法律Q&A

分類:

取締役及び取締役会の権限

弁護士 浅見 雄輔 1997年4月:掲載
(校正・筒井 剛2001年2月)
(補正:岩出 誠 2008年11月)

取締役及び取締役会はどんな権限を持っているのですか。

私は来期からA社の取締役になることが内定しました。ところが取締役といっても実際のところ何をしてよいのか分かりません。まずは法律上どのような権限をもっているのか教えて下さい。

取締役は取締役会の構成員として会社の意思決定に参画し、代表取締役の職務を監督する権限を有します。

1.取締役の選任
 代表取締役が、取締役会で選任されるのと異なり、取締役は、株主総会で選任されます(会社法329条1項)。したがって、株式会社では、株主総会が取締役を選任し、その選任された取締役が取締役会を構成し、その取締役会が代表取締役を選任するという構造となっています。この構造は、株式会社の基本的な構造ですから、これを変更することはできません。したがって、事実上、代表取締役が取締役を選ぶということがあったとしても、株主総会の選任がなければ法的には全く効力はありません。
 なお、株式会社においては、取締役は1人又は2人以上必要であり(同法326条1項)、また、取締役が誰であるかは登記事項ですから、商業登記簿を見れば、誰が取締役であるか確認することができます。
2.取締役と会社の関係
 取締役に選任され、これを受諾した取締役は、他の従業員とは異なり、会社とは雇用の関係ではなく、委任の関係に立ち(会社法330条)、会社に対し善良なる管理者の注意義務をもって職務を行う義務(民法644条)及び会社に対して忠実に職務を遂行する義務を負担する(同法355条)ことになります。
 そして、取締役が自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引をしようとする場合や会社との間で取引をしようとする場合、その他取締役と会社の利益が相反する取引をしようとする場合には、必ず取締役会の承認を受けなければなりません(同法356条、365条)。
3.取締役の権限-取締役会の構成員としての役割
 取締役ときくと何か特別の権限を種々与えられているイメージがありますが、法律上取締役は、まず第一に取締役会を構成する一員としての役割を期待されています。すなわち、取締役会は、会社の業務執行について意思を決定し、代表取締役の職務の執行を監督する権限を有していますから(会社法362条2項)、取締役会の構成員である取締役は、取締役会に出席し、議論・討論に参加することによって会社の意思を決定し、あるいは、代表取締役の行為を監督する役を第一に期待されているのです。
 そして、会社法は、①会社にとって重要なる財産の処分及び譲り受け②会社の多額の借財③支配人(支店長)その他の重要なる使用人の選任及び解任④支店その他の重要なる組織の設置、変更及び廃止等は代表取締役に委任することはできず、必ず取締役会において意思を決定しなければならない(362条4項)と定めています。したがって、取締役は取締役会においてこれらのことについて十分に議論し決定する権限を有します。仮に、これらの事項について代表取締役が取締役会に諮らずに決定したとしても、その決定は無効となります(ただし、それが対外的な取引行為であり、その相手方が取締役会の決議のなかったことを知らなかった場合には相手方との関係においては有効となってしまうことには注意して下さい(最判昭和40.9.22民集19-6-1656)。
4.取締役の権限-単独で行使できる権限
 さらに取締役は、以上の取締役会の構成員としての役割を十分に発揮するために次のとおりの権限が個々に与えられています。
すなわち、個々の取締役は、株主総会に出席し(会社法314条)、取締役会を招集し(同法366条)、会社の運営が軌道をはずれた場合に各種の訴えを提起(同法831条(株主総会決議取消しの訴え)、828条1項(株式発行無効の訴え、合併無効の訴え、設立無効の訴え))をする権限を有します。

対応策

以上のとおり取締役の権限は、取締役会の権限をとおして広範囲に及び、会社の全般にわたるといっても過言ではないでしょう。したがって、取締役としては、常に会社全般のことについて注意し、何か問題がある場合には、自ら取締役会を招集する(招集手続きについては本章[3-4-1]参照)くらいの意識が必要でしょう。特に、近時株主代表訴訟(本章[3-3-5]参照)が盛んに提起され、取締役も監督義務違反等任務懈怠責任(会社法423条)を問われることが多いですから、ただ漫然と代表取締役らの言うことを鵜呑みにしているのでは問題です。

予防策

なお、ある事項につき取締役会の決議に反対したとしても、取締役会議事録に異議を止めない限りは対外的には賛成したと推定され、その取締役会の決議に基づいて為された行為についての責任を問われることになりますから、反対の場合には、議事録にその旨記載してもらうことが必要です(会社法369条5項)。

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