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改正民法での遺言書の書き方と効力は?

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2000.03.14

遺産争いを避けるため遺言書を作成する人が増えています。しかし注意しないと、せっかくの遺言書が無効になって、死亡後の紛争をあおったりすることにもなりかねません。特に、昨年の民法の改正(改正法)で、本年4月1日以降、遺言書についてもいくつかの重要な取扱の変更がなされていますので、その点も触れておきます。

先ず、遺言書が無効と言われないための第一の注意点は、改正法により、未成年であることや、後見人や保佐人が付いていること自体では遺言を無効とすることはなくなりましたが、依然として、遺言を作成する方の意思能力が必要なことには変わりはなく、痴呆症などのため正常な精神状態でなかったなどとの主張をされないような配慮が必要です。そのためにもしっかりした遺言ができる元気な内に遺言書を作成しておくのが無難でしょう。

次に、遺言書について、民法は、いくつかの方式を定め、その条件を満たしていないと、財産の遺贈等による移転、相続分の指定などの法的効力を認めていません。ここでは、もっとも一般的に用いられている自筆証書遺言書と公正証書遺言書について説明します。但し、いずれの遺言書にもそれ自体に優劣はありません。又、遺言者は、一度作成した遺言をいつでも取消したり変更したりすることができます。そして、前後の遺言書で抵触する事項については直近のものが優先します。

さて、自筆証書遺言は、遺言者がその全文・日付及び氏名を自署し、これに捺印して作成し、加除その他の訂正は、遺言者がその場所を指示し、これを変更したことを附記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押して行うことが必要です。なお、「全文」について「手書き」が必要ですので、パソコンなどで作成することはできません。

これに対して、公正証書遺言は、証人2人以上の立ち合いのもと、原則として、遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人が遺言者の口述を筆記してこれを遺言者及び立会人に読み聞かせ、遺言者、立会人及び公証人が署名・捺印して作成します。なお、改正法により、口の不自由な方についても内容確認の規定を新設し、公正証書遺言書の作成が可能になりました。なお、遺言者が署名することができない時は、公証人がその事由を附記して、署名に代えることができます。

その他の両遺言書の違いとして、自筆証書遺言書では、登記などをするためには、家庭裁判所での面倒な検認手続が必要ですが、公正証書では検認手続は不要なこと、公正証書遺言書では遺産の額に応じて公証人などの費用がかかること、公正証書遺言書が内容的にも効力的にも法律家である公証人が関与し保管することから安定性が高いのに比べて、自筆証書遺言書では、どうしても偽造・変造・隠匿の危険が伴うことです。

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