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派遣労働者に当社の36協定を適用してもよいか

弁護士 髙木健至・ロア・ユナイテッド法律事務所
2016年3月掲載

派遣労働者に当社の36協定を適用してもよいか?

派遣労働者を雇用する際に、時間外労働が多いことは派遣会社にも本人にも伝えていたのですが、その上限時間については特に定めていませんでした。この場合、当社の36協定に基づき、時間外労働を命じてもよいのでしょうか。

派遣先の36協定に基づき、時間外労働を命じることはできません。派遣元での36協定に加えて派遣元で実質周知した就業規則等で派遣先の指揮命令に従う時間外労働義務が定められていなければ時間外労働を命じることはできません。

1.派遣労働者への労働基準法の適用
 派遣法は、労働基準法等に関して、原則として雇用契約の当事者である派遣元事業主が責任を負うことを明記し、その上で派遣先事業主が責任を負う場合について、特例として規定を設けています。以下、その特例について述べていきます。
2.派遣先のみが責任を負う事項
 派遣先が責任を負うのは、公民権行使の保障(労基法7条)、労働時間(同32条)、変形労働時間制、(同32条の2、32条の4)、フレックスタイム制(同32条の3)、休憩(同34条)、休日(同35条)、時間外及び休日の労働(同36条)、労働時間及び休憩の特例(同40条)、労働時間、休憩、休日に関する規定の適用の除外(同41条)、年少者に係る労働時間及び休日(同60条)、年少者に係る深夜業(同61条)、年少者に係る危険有害業務の就業制限(同62条)、年少者に係る坑内労働の禁止(同63条)、女性に係る坑内労働の禁止(同64条の2)、妊産婦等に係る危険有害業務の就業制限(同64条の3)、妊産婦に係る時間外労働、休日労働及び深夜業制限(同66条)、育児時間(同67条)、生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置(同68条)と、これらの罰則規定、または各規程にもとづいて発せられる命令です(派遣法44条2項。ただし、就業規則の定めや労使協定等の規定に関しては、派遣元の事業場で作成又は協定するように定めています。そこで、変形労働時間制、フレックスタイム制並びに時間外・休日労働の協定及び届出手続は、派遣元のものが適用され派遣元の定めや派遣元の労使間の協定が適用となります。要するに、派遣元が労働時間等の枠組みを設定し、派遣先がその枠組みに従って、労働時間を管理することになります(詳細は、労働者派遣事業関係業務取扱要領(平成28年1月28日以降版)279頁参照)。

 派遣元での36協定の締結について、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2 派遣元事業主が講ずべき措置の5 派遣先との連絡体制の確立では、「労働基準法第36 条第1項の時間外及び休日の労働に関する協定の内容等派遣労働者の労働時間の枠組みについては、情報提供を行う等により、派遣先との連絡調整を的確に行うこと。なお、同項の協定の締結に当たり、労働者の過半数を代表する者の選出を行う場合には、労働基準法施行規則...第6条の2の規定に基づき、適正に行うこと。」と指摘しています。

3.36協定の適用と労働条件の明示
 上述の通り、労働時間・休憩・休日の管理については、派遣先が管理し、責任を負うのですが、その枠組みの設定に関しては、派遣元で行う必要があります。派遣元と派遣先が派遣契約で1日8時間を超え、休日に労働させる契約をしていたとしても、派遣元において、時間外・休日労働に関する協定(36協定)の締結を行い、行政官庁に届け出ていなければ、派遣先は時間外労働や休日労働をさせることはできません。さらに、これらの要件を満たす場合でも、派遣先で時間外労働させることができるのは、その36協定に定める「延長することのできる時間」の範囲内であり、これに違反した場合は、派遣先も使用者とみなされ、処罰されます。

 
なお、派遣契約の内容・義務として、休日労働や時間外労働を行わせるためには、二つの契約上の根拠が必要です。先ず、派遣元派遣先間において、派遣法は労働者派遣契約の締結の際、「派遣労働者が従事する業務の内容(派遣法26条1項)」として「第26条第1項第4号に掲げる派遣就業する日以外の日に派遣就業させることができ、または同項第5号に掲げる派遣就業の開始の時刻から終了の時刻までの時間を延長することができる旨の定めをした場合には、当該派遣就業をさせることができる日または延長することができる時間数(同法規則22条2号)」を定めることとしています。そして、この定めにより休日労働や時間外労働を行わせる場合、その定めは、派遣元事業所における36協定で定められている内容の範囲内でなければなりません。

 次に、以上の要件が整っても、派遣元での36協定に加えて派遣元で実質周知した就業規則等で派遣先の指揮命令に従う時間外労働義務が定められていなければ時間外労働を命じることはできません(日立製作所事件・最一小判平成3年11月28日民集45巻8号1270頁等。岩出誠「労働法実務大系」[民事法研究会・平成27年]254頁以下参照)。

4.割増賃金の取扱い
 賃金の支払義務は、雇用契約の当事者である派遣元にあり、従って時間外や休日労働に対する割増賃金については、派遣元が使用者として責任を負い、支払わなければなりません。そこで、派遣元が派遣労働者の派遣先における時間外、休日、深夜の労働時間を把握しておかないと、適切な賃金の支払ができないことになります。このため、派遣先は、厚生労働省令で定めるところにより、派遣法第42条1項各号(3号を除く)に掲げる事項(派遣就業をした日、派遣就業をした日ごとの始業し、及び終業した時刻並びに休憩した時間等)を1箇月ごとに1回以上、一定の期日を定めて、書面により通知すること(派遣法42条3項、同法規則38条第1項)としているのです。

 前掲派遣元指針は、「派遣元事業主は、割増賃金等の計算に当たり、その雇用する派遣労働者の実際の労働時間等について、派遣先に情報提供を求めること。」を求めています。

5.その他の取扱いについて
 労働基準法は休憩時間の与え方について「休憩時間は、一斉に与えなければならない(労基法第34条第2項)」とし、一定の業種(運輸、販売、金融、郵便、病院、旅館、官公署等)については、一斉に休憩時間与えなくてもよい旨の例外を設けています(労基則第31条)。この例外が適用されない業種については、「一斉休憩の適用除外」の書面による協定を、派遣先で結べば、一斉に休憩を与えなくてもよいことになります。というのも、上述の通り、派遣法は、休憩時間に関しては、「派遣先の事業のみを」使用者としてみなして適用することを定めているからです。また、「監視・断続労働の従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの(労基法第41条3号)」については、労働時間等に関する規定は適用除外とされていますが、こちらの行政官庁の許可を受けるのは、「派遣先の事業のみを」使用者とみなしていますので、派遣先の使用者が行うことになります。なお、派遣先の使用者が「当該許可を既に受けている場合には、派遣中の労働者に関して別途受ける必要はない」と通達されています(平11.3.31基発第168号)。
(深津伸子・労政時報第3624号のupdate)

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