法律Q&A

分類:

株式の譲渡制限

弁護士 菊地 健治
1997年4月:掲載(校正・岩野 高明2007年10月)

株式の譲渡を禁止することができますか。

私は、オーナーとしていつまでも会社に君臨したいと思っています。何かを契機にして株式が散らばって私の会社に訳の分からない人が入ってこられては困ります。株式の譲渡を禁止することができませんか。

株式譲渡を禁止することはできませんが、制限することはできます。

1.株式の譲渡
 株主とは、株式会社に出資して株式(社員たる地位)を取得した者をいいますが、株主は、会社が解散するなどの場合を除き、株式を譲渡する以外には投下資本を回収する方法がありません。そこで、株主の投下資本回収の手段を確保する必要から、株主は、株式を自由に譲渡することができるというのが大原則とされています。これを株式譲渡自由の原則と言います(会社法127条)。
2.譲渡制限規定
 ところが、現実の株式会社は、小規模の同族的且つ閉鎖的な会社がほとんどであり、むしろ株式が譲渡されて従来の株主とは何らの関係のない赤の他人が株主になることの方が問題である場合があります。そこで、会社の根本法規である定款において、全ての株式または一部の種類の株式を譲渡するには会社の承認を要する旨を定めて、株式の譲渡を制限することが認められています(会社法107条1項1号、108条1項4号)。
改正前の商法においては、譲渡制限をする場合はすべての株式についてすることが前提とされていましたが、会社法では、定款の定めにより、株式の種類ごとに譲渡制限をすることができるようになりました。また、譲渡制限株式の譲渡の承認は、取締役会設置会社では取締役会が行い、取締役会を設置していない会社では株主総会が行うのが原則とされていますが、定款で異なる定めをすることができますので(会社法139条1項)、たとえば代表取締役がこの承認を行うと定款で定めることもできます。なお、譲渡制限がなされている場合には、株券と会社の商業登記簿にその旨が記載されます。
3.譲渡制限規定違反の株式譲渡の効力
 定款において株式の譲渡制限が定められている場合に会社の承認を受けずになされた株式譲渡の効力について、判例は、「取締役会の承認をえずになされた株式の譲渡は、会社に対する関係では効力を生じないが、譲渡当事者間においては有効である」と判示しています(最判昭和48年6月15日民集27巻6号700頁)。従って、定款において、譲渡制限の定められている場合には、会社の承認を受けない限り、会社に対しては譲渡の効力を主張できません(名義書換を請求しても拒絶されます)。
4.譲渡制限規定の下での株式譲渡の方法
 定款において株式の譲渡制限が定められている場合の株式譲渡の方法は以下のとおりです。
株式を譲渡しようとする株主は、会社に対して、[1]譲渡しようとする株式の種類及び数、[2]譲渡の相手方の氏名または名称、および、[3]会社が当該譲渡を承認しない場合に、会社または指定買取人が当該株式を買い取ることを請求するときはその旨、を明らかにして承認等を請求します(会社法138条1号)。特定の相手方に対して譲渡したいが、それ以外の人には譲渡したくない場合には、[3]の会社または指定買取人による買取の請求はする必要がありません。
承認請求に対して譲渡を承認しないときは会社は請求の日から2週間以内に不承認の旨を通知することができ、2週間以内に不承認の通知を発しない限り承認したものとみなされます(会社法145条1号、136条)。株主が会社または指定買取人による買取請求をした場合には、会社は、譲渡不承認の旨を通知した日から40日以内に買取の通知をしなければならず、この通知をしない限り承認したものとみなされます(会社法145条2号、141条1項)。
買取人が指定されたときは、指定買取人は、請求した株主に対し、譲渡の対象となっている株式の数に対応した会社の純資産額を供託したうえで、当該供託の書面を添付して、買取の通知をしなければなりません(会社法142条1項、2項)。この通知により、当該株式の売買契約が成立するとされています。
譲渡の承認を請求した株主は、当該株式が株券発行会社の株式である場合は、通知を受けた日から1週間以内に株券を供託してその旨を指定買取人に通知しなければなりません(会社法142条3項)。請求した株主が株券を供託しなかったときは、指定買取人は、売買契約を解除することが出来ます(会社法142条4項)。
 売買代金額については、会社(指定買取人が買い取る場合には指定買取人)が株主と協議して定めるか(会社法144条1項)、または、買取通知の日から20日以内に裁判所に対して売買価格の決定の申立てをすることができ、右期間内に右申立てをしない限り、供託金額が売買代金とされます(会社法144条4項、5項)。
5.その他の株式譲渡の禁止又は制限
 株式の自由譲渡性は、会社法の規定(35条、128条2項、135条1項)及び会社法以外の規定(独占禁止法9条2項・10条1項・11条・14条・17条、日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律1条等)によっても制限されることがあります。

対応策

定款に「株式の譲渡については取締役会の承認が必要である。」などと定めて、株式の譲渡を制限することにより、他人が株主となり経営に関与してくることを防ぐことができます。しかし、株式の譲渡を一切禁止することは、株式の自由譲渡性という基本原則に反することになので認められません。

予防策

会社の設立後に、定款を変更して、全ての株式の譲渡制限を定めるには、株主総会の特殊決議(議決権を行使することができる株主の半数以上にして、当該株主の議決権の三分の二以上に当たる多数の賛成を議決要件とする決議)が必要とされ(会社法309条3項)、また、ある種類株式の譲渡制限を定めるには、当該種類株主総会の特殊決議が必要とされます(会社法324条3項1号、111条2項、108条1項4号)。さらに、決議反対株主には株式買取請求が認められますので(会社法116条1項、2項)、変更手続は、とてもわずらわしいものとなります。ですから、株式の譲渡制限を希望する場合には、当初から、原始定款をもって、その旨を規定しておくべきです。

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