法律Q&A

分類:

腕章・ワッペンを付けたまま仕事をするときは?(P11-6)

(1)職務専念義務との関係
 これらを着用のまま仕事に付くことに対して、公共職員のプレート着用行為では、精神的作業の面からみれば注意力のすべてが職務に向けられなかった点で職務専念義務に違反するとされていますが(目黒電報電話局事件・最判昭和52.12.13民集31-7-974)、工場内の勤務時間内の組合活動については、通常の私企業における労働者の職務専念義務は、公社職員の負う義務よりは弱く「労働契約上要請される労働は誠実に履行する義務」に留まるものであり、同「契約上の義務と何ら支障なく両立し使用者の業務を具体的に阻害することのない行為は、必ずしも職務専念義務」に違反しないとされています(オリエンタルモーター事件・東京高判昭和63.6.23労判521-20、同最判平成3.2.22労判586-12)。
(2)業務への支障
 次に一流ホテル内で従業員組合員が勤務時間中「要求貫徹」等の記入されたリボンを団結誇示のため五日間に亘り着用したまま仕事に就いたリボン闘争は正当性がないとされています(ホテルオークラ事件・最判昭和57.4.13民集36-4-659)。
(3)判断基準
 結局、裁判所の考え方は、一般の民間企業の場合は、組合によるワッペンなどの着用が直ちに正当性を欠くことになるというのではなく、それらの着用が、接客サービスする場面でなされれば客足を遠ざけるおそれのある場合や、そのワッペンなどの着用物の形状・大きさが見苦しい場合、着用者の勤務内容、勤務場所を考慮しその着用が他の対立組合員との紛争をあおるおそれのある場合(JR東海事件・東京高判平成9.10.30労判728-49)など、労務の提供に支障をもたらすか、もたらす具体的なおそれのある場合には正当性がないとしているものと考えて良さそうです。従って、それらの要素に照らし、腕章等の着用の適否が具体的に判断されることを踏まえた行動が必要です。

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