の解雇権濫用法理)が類推適用されるべきである」との理論です。
2 反復更新に関する期待利益に合理性がある場合の有期労働契約の雇い止めに関する判例法理
 判例は上記のような反復更新された有期雇用契約の場合の理論を推し進め、「期間の定めのない労働契約と実質的に同視できない場合でも、雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性がある場合は、解雇権濫用法理を類推し、雇い止めに合理的理由を求める」との理論を形成しました。ここでいう「合理的理由」について、裁判例では「[1]雇用の臨時性・常用性[2]更新の回数[3]雇用の通算期間④雇用継続に対する期待を持たせるような言動や制度の有無」などの要素を勘案しているケースが多いと言えます。
3 本件のケースにおける雇い止めに関する判例法理
 さて、ご質問のケースでは、今まで一回も契約を更新されていないのですから、上記1、2の判例法理によれば、労働者の期待利益に合理性がないとして、雇止めが容易に認められるようにも思われます。しかし、最高裁は、仮に一度も更新をしたことがない場合であっても、「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。」と判示しました(最判第3小法廷平成2年6月 5日)。そして、試用期間付雇用契約の法的性質については、解約権留保付雇用契約であると解するのが相当としたうえで、同解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合に許される」との規範を定立しました。
4 結論
 このように、仮に一度も契約を更新していない場合であったとしても、労働者の適正を判断するために期間を定めて労働契約を締結していた場合、その期間満了で必ず契約が終了するという労使双方の明確な合意があるという例外的な場合を除き、同期間は期間の定めのない契約における試用期間と解釈され、その期間満了という理由だけで雇い止めをすることができず、勤務成績不良や勤務態度不良といった客観的な合理的理由がなければ雇い止めができないこととなります。よって、仮に新規契約において、有期雇用契約の形式をとっていたとしても、かかる判例法理により、解約権留保に客観的合理的理由を要求するといった労働者保護の法理が適用される場合があるので、安易な雇い止めは差し控える必要があります。

ビジネスガイド平成19年1月号掲載

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