法律Q&A

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不動産取得の注意点

弁護士 相川 泰男
1997年4月:掲載(校正・筒井剛2001年2月)

事業所用地を取得しようと考えているがどのような点に注意したらよいか。

当社は、郊外に土地を取得して事業所を移転したいと考えています。新聞広告で適当な物件を見付けましたが、土地購入にあたり注意すべき点を教えてください。

契約締結前に、権利関係、現状、法令上の制限、取引価格などの事項を調査し、重要事項説明書の内容を確認する必要があります。

調査・確認すべき事項
 検討中の土地が事業所用地として適当かどうかを判断するため、事前に、当該土地の権利関係、現状、利用についての法令上の制限、取引価格などの事項を調査・確認しておくことが必要です。また、仲介業者に依頼した場合、重要事項説明書の内容をチェックする必要があります。

対応策

(1)権利関係の確認
 まず、その土地がたしかに売主のものであるか、買主の使用を制限するような権利(地上権、永小作権や、買主に対抗できる賃借権など)がついていたり、質権や抵当権などの担保権がついていたりしないかを確認しておく必要があります。これらの関係を調べるには、実際に登記所に赴き、登記簿をじかに閲覧するか、謄本を請求して登記内容を確認すべきです。登記簿には不動産の所在、地番、面積、所有者、諸権利の設定などが記載されていて、所定の登記印紙を納付すれば、誰でも自由に閲覧、謄本請求をすることができます。
 このように登記簿を確認することにより、現在の権利関係をほぼ把握することができるのは、登記には第三者対抗力が与えられていて、登記をしないとその権利を第三者に対抗できないので、権利を取得したものは通常速やかに登記手続をするからです。しかし、登記には公信力はないので、登記簿に権利関係が記載されていれば、必ずそのとおりの権利が存在するというわけではありません。したがって、正確を期するためには、売主が登記簿上所有者と記載されているとしても、その登記が間違っていないかどうかを、売主が所有者になった時の事情にまでさかのぼって調査しておかなければ完全だとはいえません。また、反対に、登記簿上では所有者となっていない場合でも、売主が所有者に間違いないことがあります。この場合は、登記簿上の所有名義人に実際にあたって、売主への所有権の移転の経路が正当なものかどうかを確認することが必要です。また、登記名義人が死亡し、相続人への変更登記が済んでいない場合は、相続人全員の同意を得ているのか、相続登記の時期はいつなのかを確認し、相続登記完了後に売買契約を締結するようにします。

(2)現状の確認
 次に、買おうとする土地の位置、性質、形状、広さなどの客観的状態を調査しておくことです。このためには、登記所に備え付けてある地図や測量図を閲覧するともに、現実に現場に行って見ることが必要です。 土地の広さについては、測量図が存在する場合には登記簿上の表示面積は比較的正確ですが、そうでない場合には、登記簿上の表示よりも実地の方が狭い場合が多々ありますし、買った土地の全部を建物の敷地に利用できると思っていたのに実際は道路のために一部を提供しなければならないといった場合もあります。そこで、売買面積の相違や境界に関するトラブルを防ぐため、隣地所有者の立会いのもとに境界を確認するとともに、登記簿や登記所の地図を参考にして測量士・土地家屋調査士に実測してもらい、面積を確定してから売買契約を締結すべきです。

(3)土地の利用についての法令上の制限の確認
 土地については、都市計画法や建築基準法などによって、使用上の制限がつけられている場合があります。たとえば、用途地域、地区制、防火地域・準防火地域などの指定や、建築協定の存在によって、その地域に建てられる建物の種類や構造、大きさ(容積率・建ぺい率)などが制限されています。こういった法律による土地利用制限は多種多様ですから、買主としては、売買契約締結前に、目的物件たる土地にどのような利用制限があるかを具体的によく調査する必要があります。仲介業者は、契約締結に際し、物件に関する都市計画法・建築基準法などの法令上の制限を買主に書面で告知・説明しなければならないことになっていますが、買主自身も、物件所在地の市区町村の役所の関係部署(建築課・土木課)などに行って調査するようにすべきです。
 なお、都市計画区域内で建物を建築する場合には、原則として当該宅地が幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりませんが(建築基準法43条)、この道路が私道の場合には都道府県知事から道路位置指定を受けていなければなりません(42条)。このように道路は、敷地を有効利用するために極めて重要で、しかも私道負担などで近隣とトラブルが起きやすいので、地主や関係者および市区町村の役所にあたって確認してみることが必要です。

(4)適正な取引価格の調査
 土地は二つとして同じものはなく、極めて個別性が強いことから、正常価格の把握はなかなか困難ですが、以下に説明する【1】公示価格または【2】基準地価、【3】路線価、【4】固定資産評価額、【5】近隣取引事例価格を参考しながら、購入しようとする土地の価格が相当かどうかを調査し、高値づかみにならないように注意しなければなりません。【1】公示価格は、土地鑑定委員会が地価公示法に基づき、都市計画区域内で選定された標準地の1月1日現在の正常価格を、【2】基準地価は、都道府県知事が国土利用計画法に基づき、同じく基準地の7月1日現在の正常価格を、それぞれ毎年公表するものです。【3】路線価は、相続税や地価税算出の根拠となる価格で、毎年「財産評価基準路線価図」が出版されています。【4】固定資産税評価額は固定資産税算出の基礎となるもので、市町村役場の資産税課の窓口で、所有者の委任状を提示すれば評価証明書の交付を受けることができます。現在路線価は、公示価格の8割、固定資産評価額は公示価格の7割まで引き上げられています。【5】取引事例価格というのは、近隣において過去に売手と買手が合意して取引した価格であり、これによりいわゆる実勢価格を知ることができます。

予防策

 仲介業者への依頼と重要事項説明書の確認 不動産取引は、仲介業者に依頼しなければできないものではなく、売主と買主が直接取引をしてもよいわけですが、個人で情報を収集するには限界があり、広く自分の希望する物件を探すことは困難ですし、また不動産の取引には、法律、登記、税金などに関する専門的知識を必要とするので、仲介手数料を支払っても、専門家に任せたほうが安心な場合もあります。
 仲介業者に不動産の購入の媒介を依頼したときは、仲介業者は買主に対して、売買契約を締結する前までに、取引する物件について重要な事項を記載した書面(重要事項説明書)を宅地建物取引主任者から交付し、その内容を説明しなければならないことになっています(宅建業法35条)。
 仲介業者が説明すべき重要事項は、大別すると、【1】物件の権利関係、【2】都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限、【3】私道負担に関する事項、【4】飲用水、電気、ガスおよび排水施設の整備状況などの取引物件に関する事項と、【5】売買代金以外に要する金銭の額および目的、【6】契約解除に関する事項、【7】不履行の場合の違約金に関する事項、【8】住宅ローン等の斡旋を行う場合の内容およびローンが成立しないときの措置などの取引の条件に関する事項の2つです。そこで、この重要事項説明書の内容と自ら調査した内容とに相違点はないかどうかを確認するとともに、疑問点があれば遠慮なく質問し、その説明を良く理解したうえで、購入するか否かを決定します。また、仲介業者から重要事項説明書に書いていないことで説明を受けたいときは、後日のトラブル防止のためにも書面に書いてもらうべきです。
 なお、仲介手数料の上限は、建設省告示により、売買金額が400万円を超えるものについては売買金額の3%+6万円と定められています。

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