法律Q&A

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セクハラをめぐる問題とは?(P9-5)

(1)無視できない企業リスクとしてのセクハラ問題
 職場におけるセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)問題は、前述の雇用機会均等法の改正も加わり(同21条。P9-1参照)、現在、各職場で、相当深刻な問題になっています。セクハラは、女性労働者の個人としての尊厳を不当に傷つける人権問題であるとともに、女性労働者の就業環境を悪化させ、能力の発揮を阻害するものですが、それにとどまらず、企業にとっては、職場秩序や円滑な業務の遂行を阻害し、社会的評価・企業イメージに深刻なダメージを与え、更には、損害賠償訴訟への対応などにより直接的な経済的負担をも迫る意味で、今や重大な企業リスクの一つとして対応を迫られている問題です。
(2)セクシャル・ハラスメントの判断基準
 セクハラに当たるか否かは、言動、回数、関係者の性格・意識、場所、抗議後の対応と態様、相互の職場での地位等の総合的相関関係で決まります。判例では、「職場において、男性の上司が部下の女性に対し、その地位を利用して、女性の意に反する性的言動に出た場合、これがすべて違法と評価されるものではなく、その行為の態様、行為者である男性の職務上の地位、年齢、婚姻歴の有無、両者のそれまでの関係、当該言動の行なわれた場所、その言動の反復・継続性、被害女性の対応等を総合的にみて、それらが社会的見地から不相当とされる程度のものである場合には、性的自由ないし性的自己決定権等の人格権を侵害するものとして、違法となる」とされています(金沢セクシュアル・ハラスメント控訴事件・名古屋高金沢支判平8.10.30労判707-37、最高裁でも金沢セクシュアル・ハラスメント上告事件・最決平11.7.16労判767-14、16で結論が支持されています)。
(3)急増する係争と賠償額の高額化
 実際、労政事務所、雇用均等室等で取扱われるセクハラ相談や指導は急増し、そのような状況を反映し、セクハラ訴訟数も同様の傾向を示し、判例でのセクハラ賠償額が、認容額においても、676万円(日銀京都支店長事件・京都地判平13.3.22判時1754-125)、更に900万円(東北大助教授事件・仙台高判平12.7.7・平12.7.8日経新聞)、1100万円(大阪府知事事件・大阪地判平11.12.13判時1735-96)、ついには、 3000万円台まで上がっており(岡山人材派遣会社事件・岡山地判平14.5.15・平14.5.16日経新聞、但し2名分)、今後は数千万円レベルの認容例の増加が予想されます。
(4)人事・労務管理上の責任
 最近、セクハラをめぐっては、セクハラ加害者への懲戒解雇等の措置の有効性の存否が真正面から争われた判例が現れてきました。先ず、肉体的接触を伴う悪質な事案で懲戒解雇が有効とされた例として、観光バス運転手が未成年のバスガイドに対してなしたわいせつ行為に関する西日本鉄道事件(福岡地判平 9.2.5労判713-57)や、派遣社員の下着に触れるなどの肉体的接触を伴う強制わいせつ的行為に関するコンピューター・メンテナンス・サービス事件(東京地判平10.12.7労判751-18)、観光バス会社の運転手の取引先女性添乗員などの胸等に触れたりホテルに誘うなどの行為に関する大阪観光バス事件(大阪地平12.4.28労判789-15)があります。次に、高校教員の女性教員への肉体的接触や性的な言動等を理由とする戒告処分及び免職処分が有効とされた新宿山吹高校事件(東京地判平12.5.31労判796-84)、更に、管理職による部下の女性に対する性的な内容のEメールやデートへの誘い等の性的言動を理由とする普通解雇が有効とされたF製薬事件(東京地判平12.8.29判時1744-137)等があります。
今後も、勿論事案の程度・内容によりますが、裁判所がセクハラ理由の懲戒処分等において、加害者に厳しい態度を取ることは、セクハラ損害賠償事件での裁判例が企業にセクハラ加害者への厳しい処断を求めていることとのバランスからも容易に予想されます。

身近にあるさまざまな問題を法令と判例・裁判例に基づいてをQ&A形式でわかりやすく配信!

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