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【第9編 リストラ・経営効率に欠かせない人材の確保と管理】 - 第3章 労働時間・休憩・休日・休暇 -

在宅勤務での労働時間

弁護士 岩出 誠 2007年 2月掲載
社会保険労務士 前村久美子 2008年12月補正
弁護士 織田康嗣 2018年 4月補正

在宅勤務での労働時間や労災の問題はどのように処理されるのですか?

A社では、少子高齢社会に対応し、家庭での育児・介護をサポートする制度として、又、周囲の人間関係などの雑事に煩わされず専門的能力を効率良く発揮できる制度として、採用時及び在職者から希望者を募り、在宅勤務制度を採用しました。これに在職者中からBらが、新規募集からCらが在宅勤務を希望してきました。そこで、在宅勤務での労働時間や労災の問題はどのように処理されるのですか?その他、在宅勤務について注意すべき点はどのようなことでしょうか?

回答ポイント

 B、Cらの在宅勤務が、労働契約に基づく在宅就労と認められる場合には、「情報通信技術を利用した事業外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」に従うことが望まれます。 労働基準法上の労働者は、同法などが適用されることになるので、Bらに対する労働時間管理に関しては事業外労働の利用が検討されるべきです。また、在宅勤務中のBら自宅内での事故も労災として処理される可能性が大きく、A社で事前に就労時における安全配慮の支援や管理方法等も明確にしておくことが望まれます。 なお、B、Cらが実質的に個人事業主としてなされている場合には、労働時間や労災の問題は発生しませんが、「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」に従うことが望まれます。
解説
1.テレワークの形態
 労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務(以下「テレワーク」という。)は、業務を行う場所に応じて、①労働者の自宅で業務を行う在宅勤務、②労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用するサテライトオフィス勤務、③ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行うモバイル勤務といった分類をすることができます。
  いずれも、労働者が所属する事業場での勤務に比べて、働く時間や場所を柔軟に活用することが可能であり、通勤時間の短縮及びこれに伴う精神的・身体的負担の軽減、仕事に集中できる環境での就労による業務効率化及びこれに伴う時間外労働の削減、育児や介護と仕事の両立の一助となるなど、労働者にとって仕事と生活の調和を図ることが可能となるといったメリットを有しています。また、使用者にとっても、業務効率化による生産性の向上、育児・介護等を理由とした労働者の離職の防止や、遠隔地の優秀な人材の確保、オフィスコストの削減などメリットを有しています。
2. テレワークに関するガイドラインの整備状況
 厚生労働省は、平成16年3月5日に「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を公表しました。同ガイドラインは、平成20年7月28日付基発第0728001号にて改訂されています。  その後、「柔軟な働き方に関する検討会」が開催され、テレワークに関するガイドラインの改訂案が報告され、それに基づき、近時、厚生労働省が新しいガイドラインを公表しました(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html)。
3.労働基準関係法令の適用
 労働者が在宅勤務(労働者が、労働時間の全部又は一部について、自宅で情報通信機器を用いて行う勤務形態をいう。)を行う場合においても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されることとなります。
4. 労働基準法上の注意点
 (1)労働条件の明示
 使用者は、労働契約を締結する際、労働者に対し、賃金や労働時間のほかに、就業の場所に関する事項などを明示しなければなりません(労基法15 条、労基法施行規則5条1項第1の3号)。
 特に、テレワークに関しては、労働者に対し就労の開始時にテレワークを行わせることとする場合に、就業の場所としてテレワークを行う場所を明示すること等が求められます。

(2)労働時間について
  通常の労働時間制度に基づきテレワークを行う場合についても、使用者はその労働者の労働時間について適正に把握する責務を有し、みなし労働時間制が適用される労働者や労働基準法第41 条に規定する労働者を除き、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29 年1月20 日策定)に基づき、適切に労働時間管理を行う必要があります。
 また、テレワークを実施する場合でも、以下のような労働時間制度を用いることが可能です。

ア フレックスタイム制
  フレックスタイム制とは、労使協定などの一定の要件を充足した上で「始業及び就業の時刻をその労働者の決定に委ねる」労働時間制のことをいいますが(労基法32条の3)、テレワークにおいても、本制度を活用することが可能です(例えば、オフィス勤務の日は労働時間を長く、一方で在宅勤務をする日の労働時間を短くして家庭生活に充てる時間を増やす等)。
  フレックスタイム制を導入すれば、テレワークにおける中抜け時間についても、労働者自らの判断により、その時間分その日の終業時刻を遅くしたり、清算期間の範囲内で他の労働日において労働時間を調整したりすることが可能となります。

