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【第6編 倒産対策の問題解決】 - 第1章 自社の倒産 -

子会社の倒産と親会社の責任-法人格否認の法

弁護士 菊池 健治
2000年10月:掲載
2008年11月:補正

息子に任せていた子会社が倒産せざるを得ないはめになりました。親会社である当社はどのような責任を負うのですか。

 私は、製造販売会社であるX株式会社の社長ですが、後継者を養成するという考えもあって、販売部門を分社して100パーセントの子会社であるY株式会社を設立して、同社を息子に任せていました。当初、Y社はX社の商品しか扱わなかったのですが、血気盛んな息子は、次第に他社の製品も販売するようになっていました。しかし、たまたま大量に仕入れた製品に欠陥があり、全国的な消費者問題にまで発展し、製造会社とともにY社も多額の負債を抱えてしまいました。このままでは再建が不可能なので、息子とも話し合い、Y社をつぶそうと思いますが、親会社であるX社に法的責任が生じる可能性はありますか。どのような手続をとったらよいのですか。

民法上の使用者責任により損害賠償しなければならないと思われます。

1.
 債権者等の取引先にとって、相手方が株式会社である場合、取引先は、株式会社の財産のみが最終的には頼りになるのであって、株式会社の株主の財産から債権回収することはできません(株主の有限責任。商法200条1項)。
 したがって、子会社と取引を行っている会社は、子会社の株主である親会社に責任追求することも、親会社の財産から回収することもできないのが原則です。
2.
 しかし、親会社は子会社の株式を所有することで子会社の重要事項を決定したり、経営者を送り込んだり等、子会社の運営全般について大きな影響力と支配権を持っています。つまり、親会社の子会社に対する支配のミスによって子会社が経営不振に陥ったり、多額の債務を抱えることになった、といえることも多いと思います。  親会社が子会社の債務について責任を負う根拠として以下のような法律が考えられます。
3.一般不法行為(民法709条)
 親会社自身の故意、過失による行為によって子会社の取引先に損害が生じた場合には、本条による責任があり得ますが、実際には子会社が主体的に取引を行っているわけですから、この責任が発生するのは稀でしょう。
4.債権者代位権(民法423条)
 親会社の故意過失行為によって、子会社に損害が生じたために、子会社が親会社に損害賠償請求権を有する場合には、子会社の債権者は、子会社に代わって(代位して)親会社に請求することができます(民法423条)。
5.名板貸の責任(会社法9条)
 もし子会社が親会社と同一の会社名を用いて取引をしており、この同一名称を使用することを親会社が認めていた場合には、親会社は子会社を親会社であると誤信して取引に応じた債権者に対して、子会社の債務について責任を負うことになります。
 この場合の親会社の責任を名板貸の責任といいます。
6.使用者責任(民法715条)
 民法715条には、事業のために他人を使用する者(使用者)は、被用者がその事業の執行につき第三者に加えた損害について責任を負うことが規定されています。これを使用者責任といいます。通常は、会社の従業員が仕事中に他人に加害したときに、会社が責任を負う根拠に用いられます。
 しかし、この使用者責任を親子会社においても用いることができると思います。
 この場合には、親会社と子会社が、会社とその従業員のような事業者と被用者の関係にあるかどうかという点が問題になりますが、親会社は株式を通じて子会社を支配しており、また、子会社の活動による利益は親会社に最終的には帰属するという関係がありますから、事業者と被用者の関係と同一に考えることが可能でしょう。
7.法人格否認の法理
 親会社と子会社は法律的には全く別の法人ですが、例えば親会社が子会社を単に不採算部門だけ切り離し、親会社の生き残りのために設立した場合や子会社が全く活動をしていない形骸会社になっている場合には、個々の取引関係において子会社の法人としての独自性を否定し、親会社に責任を負わせることが考えられます。これを法人格否認の法理といい、会社の行為をその経営者である代表者個人の行為と認めて、特定の法律関係においての法人格を否認した事例があります(最判昭44.2.27.)。
 これを親子会社間でもあてはめることができると思いますが、親子会社の判例では、
(1)
 両社間にその業務内容、人的物的構成の混同、経理上の区分の不明確性、子会社の株主総会、取締役会の不開催など手続面の無視などの事実があり、子会社が独立の法人としての社会的経済的実体を欠き、全く親会社の営業の一部門にすぎないと認められるような場合
(2)
子会社がこの独立性を有しているときにおいても、一人会社のように親会社が子会社の株式の全部若しくはそのほとんどを保有することなどにより、子会社をその意のままに自由に支配できる関係にあって、しかも親会社が競業避止義務など法規の禁止規定の潜脱、契約上の義務の回避をはかる等の目的で、一応法律上別会社である子会社によって右禁止行為を行わせるように、違法ないし不当な目的を達成するために子会社を利用する場合、子会社の法人格を否定し、背後にある親会社の法人格と同一視して子会社の行為による責任を直接親会社に問いうることがあるとしたものがあります(大阪地判昭和47年3月8日判時666号87頁)。
対応策
 本件では、親会社のX社は使用者責任を免れることはできないと思われます。
 というのも、使用者責任を免れるためには、「使用者が被用者選任及びその事業の監督について相当の注意をなしたこと」を親会社側で証明しなければならないからです(民法715条1項但書)。  子会社であるY社の倒産の原因が血気盛んな息子さんに全てを任せきっていたことにあって、子会社の経営がおかしくなり始めたことを放置していたことにあ るのですから、息子さんを子会社の社長にさせつづけたという役員の選任に問題があったことは明白であるといえます。
 したがって、民法715条の使用者責任は免れないものと考えられます。
 子会社をつぶすときに、親会社が子会社の債務について責任を負うかどうかは、前述の判例が参考になると思います。このような要件を踏んでいない会社の倒産であれば、法人格否認の法理によって親会社が責任を負うことになるでしょう。
予防策
 したがって、子会社といえども判例に掲げられているような手続を日頃から踏んでいないと、いざ子会社を解散させようとしても親会社に責任が生じることになります。
前述の判例にあるような手続を踏んで子会社に独自性を持たせることが大切であると思います。取引先の側からしますと、親会社の責任を追求するときには、本件のように使用者責任を認めるのが問題になるときも多いと思いますので、端的に取引の開始時に親会社から保証をもらっておくというのも手だと思います。

(C)2002 Makoto Iwade,Japan

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