法律Q&A

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外国の会社との取引

弁護士 近藤 義徳
1997年4月:掲載

外国の会社と取引に入るときの留意点はどのようなものですか。

外国の会社と物品売買をしたいと考えています。事前に調査すべき事項は何ですか。また、契約に際しては、どのような注意が必要でしょうか。

事前調査を万全にし、準拠法や取引準則に注意して契約書を作成します。

1. 国際取引の特色
 国際取引も契約自由の原則が妥当する商取引である点では国内取引と基本的に同様です。しかし、国際取引は、国籍、言語、文化、法律、習慣の異なる当事者間の取引であり、取引紛争の国際的解決機関がない点で、国内取引と大きく異なります。
2. 相手方の選定に関する留意点
(1)カントリーリスクの調査
 国際取引では、相手国の政権交代や政策変更、国際収支の悪化によって思わぬ損害を受けることがあり得ます。そこで、取引開始前に、相手国の政治リスク、国際収支リスクなどのカントリーリスクを調査する必要があります。

(2)与信リスクの調査
 また、取引において相手方の資力不足で反対給付(投資回収)を受けられない事態もあり得ます。そこで、取引相手の選定に当たっては相手方の財政状態、営業基盤、経営者の能力等を調査して、与信リスクを把握することが不可欠です。

3. 取引内容、契約方式の検討
(1)取引形態、取引内容の決定

 ところで、国際取引には、物品売買、プラント輸出、国際技術移転、国際投資など多様な契約目的があり得ますが、それらは、当事国の強行法規に違反することはできません。多くの先進国は、公正取引法(独占禁止法、反トラスト法)、製造物責任法、代理店保護法等で取引を規制していますので注意が必要です。
 また、契約方式としては、【1】相手方との直接契約、【2】現地支店または現地法人を設立しての契約、【3】相手方とのパートナーシップ又は組合契約、【4】合弁事業等、様々な方式がありますが、発展途上国では直接投資を規制している例が多いので、相手国の法制度、租税制度を検討して、どのような契約方式が可能かつ有利か判断すべきでしょう。

(2)相手国の法制度、租税制度の調査

 以上の検討の為には、相手国の、【1】投資規制、会社設立規制、輸出入規制、その他公正取引法(独占禁止法、反トラスト法)、製造物責任法、代理店保護法等の取引規制の有無及び内容、【2】国際私法規定の内容、外国判決の執行力、仲裁判断の執行力の有無及び手続き、【3】租税制度の内容等の情報が必要になります。

(3)日本の法規制の確認

 また、わが国の外国為替及び外国貿易管理法、輸出入取引法等の規制をも確認しておく必要があるでしょう。

4. 契約書作成上の留意点
(1)適用される法律

 契約の準拠法について、わが国では当事者自治の原則を取っており(法例7【1】)、殆どの諸外国でも同様です。したがって、準拠法については当事者の合意で定めることが可能です。

(2)取引の準則
 国際商業会議所が作成した「定型取引の解釈に関する国際規則」(インコタームズ)や、「荷為替信用状取引に関する信用状統一規則」、「取立統一規則」などが一定の国際取引分野における準則となることがありますので、これらの知識も得ておくべきでしょう。
 国際物品売買の、決済方法としては、【1】商業信用状によるL/C(Letter of Credit)、【2】代金支払いと同時に所有権が輸入者に移転するD/P(Documents Against Payment)、【3】手形の引受と同時に輸入車に所有権が移転するD/A(Documents Against Acceptans)などが用いられ、貨物受渡条件については、【1】貨物が船に積み込まれたときに輸入者に所有権が移転するFOB(Free on Board)、【2】所有権移転に付いてはFOBと同様で、輸出者が目的地までの運賃を負担するC&F(Cost and Freight)、【3】さらに目的地までの保険料も輸出者が負担するCIF(Cost Insurance and Freight)等の方法が取られています。

(3)紛争解決手段
 契約書において、相手方と紛争になった場合の解決方法を定めておくことも重要です。紛争解決手段としては、民事裁判と仲裁がありますが、仲裁には、【1】専門的対応【2】迅速、安価【3】非公開、【4】執行の確実性等の利点があるため、仲裁を選択する例が多いようです。

対応策

1.事前調査
(1)カントリーリスクの調査機関としては、ポリティカル・リスク・サービス、ベリ、インベスター、ユーロ・マネー、日本公社債研究所、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット等が揚げられています(「国際取引とリスクマネジメント」49)。
(2)また、与信リスクを把握するには、相手方から営業報告書を徴求し、ダン・レポートのような信用調査報告書、信用照会制度を利用する等の方法があります。
(3)相手国の法制度、租税制度の調査は、広範かつ詳細に亘りますから、当該相手国の法律事務所にネットワークを有する日本の渉外法律事務所に依頼するのが効率的です。
(4)日本の法規制を確認するには、所管事項に応じて、通産省又は大蔵省に問い合わせると良いでしょう。

2.契約書作成上の留意点
(1)契約に際しては彼我の法律を比較して、有利と思われる準拠法を定めておき、条項の解釈はインコタームズによるとの条項をいれておくべきでしょう。
(2)国際物品売買の輸出者については、【1】L/C、【2】D/P、【3】D/Aの順で決済条件が良くなり、【1】FOB【2】C&F【3】 BCIFの順で受渡条件良くなります。輸入者では、以上の逆です。自己に有利な条件を獲得するための交渉は国内取引と同様です。
(3)紛争解決手段として仲裁手続きを予定する場合は、仲裁を行う場所や手続の準拠法も同時に定めておくべきでしょう。なお、仲裁判断の強制執行の可否については、事前調査で確認しておくことが必要です。

予防策

国際取引は、広範かつ詳細な専門的知識が必要ですから、これらに詳しい法律事務所や会計事務所等に相談して事前調査を行い、綿密な打ち合わせの下に調査を進め、契約書を作成することが無難です。

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