法律Q&A

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制裁としての出勤停止の期間はいつまで認められるか

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2003.09.05

当社では現在、懲戒規定の整備を進めており、制裁の種類は戒告、減給、出勤停止、懲戒解雇の4段階を考えています。減給については、労基法91条にその限度が明定されていますが、出勤停止についてはどの程度の期間まで認められるかご教示下さい。

採用業務の外部委託は「委託募集」であって厚生労働大臣等の許可を受けることが必要ですが、委託した募集・採用業務が実質的に職業紹介にあたる場合には、受託者が職業紹介事業の許可を受けていればよいでしょう。

1 懲戒処分の種類と内容
 懲戒処分は企業秩序への違反者に対する制裁です。多くの企業の就業規則では大体設問のような種類と内容の処分が規定されています。概ね、出勤停止については、労働契約をそのままとして就労を禁止することとし、普通賃金を支払わず、最長10日乃至 15日間の期間が多いようですが、それが数ヶ月に及ぶ長い場合は、懲戒休職と呼ばれることがあります。この中で、労基法は減給ついて上限を規定していますが(91条)、その他の処分については規定がなく、裁判例による以下の規制を受けることになります。
2 懲戒処分が有効となる条件
 具体的に懲戒処分を行う場合、必ずしも全ての判例が以下の要件の完全な充足を求めてはいませんが、概ね、次のような基準でその効力の有無が判断されています。即ち、[1]罰刑法定主義 懲戒処分をするためには、その理由となる事由とこれに対する懲戒の種類・程度が就業規則上明記されていなければなりません。 [2]平等取扱の原則 同じ規定に同じ程度に違反した場合には、これに対する懲戒は同一種類、同一程度であるべきとされます。[3]相当性の原則特に重い懲戒処分については、規律違反の種類・程度その他の事情に照らして相当なものでなければなりません。懲戒処分に対して裁判所が処分が有効かどうかを決める主要な基準はこの原則です。つまり、多くの懲戒処分が、懲戒事由には該当するとされながらも、当該行為や被処分者に関する諸般の事情を考慮され、重過ぎるとして無効とされています。使用者が重すぎる量刑をした場合は、懲戒権を濫用したものとされるのです。以上の[1]ないし[3]の判断基準により、使用者の懲戒権の行使が客観的に合理的な理由を欠き、又は社会通念上相当として是認し得ない場合には懲戒権の濫用として無効とされます(ダイハツ工業事件・最二小判昭 58.9.16判時1093-135)。[4]適正手続 最後に懲戒処分を行う際には適正手続の保障が要求され、就業規則上(又は労働協約上)組合との協議などが要求される場合は、この手続を遵守すべきは勿論、そのような規定がない場合にも本人に弁明の機会を与えることは最小限必要とされています。
3 出勤停止処分の限界
 以上の通り、減給以外の懲戒処分については特別の規定はなく、出勤停止処分の有効性も上記の裁判例の有効要件の中で判断されます。設問の出勤停止の期間は、主に上記2[3]の相当性の判断で問題とされることが多いでしょう。

 裁判例では、生理日の休暇中に、深夜遠隔地へ長時間かけて旅行し、翌日の民謡大会に出席したことが、生理休暇の不正取得とされ、これに対する6ヶ月の懲戒休職につき、重すぎるとして、3ヶ月の限度で有効とした例があります(岩手県交通事件・盛岡地一関支判平8.4.17労判703-71は、「本件懲戒処分は、その理由に比し、程度において重すぎるといわざるを得ず、‥休職三か月間‥をこえる部分は懲戒権の濫用であって効力がない」と判示しています)。

 以上の次第で回答の通りとなります。

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