法律Q&A

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登記簿の関連資料とは

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1997年4月:掲載

調査したい不動産の位置や形状を調べるにはどうしたらいいですか。

甲社では、現在の営業所の規模を大きくするために営業所の周りの土地を買収する計画を密かに進めていますが、近所の不動産の権利状況を調べるにはどうしたらいいですか。

登記所に備えつけけられている各種図面を閲覧・謄写して調査し、最後は現地見分をすべきでしょう。

1.登記簿の関連資料の種類
 調査対象となっている不動産の登記簿の表題部を見れば、その不動産の物理的な現況が分かり、甲区を見れば現在の当該不動産の所有権者が推定され、乙区を見れば現在の当該不動産をめぐる権利関係が分かることは、設問[2-5-2]で解説した通りです。しかしながら、これだけでは不動産の調査として十分とは言えません。つまり、登記所に調査に行ったのに付近の不動産との位置関係が分からなければその調査に何らの意味を持たないことがあり、まさに設問のような場合はそうでしょう。確かに、現地に赴いて付近の住民に聞き取り調査を行えば目的を達成できるかもしれませんが、設問の場合のように、計画がいまだ秘密で進められているような場合にこのような方法を取ると、計画の存在が表沙汰となり計画がうまくいかなくなる可能性が高いです。従って、誰でも調査できる登記簿の調査の際に図面で不動産の位置や形状を調査できるようにしておく必要があるのです。
このようなことから、法律では登記所に地図及び建物所在図を備え付けることとなっています(不登法14条)が、他にも登記所が保管している関連資料があり、それらをまとめると以下の通りになります。

(1)土地図面としての地図
土地は隣接する土地との関係においてその位置・大きさが決まりますが、登記簿だけではその1筆の土地についての情報は極めて不十分です。そのために地図が必要とされ、地図は1筆又は数筆ごとに作成され、これにより各筆の土地の区画および地番を明確にします(不登法14条2項)。
縮尺は500分の1で正確な測量と調査に基づいて作成されていますが、登記所に備えられている地図はわずか約440万枚でしかもその内約250万枚が後で説明する公図であり、地図の整備は極めて不十分といわざるを得ません。

(2)土地所在図
公有水面埋立などにより土地が新たに生じたような場合の土地の表示登記の申請の際に添付されるもの(不登規則76条)で、これにより登記官は地図に区画線を引いたり、地図の訂正・修正を行います。

(3)地積測量図
土地の分筆登記などの際に提出される図面で、各筆の土地の所在、地番、方位、形状、隣地の地番、地積の求積方法、境界標などを表示しています。(不登規則77条)
登記官はこれにより、その求積方法や数値の正当性を確認します。

(4)地役権図面
地役権の登記は1筆の承役地の一部についても認められており、その範囲を図示して明示したものです(不登規則79条)。地役権が承役地のどの範囲に及ぶかを明確にします。

(5)建物所在図
1個又は数個の建物ごとに作成され、各個の建物の位置と家屋番号を明示し(不登法14条3項)、縮尺は500分の1です。同一地番の上に数個の建物が建っている場合には、所在地番だけでは建物を特定できないので、図面上建物の位置を示し建物を特定して登記簿と現地における建物を結び付ける必要がありますが、その際に必要となります。但し、地図と同様、登記所における整備は極めて不十分です。

(6)建物図面
新築等による建物表示の登記等において、建物の所在を明確にするために申請書に添付するもので、建物所在図に建物の位置や家屋番号を記載します(不登規則82条)。どの土地のどの部分にどんな形の建物が存在するかを示すものです。

(7)公図
1の地図に準ずる図面(法14条第4項)で地図が備え付けられるまでの間、これに代わって登記所に備え付けることとされており、土地の位置、形状及び地番を表示しているものです。昭和25年の法改正(土地台帳法等の一部を改正する法律)により税務署から登記所に移転されたもので、主に徴税上の目的で明治初期から中期にかけて作成されたものを修正して現在に至っています。従って、測量技術が充分でない時期に作成された図面を基本としているので精度も高くなく見取図的な図面も多いのです。現在約250万枚の公図が備え付けられていますが、この内見取図的な参考図が約50万枚あるといわれています。ただ、公図は土地の位置・地番についてある程度の事実上の証明力を有しますので、訴訟において有力証拠となることがあることには注意すべきでしょう。また、公図は徴税上の資料ですので、税を少なくするために縄のびを考慮して現況よりも小さく作図されています。

(2)閲覧・交付請求の手続き
まず、閲覧したい土地又は建物を管轄する登記所が、コンピュータ・システムを導入しておらず、バインダー式の登記簿を備えて登記事務を行っている登記所であるときは、必要な事項を記入した請求書を提出すれば、登記簿を閲覧することができます。さらに、誰でも登記事項証明書(磁気ディスクをもって調製された登記簿における登記事項の全部又は一部を証明した書面のことで、登記簿の謄本や抄本と同じ内容のものです)や地図の写し、登記簿の附属書類の写しの交付請求ができますので(不登法119・120・121条)、登記所に請求書を提出して申請します。なお、請求対象の土地又は建物を管轄する登記所がコンピュータ化された登記所である場合は、登記情報交換サービスを利用することにより、最寄りのコンピュータ庁に請求することもできます。なお、地図等の閲覧又は写しの手数料は、1筆の土地又は1個の建物につき500円です。

対応策

以上のことから、甲社とすれば、まず営業所付近の地図・公図と建物所在図を閲覧して、どの土地のどの部分にどのような建物が建っているかを確認すべきです。その後、判明した地番や家屋番号等を参考に各登記簿を閲覧すれば、各物件の所有者や現在の権利関係が明らかになります。もし、地役権を設定している土地があったら地役権図面も閲覧してその権利の範囲をしっかりと確認しておくべきでしょう。

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