法律Q&A

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フランチャイズチェーンによる事業展開

弁護士 船橋 茂紀
1997年4月:掲載 (校正・小林昌弘2001年2月)

フランチャイズチェーンによって事業を展開しようとした場合法的にはどんな問題が生じますか。

コンビニエンスストアー、居酒屋、酒屋、料理店など種々の分野でフランチャイズによるチェーン店展開が行われています。当社は、新たな分野においてフランチャイズビジネスを展開することを考えています。どのようなことを注意して事業展開をするとよいですか。

解説で概観したような種々の問題が生じえます。

1.意義
 フランチャイズ契約とは、本部(フランチャイザー)が、加盟店(フランチャイジー)との間で契約を締結し、自己の商標・サービスマーク・トレードネームその他の営業の象徴となる標識及び経営のノウハウを用いて同一のイメージのもとにフランチャイジーにおいて商品の販売・役務の提供その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価(ロイヤリティー)を支払い、事業に必要な資金を投下して、フランテャイザーの指導及び援助のもとに事業を行うという継続的契約関係をいいます。つまり、別法人格者である本部と加盟店が、同一のイメージ・同一の営業方法のもとに事業を展開する方法です。
2.現状
 フランチャイズシステムには、フランチャイジーにとって、「資金の節約」(企業が、チェーンストアを展開するには不動産の調達など多額の資金を必要としますが、フランチャイズ形式での事業展開を考えると、右資金はフランチャイザーの側で調達するのが原則ですので、フランチャイジーとしては資金の節約が図れます。)・スケールメリットの発揮(フランチャイズシステムは、生産上及び流通上で規模の利益を生み、様々な面で合理化や相乗効果等を可能にしスケールメリットを発揮します。)・マーケティング上の企画実行の容易性(フランチャイズシステムにおいては、イメージの同一性を維持するために緻密且つ詳細な内容のフランチャイズ契約を締結するので、その契約内容の実行が容易であり、マーケティングに役立ちます。)・「有能な人材の募集」(フランチャザジーは独立の商人であり、収益は彼に帰属するので、経営意欲の向上が期待でき、有能な人材の募集に役立ります。)などのメリットがあるため、セブンイレブン・ローソン・ファミリーマートなどのコンビニエンスストアをはじめ様々な事業において採用され隆盛を極めています。
3.法的留意点
(1)
 事業を始めるにあたっては、目的に合ったフランチャイズ契約書を作成し、加盟店と調印しなければなりません。右契約書には、通常、「契約当事者の表示」「契約目的」「用語の定義」「フランチャイズの付与」「商標等の使用許諾」「フランチャイズの地域と店舗の場所」「フランチャイザーの経営指導及び技術援助」「販売促進」「フランチャイザーが調達する物品の表示」「フランチャイジーの支払義務」「本部と加盟店との債権債務の清算方法」「フランチャイジーが販売する商品及び役務の品質管理」「その他フランチャイジーの営業に関する重要な事項」「フランチャイズ契約の期間、終了及び更新」「免責条項」「フランチャイズ契約の譲渡」「連帯保証・根抵当・その他の担保の提供に関する事項」「裁判管轄の合意・仲裁条項・その他の紛争の解決に関する事項」「契約の改正」「契約締結の年月日」「運営規則その他契約書を補充する文書との関係等」を記載します。

(2)
 フランチャイズシステムを巡る法律紛争には、商標・商号・その他の標章の使用差止を求める事件がかなり多くあります。システムを開始するにあたって、きちんと権利の登録等をしておきましょう。

(3)
 フランテャイザーは、名板貸し(商法23条)・共同不法行為責任(民法719条)・使用者責任(民法715条)などの理論構成によって、フランチャイジーの行為について責任を追及されることもあります。契約書においては、「両当事者は、独立の事業者であって、従業員としての関係や代理関係はなく、第三者に対して、そのような表示をしてはならない」旨を明示するとともに、フランチャイザーにおいて第三者に損害を及ぼす事由を発見した場合には、文書をもって注意しておくべきです。

(4)
 赤字店の切り捨てなどを巡って、契約の終了、特に、途中解約の可否、及び、契約の終了に伴う出荷停止が問題となることもあります。途中解約条項及び出荷停止による損害についての免責条項を記載しておくべきでしょう。

(5)
 ノウハウ等を理解した段階で、フランチャイジーがロイヤリティーの支払を回避する目的で脱退したり、他のチェーンから引き抜きにあうこともあります。地域・期間を限定して競業禁止条項を盛り込んでおくべきです。

(6)
 中小小売商業振興法11条1項及び通産省令によれば、一部の悪徳フランチャイザーを排除する趣旨から、一定のフランチャザーが、フランチャイジー希望者とフランチャイズ契約を締結しようとするときは、予め、その者に対し、一定の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明しなければならない、とされています。違反者に対しては、主務大臣から勧告がなされ、更には、公表処分がなされます。

対応策

フランチャイズビジネスには、画一性、多量処理が要求されますので最初の段階で定型の契約書を作成しておく必要があります。作成にあたっては、解説(3)1及び3ないし5で記載した内容を取り決めます。商標・商号等については事前に権利の登録をしておきましょう。

予防策

解説において問題となりそうな点を概観しました。最近、カスミストアなどのようにフランチャイズ契約を巡る法律紛争が頻繁に見られるようになってきました。事業展開にあたっては専門家に相談してみるとよいでしょう。

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