法律Q&A

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求人・募集の際に会社がやってはいけないこととは?(P1-1)

1. 求人方法についての職安法の規制
 会社が求人する場合の方法については、職安法が規制しています。募集というのは、「労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人をして、労働者となろうとする者に対し、被用者となることを勧誘すること」とされています(職安法4条5項)。そして、職安法は、公共職業紹介所を通じての募集(17条以下)以外については、第三者への委託募集や、民間職業紹介所を介する募集について様々な規制をしています。例えば、刊行物やホームページ等の文書募集についても、応募者に誤解を与えないよう広告内容として適確な表示をなすように求めている外(42条)、直接募集についても通常の通勤圏又は近接地域から募集するよう努めるべき義務を定め(38条)、第三者への委託募集については委託について許可を求め(36条)、民間職業紹介所については、職業の範囲が拡大され、原則自由となっていますが、依然として、許可がなければできない(30条)、とするなどの規制です。その他、会社は求人にあたって、賃金、労働時間など、主要な労働条件を明示しなければなりません(同5条の3等)。
2. 従業員による募集にも規制
 会社がその従業員を使って募集をすることは、第三者に対する委託募集ではなく会社自らによる直接募集の問題とされますが(同40条)、職安法は、募集を担当する従業員に対する報酬や給与に関しても規定を置いているのです(同条)。これによると、会社は、募集を担当する従業員に対しては、「賃金、給料その他これらに準ずるもの以外は...与えてはならない。」ことになっています。しかもこの違反には、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金という罰則まであります(同65条)。
3. 差別的取扱の制限・禁止等
 会社には、採用の自由がありますが(P1-2参照)、現在では、以下のような様々な禁止、規制や指導等がなされています。先ず、障害者雇用促進法は、事業主に一定の雇用率に達する人数の身体障害者または知的障害者を雇用すべき義務を課しています(同11条以下)。又、労働者が労働組合に加入せず、もしくは労働組合から脱退することを雇用条件とすることは不当労働行為として、禁止されています(労組法7条1項)。更に、募集・採用について、女性に対して男性と均等な機会を与えなければならないとされています(均等法5条。P9-1参照)。なお、募集・採用にあたって、労働者の年齢により差別的な取扱いをすることについても、事業主に対し、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときは、労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように努める義務が課されています(雇用対策法7条)。しかし、これは努力義務に留まる他、この義務を大幅に緩和する運用指針(平13.9.12厚労告295)が示され、今のところは実効が上がっていないようです。
4. 採用時の調査への行政指導
 使用者が労働者の採用をその思想・信条ゆえに拒否できるかについて、判例は、これを認めています(三菱樹脂事件・最大判昭48.12.12民集27-11-1544。P1-2参照)。しかし、現在では、応募者の人権やプライバシーにかかわるような態様での調査や応募者の職業上の能力や技能、適格性に関係のない調査については、慎重な対応が求められています。例えば、厚生労働省は、就職差別を防止する観点から採用選考時の身元調査は行わないよう、また、宗教に関すること、思想に関することなどの「本来自由であるべき事項」や、本籍・出身地に関すること等は、就職差別につながるおそれがあるため、これらを採用選考時に配慮すべき事項として定め、企業を指導しています(「採用のためのチェックポイント」参照)。採用時のHIV検査とそれによる差別についても禁止の指導がなされています(P1-2参照)。

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