法律Q&A

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試用期間中に業績不振を理由に解雇できるか?

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2001.08.28

新入社員の試用期間を3ヶ月と文書で約束しました。しかし、会社の業績不振のため、試用期間の途中でやむを得ず解雇したいと考えています。試用期間中の解雇に関して注意する点を教えてください。

合理的な理由であれば試用社員の解雇も可能

1 そもそも試用期間中の解雇は可能なのか
 結論としては、合理的な理由があれば解雇は可能ということになります。しかもその合理性の程度は正社員に比較すれば弱いものでも良いということになっています(三菱樹脂事件・最判昭和48.12.12)。言葉を換えれば正社員よりは簡単に辞めて貰えるということになります。しかしそこで求められている合理性の内容はそんなに簡単なものではありません。
2 試用社員とは

 そもそも試用社員とは、会社が試用期間中の従業員の身元調査の補充や、その期間中の勤務状態の観察により、会社の職務についての適格性を判断し、それらにより適性がないとされる場合には、本採用拒否ができるという解約権が付いた労働契約であるとされています(前掲三菱樹脂事件)。

 しかし、その解約権の具体的内容について、裁判所は、「客観的に合理的な理由」の存在を求め、試用社員が、いわゆる内定との比較でも、既に会社内に一端入っている関係もあり、正社員に対してよりは緩かとしても(語学力などの点でAランク職員としての適格性なしとして、本採用拒否が有効とされたEC委員会事件・東京高判昭和58.12.14等)、内定の場合よりは厳しく判断する傾向にあります。 実際には本採用前の暴力的事件への関与の発覚や欠勤、遅刻等の勤務不良の程度が平均的な労働者より悪く改善の可能性が少い場合や会社の業況の悪化等の理由が必要です。

 ただし、企業に入る前の内定取消しの場合においすら、いわゆる整理解雇の4要件、つまり、 (1)人員削減の経営上の必要性、(2)整理解雇回避努力義務(希望退職等)の実行、(3)合理的な整理解雇基準の設定とその公正な適用、(4)労使間での協議義務の実行(東洋酸素事件・東京高判昭和54.10.29等) 、の存在を求め、これらの要件なしとして内定取消を無効とした判例もあり(インフォミックス事件・東京地決平成9.10.31)、ここでも、正社員と比較してその要件は緩和されて適用されるとしても生半可な理由では紛争を避けられません。

対応策

正社員ですらいわゆる雇用調整の対象となっている状況であるとの前提に立てば、試用期間中の解雇も合理的理由があるとされるでしょうが、そのような事態の証明すら、実際には、必ずしも容易ではありません。そこで、できる限り、事前に誠意をもって試用社員に事情を説明し、解雇ではなく勧奨退職の形で解決を図るのが賢明です。

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