法律Q&A

分類:

派遣と請負・業務委託との関係は?(P8-8)

(1)業務委託等と区分基準の関係
 いわゆるアウトソーシングの一環として、形式上はいわゆる業務処理請負や業務委託等の契約(業務委託等)となっていても、実態として下請業者が下請労働者を自己の指揮命令下で仕事をさせていないことになると、派遣法違反の責任を問われることになってしまいます。この点、厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行なわれる事業との区分に関する基準を定める告示」(昭61労告37。区分基準)は、業務委託等の契約形式によっていても、当該業務の処理が次のような方法によっていない限り、労働者派遣事業を行うものと判断するとしています。
 即ち、区分基準の通り、[1]業務の遂行、労働時間等及び企業における秩序を維持、確保する等のための指示その他の管理を自ら行うことにより、自己の雇用する労働者の労働を自ら直接利用するもので、かつ、[2]資金を自ら調達し、民法・商法等の責任を自ら負い、自ら提供する機械・設備もしくは器材又は材料・資材により業務を処理し、又は専門的な技術・経験を必要とするもので、単に肉体的な労働力を提供するものでなく、当該契約の相手方から独立して処理するもの、という要件を満たさない限り、業務処理請負とは認められなくなり、派遣法の適用を受けることになります。
 逆に、以上のいずれにも該当する場合は請負や業務委託となる訳で、派遣法の適用を受けません。
(2)区分基準違反の場合の法律関係
 但し、区分基準は、前述のように、かなり厳しく、これをクリアするのは相当困難なもので、この基準を厳格に適用すると、業務委託等が違法とされる場合も少なくはないと予想されます。
 そこで、業務委託等が区分基準をクリアしない場合の法律関係が問題となります。これについては、派遣法は、本来、職業安定法の禁止する労働者供給事業(職安法44条)を例外的に一定の要件の下に許可するもので、その要件を満たさない場合は、職安法違反となり、業務委託等の契約は無効となり、違法派遣下の労働者は派遣先との黙示の労働契約関係下に入るとの説もあります。
 しかし、有力学説(菅野和夫「労働法」第5版199-200頁。但し、以下に関する記述は、同補正版以降では削除されています)・裁判例(ホクトエンジニアリング事件・東京地判平9.11.26判時1646-106)は、直接この問題に触れた訳ではありませんが、許可対象業務外の派遣や派遣法所定の諸手続違反の、いわゆる違法派遣の行なわれた場合の法律関係について、派遣法の適用を受け、同法の罰則や行政処分等の問題は別として、契約関係は有効としています。その理由は、同学説によれば、派遣法の定義する「労働者派遣」は「労働者供給」禁止の世界から除外され(職安法4条6号)、行政取締法規である派遣法の世界に移されたということにあります。この論を進めていくと、ここでの問題の区分基準を満たさない業務委託等の法律関係についても同様に解されることが予想されます。
 つまり、この場合の業務委託等についても、派遣法の適用を受け、派遣元には派遣法違反に伴う罰則・行政処分の制裁が、派遣先・元両社には派遣法所定の諸義務を負担し(30条、37条、39~42条等、平11労告137・派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針、同第138・派遣先が講ずべき措置に関する指針等)、派遣労働者には派遣法に基づく権利(33条による派遣先による派遣労働者の雇用を制限する契約の禁止等)が認められるものと解されています(前掲・ホクトエンジニアリング事件)。

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