法律Q&A

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新地主への借地権の対抗

弁護士 近藤 義徳
1997年4月:掲載

地主が土地を第三者へ売却したとき借地権はどうなるか?

Xは、Aから土地を借りてその上に家を建てて住んでいました。ところが、Aはその土地をYに売ってしまい、XはYから土地を明け渡すように求められています。Xは、借地権を登記しなくても、Yに借地権を主張できるでしょうか。また、地震や火災で建物がなくなって閉まったときは、借地権もなくなってしまうのでしょうか。(地主が土地を第三者に売却したとき、土地の新所有者に対して自分が借地権者であることを主張するためにはどうしたらよいでしょうか。)

建物を登記しておけば、新地主に借地権を対抗できます。

1.土地所有権と地主の地位
 賃貸中の土地が譲渡されると、特約がない限り、賃貸借契約における賃貸人の地位も土地の譲受人に移転します。従って、土地譲受人(新地主)が賃貸人の権利義務の主体となり、借地権者は新地主に対して賃借人たる義務を負担し権利を有することになります。
2.借地権の対抗要件
(1)民法の原則とその修正
 民法は、「不動産の賃貸借はこれを登記したときは爾後その不動産について物権を取得した者に対しても効力を生ずる。」と規定しています(民法605条)。
 したがって、借地権も登記をする事で土地の新所有者に対抗できますが、借地権の登記には地主の協力が必要なため、ほとんど利用されていないのが実状です。
 そこで、従来、建物の保護に関する法律では、借地上の建物の登記をしておけば土地の新所有者に借地権を対抗できると規定して借地権者の地位を強めていました。

(2)借地借家法
 平成4年8月1日に施行された借地借家法は、建物の保護に関する法律を廃止しましたが(借地借家法附則2条)、同時に「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を有するときは、これを持って第三者に対抗する事ができる」として同趣旨の規定をおきました(借地借家10条1項)。
 この規定は、旧法下の借地権にも適用されますので(同法附則4条)借地権者は従来と同様、借地の上の建物について登記してあれば、新地主に対して借地権を主張できます。

(3)建物が滅失した場合
 ところで、建物が滅失してしまった場合は、建物の登記がしてあっても無効ですので、上記の対抗要件が失われてしまいます。借地借家法は、このような場合を想定して、借地権者が【1】その建物を特定するために必要な事項、【2】その滅失があった日、【3】建物を新たに築造する旨を土地の見やすい場所に掲示するときは建物の登記と同様の効力を有すると規定しました(同法10条2項本文)。ただし、この対抗要件は建物滅失から2年を経過すると消滅しますので、その前に建物を築造して登記しておかなければなりません(同条2項但書)。
 なお、この規定は、借地借家法施行前に建物の滅失があった場合には適用されません(同法附則8条)。

(4)借地権者に対抗要件がない場合
 借地権者が借地権の対抗要件を備えていないと、新地主から建物を収去して土地を明渡すよう求められた場合に、これを拒絶できなくなります。
 しかし、【1】借地権者が建物登記をしていなかったことに宥恕されるべき事情があり、【2】土地の買受人が、賃借権に対抗力のないことを奇貨として、賃借人に対し土地の明渡しを求めるなど自己の利益を図る目的で、当該賃借地を買い受けたような事情があるときは、買受人の賃借人に対する土地明渡請求は、権利濫用として許されません(最判昭和52年3月31日、金融・商事判例522号36頁を初め多数)。

3.新地主の借地権者に対する対抗要件
 借地の買受人は、通常新地主となりますが、そのことを借地権者に主張するためには土地の所有権移転登記をしておくことが必要です(民法177条)。
 したがって、借地権者としては、新地主が土地の所有権移転登記を経て地代を請求してくるまでは、旧地主に地代を支払っておくことになります。旧地主に地代を支払った後で、同一期間の地代を新地主から請求されても二重に支払う必要はありません。
4.敷金、保証金の返還請求権
 借地権者が新地主に借地権を対抗できるときは、新地主は、借地権者に対する敷金返還義務、保証金返還義務を旧地主から引き継ぎます。
 したがって、借地権者が前述の対抗要件を備えているときは、借地契約の終了に際して、敷金ないし保証金の返還を新地主に対して請求することができます。但し、これらの請求権は一般的に借地の明渡しと同時履行の関係に立たない、すなわち、明け渡した後でなければ受領できないこととされています。

対応策

 借地権者は、借地上の建物について、できるだけ早く保存登記をしておく必要があります。
 この場合、借地権者の名義と建物の登記名義を一致させておくべきでしょう。同居の家族等の名義を使用せず、借地権者本人の名義で登記すべきです。
 借地借家法の施行後に設定された借地権で、建物が滅失してしまっているときは、2年以内に新築して登記するようにし、新築するまでの間は土地の見やすい場所に看板を立てておくことが必要です。看板に記載すべき事項は、【1】その建物を特定するために必要な事項(所在、家屋番号、種類、構造、床面積等)、【2】その滅失があった日、【3】建物を新たに築造する旨です。さらに、借地権者の氏名、連絡先も記載しておけば安心でしょう。
 なお、地代については、新地主が、土地の所有権移転登記をするまでは、旧地主に対して支払っていれば良いでしょう。

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