法律Q&A

分類:

労働者にとって不利益な就業規則の変更は認められるのか?(P2-5)

(1)不利益変更の合理性の存否が決め手
 就業規則の不利益変更の効力について、判例は、就業規則の改正に合理性があるかどうかでその効力の有無が決まるとし、その合理性の有無の判断は、変更の内容(不利益の程度・内容)と、変更の必要性との比較を基本として、不利益に対する代償措置の有無・内容・程度、労働組合との交渉経過、他の従業員の態度、変更の社会的相当性などを総合的に考慮してなされるとしています。最近、最高裁は、みちのく銀行事件(最一小判平12.9.7労判787-6)で、上記基準に従いながら、従業員の4分の3以上を組織する組合の賛成の下に実施された中高年層の行員に対する賃金面の不利益変更(賃金の約40%以上の減額)を、中高年層の行員に対してのみ「専ら大きな不利益のみを与えるもので」無効としました。但し、その後も、最高裁は、軽度の不利益といえる、週休2日制導入に伴う平日の労働時間の延長に関する就業規則の改正には合理性があるとして、労働者らの旧規則に従った割増賃金の請求を認めた高裁判断を覆し、その請求を斥けています(羽後銀行事件・最三小判平12.9.12労判788-23等)。
(2)労働条件の一部労働者への急激な低下に必要な合理性の具体的内容は
 結局、みちのく銀行事件判決によれば、一部の労働者に対しての労働条件の急激な低下をするような場合には、過半数労働者の賛成があるような場合にもそれだけで合理性があるとは考えず、「当該企業の存続自体が危ぶまれたり、経営危機による雇用調整が予想されるなどといった状況」というような厳格な要件を必要となります。従って、そのような条件がない場合には、同判決も指摘する通り、前述の一般的な合理性判断枠組みに沿った十分な代償措置、協議、経過措置等に配慮した上での改正がなされていない場合には就業規則の無効を主張することができることになります。

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