イ 事業場外みなし労働時間制
  みなし労働時間制とは、従業員の労働時間について、厳密に実労働を算定することなく、実際の実労働時間にかかわらず、所定ないし一定の労働時間勤務したものとみなして定額の賃金を支払う制度をいいます。テレワークにより、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、事業場外労働のみなし労働時間制(労基法38条の2第1項)が適用されます。
  テレワークにおいて、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難であるというためには、① 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと、② 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことの各要件を満たす必要があります。

ウ 裁量労働制
  業務の遂行方法が大幅に労働者の裁量に委ねられる一定の業務に従事する労働者について労働時間のみなし制を定めたのが裁量労働時間制であり、①専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)や企画業務型裁量労働制(労基法38条の4)の類型が定められています。
  裁量労働制の要件を満たし、制度の対象となる労働者についても、テレワークを活用することが可能です。この場合、労使協定で定めた時間若しくは労使委員会で決議した時間を労働時間とみなすこととなりますが、労働者の健康確保の観点から、決議や協定において定めるところにより、勤務状況を把握し、適正な労働時間管理を行う責務を有します。その上で、必要に応じ、労使協定で定める時間が当該業務の遂行に必要とされる時間となっているか、あるいは、業務量が過大もしくは期限の設定が不適切で労働者から時間配分の決定に関する裁量が事実上失われていないか労使で確認し、結果に応じて、業務量等を見直すことが適当です。

(3)休憩時間の取扱いについて
  労働基準法第34条第2項では、原則として休憩時間を労働者に一斉に付与することを規定していますが、労使協定により、テレワークについても、一斉付与の原則を適用除外することが可能です。
  また、テレワーク中の労働者について、本来休憩時間とされていた時間に、使用者が出社を求めるなど具体的な業務のために就業場所間の移動を命じた場合、当該移動は労働時間と考えられるため、別途休憩時間を確保する必要があることに留意する必要があります。

(4)時間外・休日労働の労働時間管理について
  テレワークについて、実労働時間やみなされた労働時間が法定労働時間を超える場合には、時間外・休日労働に係る三六協定の締結、届出及び割増賃金の支払いが必要となり、また、現実に深夜に労働した場合には、深夜労働に係る割増賃金の支払が必要となります(労働基準法第36条及び第37条)。
  なお、就業規則等により深夜、休日に業務を行う場合には事前に申告し使用者の許可を得なければならず、かつ、時間外等に業務を行った実績について事後に使用者に報告しなければならないとされている事業場において、労働者からの事前申告がなかったか又は使用者が許可を与えなかった場合であって、かつ、労働者から事後報告がなかった場合について、次のすべてに該当する場合には、当該労働者の時間外等の労働は、使用者のいかなる関与もなしに行われたものであると評価できるため、労働基準法上の労働時間に該当しないものとされます。

①時間外等に労働することについて、使用者から強制されたり、義務付けられたりした事実がないこと。
②当該労働者の当日の業務量が過大である場合や期限の設定が不適切である場合など、時間外等に労働せざるを得ないような使用者からの黙示の指揮命令があったと解し得る事情がないこと。
③時間外等に当該労働者からメールが送信されていたり、時間外等に労働しなければ生み出し得ないような成果物が提出されたりしている等、時間外等に労働を行ったことが客観的に推測できるような事実がなく、使用者が時間外等の労働を知り得なかったこと。

