法律Q&A

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入社前研修中の事故で負傷したときはどうなるのか?(P6-8)

(1)労災保険の適用の条件
 研修中の事故に対して、行政解釈は、研修生が労基法9条の「労働者」に当るかどうかという観点から、いくつかの判断を示しています(労働者と認めた例として、造船会社で実施中の商船学校の生徒:昭23.1.15基発49等、否定された例として、工学部学生の工場実習:昭57.2.19基発121)。
行政解釈を要約すれば、研修中に労災保険の適用が認められるのは、結局、[1]研修生に支払われる賃金が一般の労働者並みの賃金であり、少なくとも最賃法の規定を上回っていること、[2]実際の研修内容が、本来業務の遂行を含む研修期間中であり、[3]それらが使用者の指揮命令の下に契約上の義務として支払われているものであること、の三つの事実がある場合に限られように見えます。しかし、これでは本採用された労働者に対する判断との比較では厳格に過ぎて整合性を欠くものと思わざるを得ませんが、実務的対応としては厚生労働省の態度に留意すべきです。
(2)安全配慮義務にも注意を
 なお、入社前研修中においては、通勤途上の事故は別として、研修施設などの会社内の事故に対しては、労災保険の適用の有無に拘らず、会社が研修生に対し、安全配慮義務を負うことは避けられず(P6-1参照)、企業主に事故への過失が認められれば研修生は、企業に対して損害賠償の請求をすることができます。
(3)事前の注意点
 入社前研修に参加する際には、事故の可能性を考慮して、どの程度の研修が実施され、それにどんな手当などの支給があるのか、万が一にも事故が発生した場合に、労災や損保、生保等の保険も含めていかなる補償制度が準備されているかも十分に確認しておく必要があります。少なくとも、アルバイト労働契約の締結や、最低賃金法を上回る賃金の支払いがなされていれば、最低限の労災保険の保護は期待できる場合が多いと言って良いでしょう。

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