法律Q&A

分類:

株主の権利義務

弁護士 菊地 健治
1997年4月:掲載(校正・岩野 高明2007年10月)

株主は、会社、代表取締役、取締役会に対してどのような権利を持ち、義務を負うのですか。

私は、古い取引先が個人経営商店から株式会社組織になるに際して、出資をし、株式を取得し、株主になりました。株を持つと配当を受けられるということくらいしか分かっていません。株主になるとどんな権利があるのでしょうか。また、株主だと何か義務を負うことになるのでしょうか。

株主の権利としては、配当請求権や議決権等があります。一方、株主の責任としては、出資金の限度での有限責任しか負いません。ただし、名前だけの取締役になるときには注意が必要です。

1.株主の権利
 株式会社は資本金を資金源として取引活動を行う会社です。資本金の出資者たる地位のことを株式といいます。したがって、株主は、いってみれば、会社の所有者です。
 株主には、大きく分けて2つの権利があります。ひとつは、会社から直接経済的な利益を受けることを目的とするものであり、剰余金配当請求権(会社法105条1項1号)がその中心です。これは、会社が営業活動により生みだした利益の分配を要求するもので、いわゆる配当を受ける権利のことです。
 もうひとつは、会社の運営に関与することを目的とするものであり、その中心となるのは議決権です。これは、株主総会において、会社の経営に関する決定に自己の意見を反映させる権利です。
 ただ、株主は会社の出資者ではあっても、株主が経営者としての才能を有しているかどうかはまた別の問題です。そこで、会社法は、株主が決定する事項は会社の基本的事項にとどめ、会社の経営に関しては、株主自身が専門家を選任し、これらの者に任せることとしました。
 このように、株主が議決権を行使できる事項は、会社の経営に関する事項のうち基本的なものに限られていますが、その中には、取締役の選任(会社法329条1項)や、剰余金の分配(会社法454条1項)なども含まれています。
株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に開催しなければならず(会社法296条1項)、株主総会では株主は原則として1株につき1議決権を有し、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席して、出席した株主の議決権の過半数の賛成が可決の要件になります(特定の重要事項についてはこれより加重された要件になります。)。したがって、株式を多数保有している大株主ほど決議に際してその影響力を行使できることになります。
 ただ、日本の株式会社のほとんどは株主総会も取締役会も定期に開催されないいわゆるワンマン会社であり、会社法の規定どおりに運営されているものではありません。株式も特定の少数によって保有され、株主と代表取締役を含めた取締役とが同一人物である場合も多いのです。これは従来の商法のイメージする株式会社とは実はかけ離れているものでした。そこで、平成17年に成立した現行の会社法においては、日本における株式会社の実態に即して、さまざまな機関設計をすることができるようになりました。
2.株主の責任
 株式会社における株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする「有限責任」とされています。(会社法104条)。つまり、株主は出資をして株主たる地位を取得するわけですが、会社の取引先などに対する責任をいっさい負わず、会社が倒産するなどして活動ができなくなったとしても、出資した金員が返還されないというだけで済むということです(株主が会社の取締役にも就任していた場合には、取引先に対して責任を負う場合も出てきますが、その際の責任は取締役としての責任であって、株主としての責任ではありません)。言い換えれば、取引の相手方は、株式会社の財産のみを当てにできるのであって、株主の個人財産を当てにすることはできません。
 一方、取引を株式会社ではなく、個人事業主が自分の名前で取引を行った場合はどうでしょうか。約束どおりの支払いが行えないときでも債務は残り、破産をしないかぎり(正確には破産宣告を受けて免責決定を受けなければなりません。)、その支払義務を負うことになります。
 ここに個人商店から会社組織にするメリットがあるわけです。
このように株主は、会社の取引先を初めとする会社の債権者からは、義務の点で大いに解放されています。
 しかし、あなたが株主となる以上に名前だけでも取締役に就任したりしますと、名前を貸しただけという言い分が通らない場合がありますので注意してください(名前を貸しただけの取締役の債権者に対する責任を認めた判例もあります。最判昭和55年3月18日判時971号101頁等)。
また、株式会社で取引をすれば、いざというときに個人の財産を守ることができるという理由で株式会社を設立して取引を行うケースがありますが、このような株主の有限責任を悪用すると、会社債権者との関係で株式会社の法人性を否認して、その背後の出資者である株主の責任が認められてしまう場合がありますので(これを法人格否認の法理といい、判例も集積されております。最判昭和44年2月27日民集23巻2号511頁等)、本件とは別ですが、会社を設立、経営しようとするときは注意をしてください。

対応策

以上のとおり、株主になったということだけでは、出資金が返還されないという限度での責任を負うのみであって、会社の債権者から株主個人の責任を追求されることはありません。

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