  ただし、上記の事業場における事前許可制及び事後報告制については、以下の点をいずれも満たしていなければならないとされています。

①労働者からの事前の申告に上限時間が設けられていたり、労働者が実績どおりに申告しないよう使用者から働きかけや圧力があったりするなど、当該事業場における事前許可制が実態を反映していないと解し得る事情がないこと。
②時間外等に業務を行った実績について、当該労働者からの事後の報告に上限時間が設けられていたり、労働者が実績どおりに報告しないように使用者から働きかけや圧力があったりするなど、当該事業場における事後報告制が実態を反映していないと解し得る事情がないこと。
5. 労働安全衛生法上の注意点
 労働安全衛生法等関係法令等に基づき、過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保のための措置を講じる必要があります。
 具体的には、必要な健康診断とその結果等を受けた措置(安衛法第66 条から第66 条の7)、長時間労働者に対する医師による面接指導とその結果等を受けた措置(安衛法第66 条の8及び第66 条の9)及び面接指導の適切な実施のための時間外・休日労働時間の算定と産業医への情報提供(労働安全衛生規則第52 条の2)、ストレスチェックとその結果等を受けた措置(安衛法第66条の10)等の実施により、テレワークを行う労働者の健康確保を図ることが重要です。
  また、事業者は、事業場におけるメンタルヘルス対策に関する計画である「こころの健康づくり計画」を策定することとしており(労働者の心の健康の保持増進のための指針)、当該計画において、テレワークを行う労働者に対するメンタルヘルス対策についても衛生委員会等で調査審議の上記載し、これに基づき取り組むことが望ましいとされています。
  加えて、労働者を雇い入れたとき又は労働者の作業内容を変更したときは、必要な安全衛生教育を行う等関係法令を遵守する必要があります(安衛法第59条第1項及び第2項)。
  なお、テレワークを行う作業場が、自宅等の事業者が業務のために提供している作業場以外である場合には、事務所衛生基準規則、労働安全衛生規則及び「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(平成14年4月5日基発第0405001号)の衛生基準と同等の作業環境となるよう、テレワークを行う労働者に助言等を行うことが望ましいとされています。
6. 労働災害の補償に関する留意点
 テレワークにより勤務を行う労働者については、事業場における勤務と同様、労働基準法に基づき、使用者が労働災害に対する補償責任を負うことから、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワーク勤務における災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となります。ただし、私的行為等業務以外が原因であるものについては、業務上の災害とは認められません。
 したがって、例えば、自宅で所定労働時間にパソコン業務を行っていたが、トイレに行くため作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒した場合、業務行為に付随する行為に起因して災害が発生しており、私的行為によるものとも認められないため、業務災害と認められることになります。
7. その他テレワークを適切に導入及び実施するに当たっての注意点
(1)長時間労働対策について
  テレワークについては、業務の効率化に伴い、時間外労働の削減につながるというメリットが期待される一方で、労働者が使用者と離れた場所で勤務をするため相対的に使用者の管理の程度が弱くなる恐れがあることなどから、長時間労働を招くおそれがあることも指摘されています。
  ガイドラインにおいては、テレワークにおける長時間労働等を防ぐ手法として、以下のような手法を挙げています。
① メール送付の抑制(時間外、休日、深夜におけるメール送付の自粛)
② システムへのアクセス制限(深夜・休日のアクセス制限の設定)
③ テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止等
④ 長時間労働等を行う者への注意喚起

(2)業績評価等の取扱い
  専らテレワークによる勤務を行う労働者等、職場に出勤する頻度の低い労働者については、業績評価等について、評価者や労働者が懸念を抱くことのないように、評価制度、賃金制度を明確にすることが望まれます。特に、業績評価や人事管理に関して、テレワークを行う労働者について通常の労働者と異なる取扱いを行う場合には、あらかじめテレワークを選択しようとする労働者に対して当該取扱いの内容を説明することが望まれます。
また、いつまでに何をするといった形で、仕事の成果に重点を置いた評価を行う場合は、テレワークの場合であっても事業場での勤務と同様の評価が可能であるので、こうした場合は、評価者に対して、労働者の勤務状況が見えないことのみを理由に不当な評価を行わないよう注意喚起すべきです。
  なお、テレワークを行う労働者について、通常の労働者と異なる賃金制度等を定める場合には、当該事項について就業規則を作成・変更し、届け出なければなりません(労働基準法第89条第2号)。

(3)通信費及び情報通信機器等のテレワークに要する費用負担の取扱い
  テレワークに係る通信費や情報通信機器等の費用負担、サテライトオフィスの利用に要する費用、専らテレワークによる勤務を行い事業場への出勤を要しないとされている労働者が事業場へ出勤する際の交通費など、テレワークをすることによって生じる費用については、通常の勤務と異なり、テレワークを行う労働者がその負担を負うことがあり得ることから、労使のどちらが行うか、また、事業主が負担する場合における限度額、さらに労働者が請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等において定めておくことが望まれます。
  特に、労働者に情報通信機器等、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければなりません(労働基準法第89条第5号)。

(4)社内教育等の取扱い
  テレワークを行う労働者については、OJTによる教育の機会が得がたい面もあることから、労働者が能力開発等において不安に感じることのないよう、社内教育等の充実を図ることが望まれます。なお、社内教育等を実施する際は、必要に応じ、総務省が作成している「テレワークセキュリティガイドライン」を活用するなどして、テレワークを実施する上での情報セキュリティ対策についても十分理解を得ておくことが望まれます。また、テレワークを行う労働者について、社内教育や研修制度に関する定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければなりません(労働基準法第89条第7号)。
対応策
 したがって、「回答」のように、B、Cの在宅勤務が、実質的に個人事業主としてなされている場合には、労働時間や労災の問題は発生しませんが、「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」に従うことが望まれます。 他方、それが労働契約に基づくテレワークと認められる場合には、「情報通信技術を利用した事業外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」に従って、B、Cに対する労働時間管理に関しては、同ガイドラインに従って、事業場外労働時間制の利用が検討されるべきであり、テレワーク中の自宅内での事故も労災として処理される可能性が大きく、A社で事前に就労時における安全配慮の支援や管理方法も明確にしておくことが望まれます。その他、テレワークに関する人事労務管理上の問題全般については、同ガイドラインを参考にすることが望まれます。

(C)2018  Makoto Iwade Japan

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