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職場のトラブル相談室

出勤停止期間の制限

懲戒処分を行う場合、いわゆる「減給の制裁」に関しては、労基法91条によりその限度が定められていますが、出勤停止の期間については、特に労基法上規定が見受けられません。出勤停止の期間は無制限に認められると理解してよいのでしょうか。

また、従業員が「『使用者の命令』による休業なので、出勤停止期間中、会社は休業手当を支払うべきではないか」と主張してきた場合、どのように対応すればよいでしょうか。

出勤停止期間については、一般的に7日、10日ないし15日間を定めている会社が多く、就業規則上、出勤停止の処分とは別に懲戒休職の処分を定めている会社では懲戒休職の期間を1か月ないし3か月と定めているのが通例であり、これらの期間を超える規則を定め、実際に処分をした場合は、公序良俗ないし権利濫用として無効とされる可能性があります。

休業手当については、会社は当該従業員に対して、当該従業員を就業させることによって、職場において事故が発生したり、職場の秩序が保持できなかったり、不正行為の再発のおそれがあるなど、就労を許容しないことにつき実質的合理的理由があることを、具体的な事情や根拠をもって説明したうえで、休業手当を支払う義務はない旨回答すれば足りると考えます。

1 出勤停止期間について
 出勤停止とは、会社の服務規律違反に対する制裁として、労働契約を存続させつつも、労働者の就労を一定期間禁止することを言います。自宅謹慎や、懲戒休職と呼ばれることもあります。

 かかる出勤停止の期間については、確かに明確な法律上の規制はありませんが,行政解釈では「公序良俗(民法90条)の見地」から当該事犯の情状の程度等により制限があるべき旨が述べられています(昭23・7・3基収2177号)。また,戦前の工場法時代の行政解釈があり,「出勤停止は職工の出勤が工場の秩序を乱しまたは本人の反省を促すに必要な場合等やむを得ざる場合においてこれを認めるも7日を限度とすること」(大15.12.13発労71号)とされていました。現在でもこれらの行政解釈を一応の基準として行政指導が行われているようで,各社の就業規則では「7日」または「10日ないし15日」としている例が多いように見受けられます。他方,国家公務員の場合は,その「停職」期間は1日以上1年以下(国家公務員法83条)とされており、それと比較すると7日、10日ないし15日という期間は短いのではないかとも考えられます。

 出勤停止処分に関する裁判例として、ダイハツ工業事件(最高裁二小昭58.9.16判決)が20日間の出勤停止処分を認めていることをも勘案すると,最長で1ヶ月程度は情状の程度により認められる場合もあると思われます。

 なお、就業規則上、出勤停止処分とは分けて懲戒休職処分を定めている場合、懲戒休職は、各社の就業規則上、通例で1か月ないし3か月と長く、かつ、懲戒休職期間中は賃金が支給されず、勤続年数にも算入されないのが通例であることから、労働者にとって重大な不利益を及ぼす処分として、裁判所ではその処分の有効性の判断は厳しく判定されています。この点、盛岡地一関支判平8・4・17(労働判例703号71頁)では、6か月の懲戒休職処分が重過ぎるとして、3か月の限度で有効と判断しています。

 以上のように、出勤停止処分にせよ、懲戒休職処分にせよ、その期間につき無制限に認められると理解することは妥当ではありません。

 なお,出勤停止期間や懲戒休職期間を定めるに当たっては、その期間が暦日か労働日かを明確にしておくべきであり、いずれを選択するかによって、休日の多い月,少ない月で,かなりの差が出てきますので、この点注意が必要です。
2 休業手当について
 出勤停止には、厳密に分ければ、懲戒処分そのものとしての出勤停止と、普通解雇や懲戒解雇の前置措置として、それらの処分の妥当性につき調査、決定するまでの期間就業を禁止する業務命令としての出勤停止、従業員に業務を従事させるのが不適当と認める事情がある場合に業務命令として行われる出勤停止とに分類することができます。

 懲戒処分そのものとしての出勤停止の場合、前述のように、通常就業規則にて無給としている会社が多く、しかも、従業員に明確な服務規律違反がある場合ですから、従業員から設問のような主張をされることは考えにくいでしょう。もっとも従業員から設問のような反発が予想されるのは、従業員に業務を従事させるのが不適当と会社が一方的に判断し、しかも給料も支払わないという場合であり、ご質問もこのような場合を想定されているものと思われます。

 この点、京阪神急行電鉄事件(大阪地判昭37・4・20労民13巻2号487頁)及び日通名古屋製鉄事件(名古屋地判平3・7・22判タ773号166頁)は、使用者は、事故発生、不正行為の再発のおそれなど、当該従業員の就労を許容しないことについて実質的理由が認められない限り、賃金支払いを免れないと判断しています。

 これらの判例からもわかるように、会社は、単に就業規則に無給と明示していれば賃金を支払わなくてもよい、というわけではなく、当該従業員を就業させることによって、職場において事故が発生したり、職場の秩序が保持できなかったり、不正行為の再発のおそれがあるなど、命令に実質的合理的理由があることを具体的な事情や根拠をもって説明することができるよう準備しておく必要があります。

 したがって、従業員が「『使用者の命令』による休業なので、出勤停止期間中、会社は休業手当を支払うべきではないか」と主張してきた場合には、会社は当該従業員に対して、上記のような具体的な事情や根拠をもって就労を許容しないことにつき実質的合理的理由があることを説明し、休業手当を支払う義務はない旨回答すれば足りると考えられます。

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