法律Q&A

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保証契約の解約

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1997年4月:掲載

賃貸借契約の保証契約を解約したいのです。認められますか。

甲社は、取引先の乙社がマンションを借りた際に、マンションのオーナー丙との間で乙社の丙に対する債務を期間を定めずして保証しましたが、その後乙社と丙との賃貸借契約が更新を1回経た直後あたりから、乙社は1ヶ月80万円の賃料を3ヶ月も滞納しているようです。丙は今のところ乙社に対して何らの請求をしていないようですが、甲社とすれば、損害の拡大を防ぐために保証契約の解約が出来ないのでしょうか。

乙社の賃料滞納の理由が、乙社の経営悪化にあるような場合は、甲社の解約権が認められる可能性があります。

1. 本件保証債務の特殊性
 保証債務とは、主たる債務と同一の内容を有し、主たる債務が履行されない場合にこれを履行することによって、債権者に主たる債務が履行されたと同一の利益を与えようとするものですが、本設問の保証債務は、通常の借金等の際の(連帯)保証債務とは趣を異にしています。つまり、保証契約締結時に保証の対象となる債務が確定しておらず、一定の継続的取引関係から将来発生するすべての債務を保証するということになっており、この様な保証を一般に「信用保証」といいます。
 本件の甲社の保証債務は、賃貸借契約から生ずる賃借人の債務の保証ですが、将来継続して生ずる債務の保証である点では「信用保証」であるといえる反面、その債務の額はほぼ一定したもの(毎月の賃料)が蓄積されていくだけで、保証人の予期しない数額のものを生じるということがない点では異なります。従って、信用保証について考慮されることの多い「事情変更の原則」をそのまま適用することは出来ないというべきです。
2. 更新後の賃貸借契約に保証が及ぶか。
 賃貸借契約の当事者間では期間の更新の定めがあるが、保証契約の当事者間では賃貸借契約更新後の保証人の責任について何らの合意がない場合に、保証人の責任は更新後の賃貸借契約に及ぶのでしょうか。
 思いますに、継続的契約関係は一体として存在するものでありその更新とは、要するに、その関係が期間満了後に継続することです。特に、借地借家法の規定によって更新に関する当事者の意思が重要性を失い更新されることが原則となっている現状からすれば、更新後の関係は原則として同一性を失わないと考えられます。又、保証人としても、更新がなされることは十分に予期すべきでしょう。
 従って、保証人の責任は更新後の賃貸借契約に及ぶというべきでしょう。
3. 保証人の解約権の存否
 継続的保証契約においては、契約締結後の諸般の事情の変化(法的に言えば事情変更の原則)を理由として、以下のような2種類の解約権が認められています。

<1>任意解約権
 保証契約締結後相当期間が経過すれば解約できるとする権利ですが、本設問の様な賃借保証の場合は、判例・学説上認められていません。

<2>特別解約権
 保証契約締結後、何らかの「特別事情の発生」もしくは「著しい事情の変更」(例えば、主債務者の資産状態の著しい悪化等)が発生した場合にはじめて解約できるとする権利で、本設問の様な賃借保証の場合にも一定の要件が満たされれば認められます。
 そこで、どのような場合に賃借保証の保証人に特別解約権が認められるかについてですが、判例は、【1】保証期間の定めがないこと、【2】保証契約締結後相当の期間が経過したこと、【3】賃借人がしばしば賃料の支払を怠り将来においても誠実に債務を履行すべき見込みがなく、【4】それにもかかわらず賃借人が賃貸借契約の解除・明渡請求等の処置を講じないというような要件を要求しています(大判昭8・4・6、大判昭14・4・12)。

対応策

 甲社としましては、乙社と丙との賃貸借契約の更新を理由として保証責任を免れることはできそうもありませんので、特別解約権に基づく解約権を主張することになります。解説中の【2】の「相当の期間」については「取引慣行ならびに信義則にてらして」判断するしかないのですが、大体賃貸借契約の契約期間程度は必要でしょう。更に【3】については乙社の賃料不払いの理由によると思われ乙社の資産状況に大きく左右されるといってよいでしょう。その他の要件は問題無いと思われます。
 従って、乙社の経営状況が丙との契約締結以後どれくらい悪化しているのかという点を中心に調査をして、今後も賃料不払いを継続する恐れが高いと認定できる状況であれば、甲社は丙との保証契約を解約することが出来るでしょう。

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