法律Q&A

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近所との紛争の多発化とその解決法

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2000.07.25

書店を見ても、最近、近所との紛争、つまり近隣紛争をめぐる、ハウツー物の書籍などが並び実際にもその種の紛争やこれをめぐる裁判なども増加しています。具体的には、隣人との私道の通行権・排水・境界・目隠しなどの相隣関係、マンション生活・管理(建替、ペット飼育や悪質住人への対応等)、生活環境(騒音、日照、悪臭、違法建築等)、近所付き合い(悪口、噂話による名誉毀損、プライバシーの侵害等)等をめぐる紛争の他、様々な事故による損害賠償問題(階下への水漏れ、ペットの噛み付き等)など、挙げれば切りがありません。

近隣紛争について、従来は、特に持ち家の場合、容易には引越しにより紛争を回避することが困難であるため、ややもすると泣き寝入りで終わっていました。しかし、最近は、大人の世界でも、ストレスがたまり、心身の健康問題にまで発展し、いわゆる「切れた」時に、殺傷沙汰にまで発展する危険も増えています。その背景としては、共同体・コミュニティー意識の希薄化・近隣との人間関係の希薄化などとの相関関係が指摘されていますが、このことは、近所の些細なカラオケなどの騒音問題についても、当事者間の話し合いもなくいきなり警察への通報や法的手続に移行する傾向にも現れています。

これらの紛争の解決方法としては、近隣紛争のややウェットな性格を考慮し、近所同士の感情問題の深刻化・シコリなどをできる限り避け、早期に非公開の場で、簡易・廉価に終わる手続が望まれるところから、以下のような手段が考えられます。

先ず、人権問題に絡む場合は、法務局の人権擁護課、市区町村の人権擁護委員への相談や、これらの機関による事実上の斡旋や改善勧告による方法があります。

次に、最近注目されているのが、主に大都市の弁護士会により運営されている「あっせん・調停・仲裁」手続きがあります。弁護士外の有識者の仲裁委員らによるものですが、手続きの容易さに加え、時間的にも費用面でも次の裁判所の手続よりは便利なのですが、難点は、裁判所の手続と異なり、この手続を利用するには相手の同意が必要なことです。

最後に、裁判所の利用となりますが、近隣紛争の解決に最適なのは調停です。基本的に、話し合いによる非公開の解決で、不出頭への制裁もあり、弁護士会の仲裁等よりは相手の協力を得やすいでしょう。

以上の話し合いを基本とする解決がつかない場合には、訴訟になりますが、30万円以下の金銭の問題であれば簡易裁判所での少額即決裁判の利用も可能です。

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