法律Q&A

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境界確定

弁護士 相川 泰男
1997年4月:掲載(校正・筒井 剛2001年2月)
(改訂・竹花 元2010年4月)

公図と現況が違っている境界はどのように決まるか。

隣地との境界に争いが生じたので、登記所で公図を閲覧したところ、土地の形状自体が現況と少し違っていました。測量図もないのですが、このような場合、境界は何に基づいて決定されるのでしょうか。

占有状況や面積、公図その他の地図、境界石などの要素を総合的に考慮し、最終的には裁判所が判断します。

1.境界確定の方法
 ある土地と他の土地とが接しているところを境界といいます。境界には、官有地(公道など)と民有地との間の「官民境界」と、民有地と民有地との間の「民々境界」とがあります。「官民境界」には、確認手続として主務官庁の官民確定(なお、今でも、不動産実務等では「官民査定」と言われることがあります。)を受ける方法がありますが、通常隣りの土地との境界である「民々境界」には、このような手続がないので、どのようにして境界を確認するかが問題となります。

 そもそも境界は、隣接地の各範囲が明確であればおのずから定まるものですが、実際に現地で境界を見いだすのは必ずしも容易ではありません。正確な境界を発見するには、登記申請書に添付した測量図があればこれに基づいて、そこに示されている基点を実地でさがし出し、そこから図面にしたがって距離を測っていけば、測量図どおりの境界線を検出することができます。しかし、こうした測量図がない土地も多く、特に戦前に登記されたままの土地のなかには、現況と違っているものもかなりあります。このような場合、土地の面積を表示する登記簿や、位置・形状を表す公図は、境界を知るうえで一応の手掛かりとはなりますが、これらは元来が土地所有者の申請を基礎に人為的につくられたものですから、絶対的に正確といえるものではありません。そこで、所有者間の意見が食い違って確認できないときは、最終的には裁判所に境界確認の訴えを提起し、裁判所に判断してもらうことになります。

対応策

境界確定の基準
 それでは、境界の確定にあたってどのような事実が重視されるのでしょうか。これまでの境界確定の裁判においては、【1】土地の占有状況、【2】登記面積との関係、【3】公図その他の地図、【4】境界石、境界標などが重要な判断の基準とされています。
 その中でも、【1】これまでどちらがどのような形で占有していたかという占有状況は重視されています。民法は、占有によって所有権を推定する旨の規定(186条1項)や、占有継続による時効取得の規定(162条)をおいているからです。しかし、時には双方で使用したり物を置いているというように双方の占有状態が重複していることもあります。
 また、【2】双方の土地について面積を実測し、登記面積と比較してみることも重要です。ただし、前記のとおり、登記面積と実測面積と一致しないことも多くあります。
 【3】公図は、土地台帳の附属地図のことをいい、区画と地番を明らかにするためのもので、境界線が直線かどうか、どのような曲線でどの方向かというような地形的なものは比較的正確ですが、距離・角度などで不正確なことが多いといわれています。
 【4】境界石や境界標が係争地にあれば有力な資料となることはもちろんですが、紛争が深刻となると、一方の当事者が勝手に設置したり、移動させたりすることもないではありません。そのため、それが果して境界を表示するものか、何人によりいつ頃どのような経緯で設置されたものか、移動されていないか等に十分注意する必要があります。
 したがって、以上のいずれの基準も確定的なものではなく、結局はこれらの要素を総合的に考慮して判断されることになります。

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