法律Q&A

分類:

会社に認められている「採用の自由」とは何か?(P1-2)

(1)採用の自由とは
 現在の判例によれば、労働者の採用に当たり、使用者は、[1]雇入人数決定の自由(採用人数を何人にするかの自由)、[2]募集方法の自由(採用方法を縁故によるか公募とするかなど)[3]選択の自由(採否の基準を学歴、経験、身体的能力等におくかの自由)[4]契約締結の自由(適当な人物が居ても最終的に採否を決定する自由)を内容とする採用の自由があるとされています。そして、ここから、採用候補者の身元等の調査についても自由であるとされています(三菱樹脂事件・最大判昭48.12.12民集27-11-1536)。
(2)採用の自由の限界
 しかし、判例も、まったくの無制限の採用の自由を企業に与えてはおらず、「採用の自由」といえども、「法律その他による特別の制限」に服するもので一定の限界があります(前掲・三菱樹脂事件)。具体的には、現在では、採用の自由に対する名文上明らかな規制としては、雇用機会均等法による男女差別の禁止があります(P9-1参照)。その他、争いがありますが、労働組合員であることを理由とする採用拒否も不当労働行為(差別的取扱い及び支配介入)として違法とされます(中労委・青山会事件・東京地判平13.4.12労判805-51、P11-1参照)。
(3)HIV感染者などへの対応
 なお、厚生労働省のエイズ指針では(P6-12参照)、「事業者は、労働者の採用選考を行うに当たって、HIV検査を行わない」としてHIV感染の検査もその感染を理由とする採用拒否もしてはならないとしています。しかし、前述(1)の採用の自由には、その当否はともあれ、思想・信条による採用差別まで最高裁が認め、当然に、採用基準としての健康・体力を認めているものとされていたことからは)、疑問は残りますが(拙著「社内トラブル救急事典」192頁参照)、エイズ指針によれば、企業はHIV感染者の採用を拒否できないことになります。

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