弁護士 小林 昌弘(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2001.09.05
先日、当社の社員が無断で会社の商品を持ち出したため、懲戒規定により1週間の出勤停止処分にしました(無給)。その期間中は当然自宅謹慎するものと思っていましたが、知り合いのところへアルバイトに行っている事実が判明しました。出勤停止ということは単なる出社禁止ではなく、自宅で謹慎することと理解していますが、今後出勤停止の場合、自宅謹慎を命じることはできないでしょうか。
懲戒処分としての出勤停止処分の内容として、自宅謹慎まで含めた処分を命じることはできないと解されます。
- 1.出勤停止の意味・種類
- 出勤停止とは、労働契約を継続しつつ労働者の就労を一定期間禁止することを言い、通常は、次のとおり、懲戒処分としてのものと業務命令としてのものがあります。
(1)懲戒処分としての出勤停止
懲戒処分としての出勤停止は、服務規律違反に対する制裁として命じられるものです。
懲戒処分として命じられるものである以上、就業規則に規定があることが必要であると一般的には解されています。この場合、出勤停止期間中は、無給とされ、勤続年数にも参入されないのが通常です。
ご質問のケースは、こちらの出勤停止に当たります。
(2)業務命令としての出勤停止
これに対して、業務命令としての出勤停止には、[1]懲戒処分を課すべきか否か、及び、課すべき懲戒処分の内容を決定する前提として、事実関係の調査や処分内容の決定をするまでの間に命じられるもののほか、[2]従業員を出社させるのが不適当であると会社が判断した場合に命じられるものがあり、いずれも業務命令として命じられるものです。
業務命令として命じられるものである以上、就業規則に規定があることは必要ありません。ただし、懲戒処分ではなく業務命令によるものですから、有給であることが大原則となります。したがいまして、事故発生、不正行為の再発、証拠隠滅のおそれなどの実質的な理由が存在しない限り、賃金支払義務を免れることはできません(京阪神急行電鉄事件[大阪地判昭37・4・20労民13-2-487]、及び、日通名古屋製鉄事件[名古屋地判平3・7・22判タ773-166]参照)。
- 2.自宅謹慎(待機)を命じることの可否
- 以上のご説明は、「出勤停止」、つまり会社における「就労を禁止」する処分についてのものですが、さらに「自宅謹慎(待機)」、つまり「外出を禁止」することまで命じることができるのでしょうか。
(1)懲戒処分としての出勤停止の場合
懲戒処分として出勤停止を命じる場合に、さらに自宅謹慎も命じることは、基本的人権である「人身の自由」(憲法18条)を奪うことになる以上、いくら懲戒処分といえども、認められないと考えます。
したがって、懲戒処分として出勤停止を命じる場合に、さらに自宅謹慎も命じることはできないと解されます。
ご質問のケースでは、出勤停止中に知り合いのところへアルバイトに行っている事実が判明したとのことですが、この点については、兼職禁止等の就業規則違反があれば、別途、懲戒処分を行うことで対処すべきでしょう。
(2)業務命令としての出勤停止の場合
これに対して、業務命令として出勤停止を命じる場合には、さらに自宅謹慎ないし待機を命じることは、相当な理由が存在する限り、認められると解されます。
相当な理由としては、前述の裁判例で指摘されているように、事故発生、不正行為の再発、証拠隠滅のおそれなどが存在する場合が挙げられます。その他にも、裁判例では、取引先と直接接触するセールスマンが、仕事上関わりがあったデモンストレーターの女性と不倫関係に陥ったことが原因で、会社の信用が失墜した場合につき、そのままセールス活動を続けさせることは業務上適当でない等の理由から、自宅待機命令(2年間)は相当な理由があるとしたものがあります(ネッスル事件[東京高判平2・11・28労民41-6-980][原審は静岡地判平2・3・23判時1350-147、判タ731-150、労判567-47等])。また、降格処分を確定するための調査・審議のため(1か月間)及び飲酒による肝機能障害の療養・禁酒のため(その後の3か月間)の自宅待機命令は人事権の濫用には当たらないとしたものがあります(星電社事件[神戸地判平3・3・14労判584-61])。
- 3.結論
- 以上から、有給であることを前提とした業務命令としての出勤停止であれば、自宅謹慎ないし待機を命じることができる場合があるでしょうが、無給であることを前提とした懲戒処分としての出勤停止である場合、自宅謹慎を命じることはできないと解されます。
労政時報第3537号
