法律Q&A

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団体交渉とは?(P11-5)

(1)労組法による団交権の保護
 労組法は、団体交渉(団交)について、「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する」(同6条)として、労働組合の団交権を認め、「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」に対しては不当労働行為として(同7条2号)、労働委員会により団交応諾命令等を出すなど、団交権を積極的に保護しています(同27条等)。
(2)代表者による交渉
 ところで、本来、労組法などが保障している団交とは、代表者を通しての統一的な取引ないしルール形成のための話合いのことで、団交では十分な交渉権限をもった統制ある交渉団(交渉担当者)の存在が条件となっているものなので、大衆団交は、そのような交渉体制が組合側に整っていないものとして、会社側はそのような体制(代表者団交)が整うまでの間交渉を拒否できるとされています(菅野和夫「労働法」第5版補正2版511、532頁)。少なくとも、多数の労働者が押しかけ、罵声を上げるなど、長時間の交渉を強制するような吊し上げ的大衆団交は、途中で打ち切ることなども許されていますので(マイクロ精機事件・東京地判昭和58・12・22労判424-44)、団交なら何でも許されるというような気持をもってはなりません。
(3)誠実交渉義務
 他方、使用者は、単に組合の要求や主張を聞くだけでなく、それら要求や主張に対しその具体性や追及の程度に応じた回答や主張をし、必要によってはその論拠を示したり必要な資料を提示する義務があります(誠実団交応諾義務)。使用者には合意を求める組合の努力に対してはそのような誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する義務があります(カール・ツァイス事件・東京地判平成元.9.22労判548-64)。他方、使用者には組合の要求を受け入れたり、それに対し譲歩をする義務まではなく、十分な討議の後双方の主張が対立し意見の一致を見ないまま交渉打ち切りとなること自体を誠実交渉義務違反と責めることはできません。
(4)組合側の準備の必要
 会社側が資料を呈示しその要求に応じられないことを説明したのに対して、組合が何ら合理的な反対根拠を示すことなく団交を求める場合には、会社側として労働者側に妥結の誠意がないものとして団交を拒否することも許されていますので(順天堂病院事件・東京高判昭43・10・30労民19-5-1360)、組合としても真摯な準備と対応が求められます。
(5)会社側からの引換条件
 会社側が、合理的なものであれば組合の要求に対して、引換条件の提案をすることも団交が取引である以上許されます。但し、反対提案が合理的でありその反対提案の内容について充分な説明をしていないと誠実な団交への応諾ではないとして団交拒否とされますので、合理性の存否が決めてです(日本メール・オーダー事件・最三小判最判昭和59・5・29民集38-7-802、最近でも複数賃金体系導入のための交渉に労組が応じない限り賃上げの要求へのベアゼロの回答を変更しないことが団交拒否とされた京都府医師会病院事件・東京地判平成11.3.18労判764-34等)。
(6)任意的団交事項と義務的団交事項
 企業として処理しうる事項であって使用者が任意に交渉に応じる限り、どのような事項(例えば株主総会の決定事項)でも団体交渉の対象事項になり得ます(任意的団交事項)。しかし、使用者が団体交渉を行うことを労組法によって義務づけられている事項(義務的団交事項)は当然一定の範囲に限定されます。一般的には、「構成員たる労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」が義務的団交事項と言えましょう。

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