法律Q&A

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子会社の整理

弁護士 船橋 茂紀
1997年4月:掲載 (校正・小林昌弘2001年2月)(再校正・石居 茜2008年3月)

子会社をうまく整理する方法を教えて下さい。

息子に会社を任せておいたのですが、赤字経営になったので、これ以上負債を増やさない為に、事業を打ち切ろうと思います。どんな方法がありますか。

子会社を整理するには、倒産処理による方法と吸収合併する方宇と経営権を譲渡する方法とがあります

1.子会社の整理
 重要な子会社の経営不振が企業グループ全体の経営不振とみなされてグループ全体の信用に影響する場合があります。このような場合、親会社としては、無利息貸付・商品の低廉販売・人件費負担・債権棚上・資金提供などの経済的援助、商権譲渡・ノウハウ提供などの営業上の援助、経営者派遣等の人的援助などを行って子会社の再建を図りますが、どうしても再建が困難の場合には、親会社への影響を極力排除した形で子会社を整理しなければなりません。
2.子会社の整理方法
 子会社を整理するには、倒産処理による方法と吸収合併する方法と経営権を譲渡する方法(株式譲渡と営業譲渡とがあります)とがあります。倒産処理による方法にも、裁判所の力をかりる方法と裁判所の力をかりない方法とがあります。裁判所の力をかりる方法には、「特別清算」「破産」の手続があり、裁判所の力をかりない方法には、会社の「解散」及び「清算」の手続があります。
3.各手法の検討
 特別清算と破産とはいずれも清算型の倒産処理手続ですが、破産においては管財人に否認権が認められるなど厳格な手続であり特別清算に比べて柔軟性がなく、裁判所に納める手続費用(予納金)の額も特別清算よりも高額に定められています。
 特別清算手続は、通常清算と異なり、裁判所の監督の下で行われますので、清算人(原則解散時の取締役)の権限は制約され、一定額以上の財産の処分行為等には裁判所の許可が必要となります。債務の弁済は原則として比例按分とし、弁済内容は、債権者集会の多数決で定める協定で定め、裁判所の許可が必要となります(会社法563~572条)。また、特別清算手続に入ると、破産手続と同様、債権者の個別執行が停止されます(会社法515条)。
 親会社に利益があがっている時は、赤字の子会社を吸収合併することも税務対策になりますが、吸収合併をすると子会社の債権債務の一切を引き継ぐことになりますので、子会社の簿外債務によって思わぬ損害を被ることもありえます。
 子会社に採算部門があり、第三者に売却できるときは、その部分だけ営業譲渡し、債務の弁済に充てることも考えられます。赤字の子会社を引き受けてくれる第三者がいる場合には、子会社の株式を譲渡することも考えられます。

対応策

親会社と子会社の取引の状況・子会社の負債総額・債権者数・債権者の内容(銀行か、ノンバンクか、街金融か、暴力団かなど)によって個別的に判断しますが、一般的には、「解散→清算→特別清算」がスムースな処理ができ、且つ、税務上の恩典(法人税法基本通達9-6-5(1)イ、同9-6-1(2)など)が受けられる点で利用されやすい手続です。

予防策

親会社による子会社の再建及び整理に際して、子会社の債権者から、親会社に対して、使用者責任(民法715条)・法人格否認・黙示の保証などの考えに基づき責任追及がなされることも予想されます。また、親会社による安易な子会社の損失負担については、親会社の取締役に忠実義務違反の問題が生じることもありますし、親会社に寄付金課税の問題が生じる余地もあります。方針を決めて、的確な判断を行わなければなりません。

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