法律Q&A

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相手方の行為能力

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1997年4月:掲載

未成年者は単独で契約を締結することが出来ますか。

甲社は、契約締結後しばらくして、相手方の乙が実は19歳があったことに気づきました。現在のところ甲社も乙もそのことを口にはしていません。甲社とすれば、このままの状態でも契約に拘束されるのでしょうか。契約を解消する方法も教えてください。

乙が取消権を行使しない限り契約は拘束されます。乙に対して、追認するか否かの催告をし、合意的解約の余地を検討しましょう。

1.行為能力とは?
 人は出生と同時に権利能力を取得します(民法3条1項)。権利能力とは権利義務の帰属主体となりうる能力のことを言いますが、人として出生したからといって赤ん坊が健全な会社と有効な取引が出来るわけがないことは、誰であってもお分かりでしょう。私法上の権利・義務の変動の根拠を人の意思に求めた近代法は、表意者保護のために自己の行為の結果を判断することの出来る能力(意思能力といいます)を持たない者の行為を一律に無効とした上で、更に合理的・打算的判断能力の不十分な者のなした行為を画一的基準を設けた上で実質的能力の存否を問題とせずに取消しうるものとし、行為から生じる法的拘束力から免れることを認めています。このような制度を制限行為能力制度といい、民法では、未成年者(同法5条)・成年被後見人(同法8条)・被保佐人(同法12条)、被補助人(同法16条)の4つが規定されています。つまり、わかりやすくいえば、行為能力というものは、単独で完全に有効な契約などの法律行為をすることが出来る能力ということになるでしょう。
2.未成年者の行為
 未成年者が契約を締結する場合は、原則として法定代理人の同意が必要とされています。法定代理人とは、本人の信任に基づかないで定まる代理人をいい、未成年者の法定代理人は親権者が原則で、親権者がない時又は親権者が子の財産管理権を有しない場合は後見人となります(同法838条)。但し、民法上未成年者の婚姻による成年擬制(同法753条)と特定の営業許可による成年擬制(同法6条1項)の例外があり、前者について満20際未満で婚姻解消があってもその効果が持続すると解されていることに注意してください。
 そして、このような法定代理人の同意がないのになした未成年者の行為は、取消しうべき行為とされます。つまり、契約としては一応有効に成立していますが、未成年者の側でいつでも取消権を行使すれば、契約が最初からなかったこととなるのです。
3.相手方の催告権
 取消しうる行為の相手方は、その行為につき取消されるまでは一応有効で、取消されたとたんに最初に溯って無効(同法121条)となるという不安定な状態におかれてしまうでしょう。そこで民法は、取消権について短期消滅時効を定める(同法126条)と共に、無能力者の相手方に催告権を与えました(同法20条)。無能力者の相手方は、他の取消しうる行為の相手方、すなわち詐欺又は強迫をなしたもの(同96条)に比較して、社会的に非難を受けるべき事情が存在しないのが一般であり一層の保護を図る必要があることからこのような保護規定が設けられました。
 なお、一方で、無能力者が取引行為を為すにあたって詐術を用い能力者として相手方を誤信させた場合には、そのような無能力者まで保護する必要はないと考えられており、そのような無能力者は取消権を有しないとされています(同法21条)。判例は「無能力であることを黙秘していた場合でも、それが、無能力者の他の言動と相俟って、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、なお詐術に当たるというべきであるが、単に無能力者であることを黙秘していたことの一事をもって、右にいう詐術に当たるとするのは相当でない」と考えているようです。

対応策

まだ乙が取消権を行使していないようですから、甲社とすれば、依然として契約は有効であり契約に拘束されています。契約を解消しようにも自ら取消権を行使することは出来ません。甲社としては、乙が取消権をいつ行使するかわからないので、慎重を期すためには、民法20条2項により乙の法定代理人に1ヶ月以上の期間を設定して追認するか否かの催告をした上で、相手方の対応を待つことになります。なお、乙が婚姻していたり、本件契約が許可営業の一環としての取引であったり、乙の取消権が時効消滅していたり、乙の行為に詐術性を認定できるようであれば乙に取消権が発生しないので、甲社とすれば契約は有効なものとして対処するしかないでしょう。どうしても契約を解消したいのであれば、合意解約を乙の代理人に申込んで交渉するか、錯誤無効(設問[6]参照)等の他の取消・無効事由に基づく別の手段を考えなければならないでしょう。

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