法律Q&A

分類:

代金の支払方法

弁護士 浅見 雄輔
1997年4月:掲載

契約書で代金の支払時期や支払場所等を定めていないような場合、どこでどのような形で支払えばよいのでしょうか。

建築会社のA社は、B社から建築資材を購入する契約を締結しました。B社が建築資材を納入する時期と場所については契約書で定めましたが、A社がいつ、どこで代金を支払うかについては特に定めませんでした。A社としては、いつ、どこで代金を支払ったらよいのでしょうか。

売買契約の場合、売買の目的物の引渡しの時に、引渡し場所で代金を支払うのが原則です。

1. 民法の補充規定
 取引関係においては、契約自由の原則が妥当しますから、原則として、取引の当事者が納得して合意すれば、取引はその内容に拘束されることになります。したがって、代金の支払時期、支払場所等について、当事者間で定めをすれば、その定めに拘束されることになります。ところが、本来当事者間で定めておくべきことであるにもかかわらず、定めるのを忘れたり、あるいは、敢えて定めなかったりする場合があります。このような場合、後日当事者間で改めて定められればいいのですが、後日のことですから、話がまとまらないとも限りません。話がまとまらなかった場合に、契約で定めがないのだから契約は履行できないというのでは余りにも不都合です。そこで民法は、こうした場合に、当事者間の契約に補充して適用されるように様々な規定を用意しています。

対応策

(1)代金の支払時期
 代金の支払時期について、民法は、「売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定する」と規定しています(民法573条)。
 したがって、A社としては、B社の納入時期に代金を支払わなければならないことになります。
 但し、具体的な代金の支払時期についての定めはないが、建築資材は先に納入し、代金は後払いということは決まっていた場合には、A社は、B社から請求を受けてから支払えばよいことになります(民法412条3項)。
 なお、設問は、売買契約ですが、これが請負契約の代金であれば、原則として請負の目的物を引き渡されるときに(民法633条)、委任契約の代金であれば、原則として委任の事務の終わった場合に(民法648条2項)に支払うことになります。

(2)代金の支払場所
 代金の支払場所について、民法は、「売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所において支払わなければならない」と規定しています(民法574条)。
 したがって、A社としては、B社が建築資材を納入する場所で代金を支払うことになります。
 但し、建築資材の納入が先で、代金は後払いという約束がある場合には、この規定は適用はありません。その場合には、A社は、B社の営業所または住所に於いて支払うことになります(商法516条、民法484条)。
 なお、請負契約、委任契約の代金の場合には、民法574条のような規定はありませんから、民法484条に従って、B社の営業所または住所に於いて支払うことになります。

予防策

以上のとおり、民法の規定では、売買契約の場合には、売買の目的物を納入する時期に、その場所に於いて代金を支払うことが原則となっています。取引の実情では後払いが原則であると思って安心し、契約書に代金支払時期・支払場所について何も定めておかないと、後でとんだことになります。せっかく契約書を作るのであれば、代金支払時期・支払場所についてもしっかりと定めておきたいところです。

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