法律Q&A

分類:

事業用借地権・定期借地権

弁護士 近藤 義徳
1997年4月:掲載(校正・筒井剛2001年2月)

地主の権利を強くしたと言われる、事業用借地権・定期借地権とはどんなものか?

先祖から受け継いだ土地があり、一定の時期が来たら確実に土地の返還が受けられるのであれば土地を貸してもよいと思っていました。そうしたところ、借地借家法は、事業用借地権や定期借地権を新たに設けたと聞きました。これらの借地権を利用するには、どのような手続きが必要ですか。また、土地を貸す時の留意点も教えてください。

契約更新等の借地権の存続保障規定が適用されない借地権です。

1.広義の定期借地権
 借地借家法は、一定期間の経過によって土地を返還する義務を定めた(普通借地権を基礎としつつ、契約更新等の借地権の存続の保証に関する規定が適用されない)借地権を新たに創設しました(広義の定期借地権)。具体的には、【1】狭義の定期借地権(同法22条)、【2】建物譲渡特約付き借地権(同法23条)、【3】事業用借地権(同法24条)がその内容をなしています。
 同法がこのような借地権を新たに設けたのは、決まった時期に土地の返還を受けたいとする地主の要望に応え、借地の供給を増やすことを狙ったものです。実際にも定期借地権を利用した戸建住宅や、マンションが供給され初め、価格が安いために人気となっています。
2.狭義の定期借地権
(1)意義
 通常、定期借地権と言う場合は、狭義の定期借地権を指しています。これは、契約の更新、建物の築造による存続期間の延長、建物買取請求権がない、存続期間が50年以上の借地権です。

(2)要件
 狭義の定期借地権を設定するには、(1)借地権の存続期間を50年以上に定め、(2)【1】契約の更新がないこと、【2】建物の築造による期間の延長がないこと、及び【3】借地権者が13条の建物買取請求を有しないことを定めて、(3)これらの特約を記載した書面を作成する必要があります(同法22条)。

 仮に50年未満の存続期間を定めて、上記【1】【2】【3】の特約をしても、第9条及び第16条に違反するものとしてその特約は無効になり、約定期間が30年以上であればその期間、30年未満であれば30年を存続期間とする普通借地権が成立します。
 また、(2)の【1】【2】【3】の要件のうち一部が欠ける場合の定期借地権の成立については争いがありますが、法定期間の30年を存続期間とする普通借地権が成立するとの見解が妥当と思われます。なぜなら、この場合にいろいろな類型の定期借地権が成立するとなると、混乱が生じますし、(2)の特約だけ無効とすると地主に酷で、契約全体が無効とすると借地権者に酷だと考えられるからです。

(3)借地関係の終了
 定期借地権の期間が満了すると、借地権者は、建物を収去して土地を明け渡すことになります。

 借地権が賃借権である場合、そのまま使用を継続しても地主が異議を唱えなければ、黙示の更新が認められると考えます(民法619条)。黙示の更新後の賃借権は期間の定めの無いものになり、当事者は、いつでも解約申入れができ、その1年後に賃貸借契約が終了すると解されます(民法617条1項1号)。
借地権が地上権の場合は、黙示の更新の規定がありませんが、賃借権とのバランス上、類推適用を認めるべきだとの見解が有力です。

2.事業用借地権
(1)意義
 事業用借地権は、専ら事業用建物の所有を目的として存続期間を10年以上20年以下と定めた、契約の更新、建物の築造による存続期間の延長、建物買取請求権がない借地権です。

(2)要件

 事業用借地権を設定するには、【1】専ら事業用建物の所有を目的とし、【2】存続期間を10年以上20年以下に定めて、【3】公正証書で契約する必要があります。
 狭義の定期借地権では、一定の条件の下で、契約の更新等がない旨を定める「特約」を認めるとの考え方を取
りましたが、事業用借地権は、一定の条件を満たせば、当然に借地権の存続保障規定等が排除されることになります。

 1)
  事業用であるか否かは、その旨を当事者が約束しただけでなく、客観的な事情も考慮して判定されます。
 事業用借地権は、借地人の居住の利益を害することのない場合に、存続保障を排除したものですから、「専ら」との限定 が付されたのは、居住用の要素があるものは除外する趣旨だと解されます。
 また、事業の用に供する建物であっても、その事業が居住用の建物の供給事業である場合には、建物居住者の居住の利 益を害することになりますから事業用借地権の対象となりません(24条1項括弧書)。

 2)
  存続期間が10年以上20年以下とされたのは、事業用借地権を利用すると予想される業種のニーズと普通借地権への 悪影響を考慮した結果であるとされています。
 この範囲以外の存続期間を定めた場合には、存続期間30年の普通借地権として扱われることになります。

 3)
  事業用借地権の設定は、その要件があることを設定時にチェックできるようにし、将来の紛争予防を図るために、公正証 書によるべきものとされました。

(3)用途変更と解除、消滅
事業用借地権者が、改築等によって居住用建物を所有することになった場合は、債務不履行となりますが、地主との信頼関係を破壊すると認められなければ、解除は否定されると考えます。その場合、用途が変更されても、事業用借地権の性質を失うことにはならないので、原則として期間満了によって借地権は消滅します。ただ、黙示の更新に関しては、定期借地権と同様に考えて良いでしょう。

対応策

 定期借地権を利用した建売住宅やマンションの販売は、価格を低く抑えることで購買者のニーズに合致し、好評を博しています。
 しかし、定期借地権や事業用借地権の制度は、平成4年8月にスタートしたばかりで、まだ十分に成熟した制度とは言えません。問題が起こるのはむしろ、土地の返還期限が来る頃ではないかとも言われています。
 これらの契約に際しては、当事者の双方が制度の内容を十分に理解しておくことが必要です。建築業者や販売業者の説明を鵜呑みにせず弁護士の意見を聞いておくことが重要だと思われます。

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