法律Q&A

分類:

退職の強要が行われたら?(P7-4)

(1)退職時の状況により退職が無効となる
 退職の場合において、それが、解約告知の退職届であれ、合意解約の退職願であれ(P7-1参照)、退職の撤回が認められない場合でも(P7-3参照)、退職時の状況によっては、その意思表示たる解約告知や合意解約に強迫や詐欺等の瑕疵があるとして無効や取消事由に当たるとされる場合があります。特に、リストラや、懲戒解雇事由がある場合の退職勧奨などで問題となることが多いようです。
(2)強要を理由に無効とされた例
 例えば、バス会社の営業所長が入社後間もない未成年の女子従業員に対し同女の男子従業員との情交が懲戒解雇事由に当たるとして強迫により退職届を提出させた行為が取り消しうべきものとされ、精神的自由と人格権を侵害したとして慰藉料が認められ(石見交通事件・松江地益田支判昭44.11.18労民20- 6-1527)、使用者が、客観的に相当な理由がないも拘らず、従業員への懲戒解雇や刑事告訴の可能性を告知して従業員から退職届を提出させることは、従業員を畏怖させるに足りる強迫行為として取消し得るとされています(ニシムラ事件・大阪地判昭61.10.17労判486-83。その他、最近、強迫を理由に退職の意思表示の取消を認めた例として白頭学院事件・大阪地判平9.8.29労判725-40、認めなかった例として東洋情報システム事件・大阪地判平10.3.25労判748-154等)。
(3)心理留保による無効
 更に、退職願を提出したのが、反省の意を強調する意味で退職願を提出したもので実際には退職する意思を有しておらず、上司も同人に退職の意思がないことを知っていた場合には、退職の意思表示は心裡留保により無効とされます(昭和女子大事件・東京地決平4.2.26労判610-72)。
(4)退職勧奨の限界
 なお、退職勧奨(いわゆる肩叩き)も、状況に応じ、程度を超す執拗な場合には、慰藉料の対象となります(下関商業高校事件・最判昭55.7.10労判345-20)。

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