法律Q&A

分類:

取締役会の議決方法

弁護士 浅見 雄輔 1997年4月:掲載
(校正・小林 昌弘2001年2月)
(再校正・大濱 正裕2007年12月)
(補正:岩出 誠 2008年11月)

取締役会の議決方法のルールを教えて下さい。

私は、この度A株式会社の代表取締役に就任しました。来月早々に初めての取締役会が開催されることになりました。決議しなければならない事項が多数ありますが、議決方法について何か気を付けなければならないことがありますか。

原則として議決に加わることができる取締役本人が過半数以上、現実に出席し、その出席取締役の過半数以上が賛成しなければ決議は有効に成立しません。

1.議決方法のルールの必要性
 取締役会は、複数の取締役で構成されるため、時には意見が錯綜し紛糾することもあります。事が会社の一大事ともなると、後日再び蒸し返され、反対派の取締役から種々理由を持ち出され、前の決議は無効であると主張されないとも限りません。そこで、このような場合に備えて、法律は以下のように議決方法についてのルールを定めています。したがって、原則として以下のルールに従っている限りでは後日無効とされることはありません。

対応策

1.決議の要件
取締役会で決議が有効に成立するためには、原則として、取締役の過半数が出席し、その出席した取締役の過半数が賛成しなければなりません(会社法369条1項)。但し、定款に規定すれば(詳しくは、設問[3-6-1]参照)、この要件を加重することができます(同項但書)。すなわち、例えば取締役会の決議は取締役の3分の2以上が出席し、その出席した取締役の3分の2以上の賛成によると定款に規定すれば、その要件に満たなければ決議は有効に成立しなくなります。この例外の規定は、あくまでも「加重」だけが認められているのですから、例えば、出席者を3分の1で足りるとしたり、3分の1の賛成で足りるなど要件を緩和することはできません。ちなみに「可否同数の場合は、議長の定めるところによる」旨の定めは、決議要件を緩和するものであり許されないとする判例があります(大阪地判昭和28.6.19下民集4-6-886)。
 なお、上記の定足数は、開会の始めに満たされただけでは足りず、討議・議決の全過程を通じて維持されなければならず、決議時にこれを欠くに至った場合は当該決議は無効となりますので注意して下さい(最判昭和41.8.26民集20-6-1289)。

2.代理人による決議・書面決議・持廻り決議の可否
 取締役は、その一人一人が個人的な信頼に基づいて会社から委任を受けているのですから、株主総会と異なり(設問[3-4-5]参照)、代理人により決議することは認められていません。
 また、平成17年改正前商法では、取締役が一堂に会し、意見を交換し、討議することにより取締役会の意思を形成することを求めているのですから、決議は適法に開催された取締役会での決議でなければならず、書面による決議、あるいは持廻り決議は認められていませんでした(最判昭和44.11.27民集23-11-2301)。
  しかし、会社法は、定款で定めれば、議決に加わることができる取締役全員が書面又は電磁的記録により議案である提案に同意の意思表示をしたときは、その提案を可決した取締役会決議があったものとみなすこととし、取締役会の開催を省略することを認めました(370条)。

3.特別利害関係人の議決権の行使
取締役会で決議しようとする事項につき、特別の利害関係を有する取締役がいる場合には、決議の公正を担保するために、その取締役は、当該決議については、議決権を行使することはできません(会社法369条2項)。例えば、ある取締役に会社の財産を譲渡する場合には取締役会の承認が必要ですが(同法356条1項)、その承認の決議には、当該取締役は議決権を行使できません。また、代表取締役の解任決議について、その代表取締役は議決権を行使できません(最判昭和44.3.28民集23-3-645)。 なお、特別利害関係のある取締役は、上記(1)で説明した決議要件の基準となる取締役の数には算入されません(同法369条2項)。

予防策

繰り返しになりますが、上記手続に反する場合には、その決議は無効となってしまいます。したがって、取締役会で決議する場合には、きちんと上記手続を履践することが必要です。また、後日の証拠のため、取締役会が開催されたら、その都度しっかりと議事録を作成し、保存することも忘れないで下さい(会社法371条1項 罰則同法976条8号)。

関連タグ

身近にあるさまざまな問題を法令と判例・裁判例に基づいてをQ&A形式でわかりやすく配信!

キーワードで探す
クイック検索
カテゴリーで探す
新規ご相談予約専用ダイヤル
0120-68-3118
ご相談予約 オンラインご相談予約 メルマガ登録はこちら