法律Q&A

分類:

裁量労働時間制とはどういう制度なのか?(P4-10)

(1)裁量労働制の2類型
 経済社会の構造変化や労働者の就業意識の変化等が進む中で、労働者が創造的な能力を十分に発揮できる環境作りをすることが必要です。労働者の側でも、自らの知識、技術や創造的な能力を活かし、仕事の進め方や時間配分に関し主体性をもって働きたいという意識が高まっています。そこで、両者のニーズに対応した新しい働き方のルールを設定することが求められ、業務の遂行方法が大幅に労働者の裁量に委ねられる一定の業務に従事する労働者について、労働時間のみなし制(P4-9参照)を定めたのがいわゆる裁量労働時間制です。労基法上、[1]専門業務型裁量労働制[2]企画立案型裁量労働制の2つの類型が認められています。
(2)専門業務型裁量労働制
[1]対象専門業務
この制度は、<1>業務の性質上その遂行方法を労働者の大幅な裁量に委ねる必要性があるため、<2>業務遂行の手段および時間配分につき具体的指示をすることが困難な一定の専門的業務に適用されるものです。具体的な対象業務は、a.研究開発、b.情報処理システムの分析・設計、 c.取材・編集、d.デザイナー、e.プロデューサー・ディレクター、f.その他厚生労働大臣が指定する業務(コピーライター、公認会計士、弁護士、一級建築士、不動産鑑定士、弁理士、中小企業診断士等)に限られます(労基法施行規則24条の2第2項)。

[2]適用要件
この制度を実施するには、使用者は、事業場の過半数代表者との裁量労働に関する労使協定を締結し(P11-3参照)、対象業務を特定したうえ、業務の遂行手段ならびに時間配分につき具体的指示をしない旨を定めるとともに、労働時間のみなし規定を置き、所轄労基署長への届出も必要です(労基法38条の3第2項)。なお、この制度に従う義務は、就業規則等の定めにより発生します。

[3]裁量労働制の効果
2つの裁量労働制のいずれの場合も、労働時間のみなし計算がなされる場合には、労基法上の労働時間規制への違反の有無、あるいは時間外労働についての割増賃金の額は、あくまでもみなし時間を基準に判断します。但し、このみなし時間制は、労基法第4章の労働時間の計算に関してのみ用いられるもので、みなしにより計算された時間が法定労働時間を超えたり深夜業になったりする場合には、所定の割増賃金が必要となります(P4-1P4-4P4-6参照)。又、休憩や休日に関する規定も適用されます。

(3)企画業務型裁量労働制
[1]対象業務
この制度では、専門業務型裁量労働制に対して、第1に、対象業務を、以下の通り、原則として、いわゆる本社のホワイトカラーの業務である企画、立案、調査及び分析の業務(企画等)にまで拡大しました(同38条の4第1項1号)。しかし、いわゆる営業職、経理や、企画等の業務内でも、定型的・補助的な業務は入らないと解されることになります。

[2]企画業務型裁量労働制導入の条件
この制度導入の要件等は、専門職型裁量労働制における労使協定の締結と届け出に比較して、煩雑、厳格で、労使委員会の設置とその関与・所轄労基署長への同会設置と議事録等の届出等と言う新たな枠組を新設し(38条の4第1項)、現在まで余り利用されていません。

[3]重要な決定権限のない工場や営業所は対象となりません
例えば、本社・本店乃至、常駐する役員の下に事業運営上の重要な決定の一部を行う権限があるエリア乃至特定部門での地域本社、事業本部、地域を統括する支社・支店などが前提とされ、地域の営業所、工場などそのような機能を持たない事業場は適用対象となりません。

[4]労使委員全員の合意と本人同意等が必要
又、この制度の利用には、労使委員全員の合意、つまり全員一致の同意が必要と解され、更に、「労働者本人の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかった当該労働者に対して解雇その他の不利益取扱いをしてはならないこと」も求められています(38条の第1項6号)。

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