法律Q&A

分類:

借地法の適用範囲

弁護士 近藤 義徳
1997年4月:掲載(校正・筒井剛2001年2月)

資材置き場として土地を貸したいが、後でちゃんと返して貰えるように借地権を発生させないようにしたい場合の注意点は?

2,3年後にビルを建てる予定の土地があるので、それまでの間、資材置き場としてなら、貸してもよいと思っています。ただ、借地権が発生すると、なかなか返してもらえないと聞いたことがあるので、きちんと返してもらえるか心配です。借り手の話では、資材管理のための建物を建てさせてほしいということでした。どのようにすれば、確実に返還を受けられるでしょうか。

起訴前の和解制度を利用します。

1.借地権の意義
 借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権を言います(借地借家法2条1号)。
 借地借家法は、借地権に存続保障(同法3条ないし8条)建物買取請求権(同法13条)、強行規定(同法9条、16条)等を認めていますので、借地権は、単なる地上権、土地賃借権よりも強く保護されます。
2.借地権の成立要件
 借地権が成立するためには、建物の所有を目的として、地上権設定契約又は土地の賃貸借契約が締結されることが必要です(同法1条)。

(1) 「建物」の所有を目的とすること
 地上の工作物には住宅、工場、倉庫、広告塔、ガスタンク等の様々なものがありますが、その工作物の、種類、構造、用途、規模等を総合して、借地借家法上保護されるべき「建物」の所有を目的とするものであると判断されることが必要です。しかし、建物として登記されている必要はなく、家屋課税台帳に記載されている必要もありません(最判昭28.12.24民集7-13-1633)。

(2)建物の所有を「目的とする」こと
建物の所有が、借地の主たる目的ではなく、主たる目的を達するための設備として作られていたり、従たる役割を果たすにすぎないときは、借地借家法の適用はないと考えられます(法セミコンメ借地借家法127)(大判昭15.11.27民集19-2110、最判昭42.12.5民集21-10-2545等)

(3)「地上権又は土地の賃借権」であること
 土地を無償で借りる使用借権は、借地権の対象から除かれています。無償の地上権は、明文で除外されていませんので、借地権が成立することを前提に、有償を前提とする規定(同法3条ないし8条、13条、17条、18条)の適用は排除され、排除の必要のない10条15条等の適用は認めるべきだと思われます(注釈借地借家法15-826)。

(4)借地借家法適用の判断
 ある借地関係が、建物の所有を目的とするか否かは、「契約の際の当事者の意思」によって決定されます。当事者の意思が明らかでない場合は、現実に借地がどのように利用されているかが、当事者の意思の判断に影響します(鈴木・借地法127)。

対応策

(1)契約書の記載
 土地を貸す際は、契約書に、【1】資材置場としての使用を目的とすること、【2】建物の築造は不可とするか資材置場としての使用に付随する限度でのみ認めること、【3】短期の返還期日を定めること、【4】賃貸期間を短期とする理由も付記しておくこと、【5】返還の際、築造した建物を収去し、その対価を求めないこと、等の事項について明文で定めておくべきです。

(2)公正証書の利用
 上記の契約書に付いては、公正証書にしておけば、公証人が賃借人の意思を確認しますから、賃貸人としてもより安心です。
 しかし、賃借人が期限になっても明け渡さないときは、賃貸人から裁判を起こし、勝訴判決を得て、その判決が確定した後に、強制執行する他ありません(民事執行法22条1号)。公正証書は、訴訟の際には有力な証拠となるでしょうが、裁判が確定するまでには、何年もかかることもあり、期限後の速やかな明け渡しは期待できないのが現状です。

(3)起訴前の和解(即決和解)の利用
 そこで、土地を貸すに際して、起訴前の和解(即決和解)を利用する方法があります(民事訴訟法275条)。
 起訴前の和解が成立すると、その内容は調書に記載され(民事訴訟規則169条)、確定判決と同一の効力を有しますので(民訴法267条)、和解で明け渡し期限を定めておけば期限後直ちに強制執行ができ(民執22条1号)、迅速かつ確実に土地の返還が受けられます。
 なお、起訴前の和解は、「民事上の争」についてなされると規定されているため(民訴法275条1項)、土地を貸す場合に即決和解を利用できるか問題ですが、借地権の成否は訴訟上の争点として争われることもあり、将来の紛争発生の可能性がありますので、「民事上の争」があり利用できると考えます(東地判平元.9.26判時1354-120)。

(1)契約・和解後の留意点 なお、当初の契約や和解において、建物の所有を目的としないものとして貸したものであっても、【1】現実に建物が長期に亘って存在し、【2】地主がこれを知りつつ異議を唱えなかった場合は、契約の目的が変更されたものと認められることがあり得ますので、注意が必要です。

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