法律Q&A

分類:

違法配当の責任

弁護士 船橋 茂紀 1997年4月:掲載
(校正・小林 昌弘2001年2月)
(補正:岩出 誠 2008年11月)

配当についての基本的なルールを教えて下さい。違法配当を行った場合どのような問題が発生しますか。

A社は、株主Bの相続人Cから自己株式を取得しましたが、取得した株式の貸借対照表の価格相当分を控除せずに配当を実施してしまいました。A社は、どうすればよいですか。

配当のルールは解説(1)で説明したとおりです。違法配当を行うと、違法配当全額の返還の問題と違法配当をした取締役の責任の問題とが生じます。

1.配当のルール
 まず、会社の純資産額が300万円を下回る場合には配当できません(会社法458条)。そして、剰余金配当(旧商法では「利益配当」という呼び名でした)は分配可能額を超えてはならず、その額は次の①②の合計額から③から⑥を控除し計算します(会社法461条2項)。①剰余金の額と②株主総会等の承認を受けた、その期間の利益の額として計上した額およびその期間内に自己株式を処分した場合における対価額を合計し、③自己株式の帳簿価額、④最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における対価額、⑤②の場合におけるその期間の損失の額として計上した合計額、⑥法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額を控除します。また、配当をする場合には、準備金の合計額が資本金の4分の1に達するまで、配当により減少する剰余金の額の10分の1を資本準備金または利益準備金として積み立てなければなりません(同法445条4項)。
2.違法配当
 分配可能額がないのに、又は、それを超えて越えて剰余金配当をすることを違法配当(俗に「蛸配当」と呼ばれてきました)と言います。
3.違法配当の場合の法律関係
(1)
 違法配当の承認決議は、その内容の法令違反として、無効となります。したがって、株主は会社に対してその配当金の支払いを請求することはできません。

(2)
 もし、その支払いがなされた場合には、会社は株主に対してその返還を請求でき(会社法462条1項)、会社債権者は直接株主に対して違法分配額を自己の債権額の範囲内で支払うように請求できます(同法463条2項)。

(3)
 違法配当議案を提出した取締役(取締役会で議案の提出に賛成した者も含まれます)は、違法に配当された額について連帯して弁済する責任を負わされます(会社法462条1項)。もっとも、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、支払う義務を免れます(同条2項)。なお、取締役が責任を履行した場合であっても、悪意の株主に対してしか求償できないとされています(同法463条1項)。

(4)
 法令又は定款に違反して剰余金配当をした取締役には、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金の制裁が規定されています(会社法963条5項2号)。

対応策

会社法上配当可能限度額(剰余金分配可能額)が規定されています。A社は、違法配当額について、株主に返還を求めることができますし、違法配当を行った取締役(取締役会で議案の提出に賛成した取締役も含まれます)に対しても弁済を求めることができます。

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