法律Q&A

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株主名簿の管理

弁護士 船橋 茂紀
1997年4月:掲載(校正・岩野 高明2007年10月)

株主名簿は必ず作成しなければならないのですか。株主名簿の管理方法を教えて下さい。

 当社は含み資産がありますが、赤字続きで経営不振に陥っています。Aは当社の株主ですが、破産状態だと噂されています。
Aが株主名簿の閲覧を求めてきました。会社としては、どのように対応したらよいでしょうか。

株主名簿は必ず作成し、本店に備え置かなければなりません。

1.株主名簿の制度
 本来は、株主が株主としての権利(株主総会における議決権の行使、利益配当請求権の行使等)を行使するには、株券が発行されている限り、いちいち株券の提示をしなければならないはずです。しかし、それでは、会社にとっても株主にとっても煩瑣なので、株主名簿の記載を基準として権利行使をし、いちいち株券の提示をする必要がないという制度が設けられています。これが株主名簿の制度です。
2.株主名簿の備置き・公開
 会社は、株主名簿を本店に備置かなければならず(会社法125条1項)、その違反に対しては100万円以下の過料の制裁がなされます(会社法976条8号)。そして、会社は原則として、営業時間内はいつでも株主又は会社債権者からの閲覧・謄写の請求に応じなければならず(会社法125条2項)、不当な閲覧・謄写の拒絶に対しては、同様に100万円以下の過料の制裁が規定されています(会社法976条4号)。
 もっとも、株主又は債権者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求した場合や、会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求した場合等は、会社は、株主名簿の閲覧・謄写請求を拒絶することができます(会社法125条3項)。
3.株主名簿の記載事項
 株主名簿には、株主の氏名及び住所、各株主の有する株式の数(種類株式発行会社の場合は株式の種類及び種類ごとの数)、株式を取得した日、各株主の有する株券の番号(株券発行会社である場合)を記載することを要します(会社法121条)。
4.株主名簿の効力
 株主名簿上の株主が権利行使をしてきた場合、会社は、その者が無権利者であることを立証できない限り、その者の権利行使を拒むことはできません。反面、会社は、株主名簿上の株主の権利行使に応じさえすれば、その者が無権利者であっても、悪意・重過失でない限り免責されます。株主名簿上の株主からの権利行使に際しては、会社は、現実に権利行使する者と株主名簿上の名義人とが同一人であることを確認して権利行使に応じればよいのです。
右の同一性の確認は、株主名簿の名義書換の際に予め届け出させておいた印鑑と権利行使の際に押捺された印影との照合によって行い、会社は、相当の注意をもって印鑑の照合をしてその同一性を確認すれば、他に過失が認められない限り免責されます(民法478条。なお、議決権の行使の際には招集通知書の提示により同一性を確認します。)。
また、会社は、株式を譲受けたと主張する者がいても、その者が株券を提示して株主名簿の名義書換をしない限り、その者の権利行使を拒絶することができます(会社法130条1項)。
もっとも、名義書換前の株式の譲受人からの権利行使であっても、会社の方から任意に権利行使に応じることは認められると考えられています(最判昭和30年10月20日民集9巻11号1657頁)。しかし、会社が一度このような対応をした場合、一部の株主には権利行使に応じ、他の株主には応じないなどの対応は、株主平等の原則に反し問題となる余地があります。したがって、名義書換前の株式譲受人からの権利行使に対しては、煩瑣であっても株主名簿の名義を書換えさせた上で権利行使に応じた方が無難です。

対応策

 会社としては、先ずAに閲覧の目的を問いただすべきです。そしてAの目的が株式の高値買取りにあるような場合や他の株主に不当な働きかけをして経営を撹乱させるような場合等には、会社法125条3項各号に当たるとして、閲覧を拒否又は制限すべきでしょう。但し、あくまでも公開が原則なので、不当拒絶・制限にならないように慎重に判断すべきです。
 小さな会社においては、株主名簿が作成されていないことがありがちです。設立当初のメンバーだけの間はあまり問題とならないかもしれませんが、相続、増資、株式譲渡などを契機として第三者が株主になった場合には、株主の確定の問題が生じやすいと思われます。
 株主名簿を作成し、権利行使に使用する印鑑を予め届け出させておくべきです。

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