法律Q&A

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競売時の敷金保証金等の保護

弁護士 近藤 義徳
1997年4月:掲載(補正・岩出 誠 2008年11月)

賃借中の建物が競売で落札された場合に、前の貸し主に差し入れてある敷金・保証金はどうなり、建物の使用は継続できるのですか?

Aは銀行からお金を借りて建物を建て、それを銀行借入の担保にしました。XはAからその建物を借りていたところ、Aは銀行にお金を返せなくなったため、銀行が担保権を実行して建物を競売し、Yが競落しました。XはYから立ち退きを求められてもそのまま使用を続けることができるでしょうか。また、建物を明け渡すときに、Yに対して敷金の返還を請求できるでしょうか。

建物の賃借人が、建物の引渡しを受けた時期で結論は異なります。

1.敷金・保証金の承継
(1)敷金
 建物賃借人が競落人に賃借権を対抗できる(使用を継続できる)場合は、競落人が賃貸人の地位を承継しますので、競落人に対して敷金の返還を求めることができます。しかし、競落人に賃借権を対抗できない場合は、敷金の返還を請求することはできません。

(2)保証金
 保証金には、敷金と同様の性質を有する場合と、消費貸借としての性質を有する場合があると言われています。その区別については、保証金の金額、保証金授受の趣旨、近隣の敷金相場などを総合的に考慮して判断されます。
 保証金が消費貸借の性質を有する場合は、その返還義務は競落人に承継されませんので注意が必要です。

2.建物賃借権の対抗要件
 建物賃借人は、賃借権を登記する事によって建物の所有権を取得した第三者に対して、賃借権を対抗することができます(民605条)。しかし、登記をするためには、賃貸人の協力が必要なため、実際にはほとんど利用されていません。
 そこで、借地借家法は、建物の賃借人が賃借権の登記をしなくても建物の引き渡しを受けたときは、建物の所有権を取得した第三者に対して、賃借権を対抗することができるとし(同法31条1項)、建物の賃借人を保護しています。
3.競落と使用継続の可否
 賃借中の建物が競落された場合、賃借人が使用を継続できるかどうかは、賃借人が賃借権の対抗要件(登記または引渡し)を取得した時期によって異なります。

(1)建物の第一順位の抵当権設定登記よりも前に対抗要件を備えた場合
 この場合は、建物賃借権が抵当権に優先しますので、建物が競落されても賃借人は競落人に対して賃借権を対抗できます。

(2)建物の第一順位の抵当権設定登記よりも後に引渡しを受けた場合
 旧民法では、3年以下の賃借期間を定めたときは、短期賃貸借として保護されていましたが、悪用されることが多かったため、廃止されました。したがって、この場合、賃借人は、競落人に賃借権を対抗できません。賃借人が賃借権を登記していても競落の際に職権で抹消されますし(民執82条、59条)、競落人は、競落後引渡命令によって、簡易に建物の引渡しを受けることが可能です(民執83条)。
 もっとも、建物の賃借人は、競売における買受けの時から6ヶ月間は建物の引渡しを猶予されることで、保護されています(民法395条)。

対応策

 建物を賃借するときは、その建物の登記簿謄本を取り寄せて抵当権設定登記、差押登記などを確認しておくべきでしょう。
 すでに抵当権が設定されている建物を賃借するときは、競売される可能性があることを覚悟しておかなければなりません。

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