法律Q&A

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取引先の資力、信用の情報収集

弁護士 菊地 健治
1997年4月:掲載(校正・小林 昌弘2001年2月)(再校正・村木 高志2007年12月)

取引先の資力、信用について、どのような方法によって、情報を収集すればよいのですか。

新規顧客と取引を開始するにあたって、その会社が取引を行っても大丈夫な会社がどうか、取引先の信用や資力を取引前に事前に調査する方法を教えてください。

事前に正確な情報を多数収集して、債権の焦げつきを最小限にする努力をします。

1.
 会社が取引を開始するにあたって、取引先がどのような会社なのかを綿密に調査した上で取引を開始することは重要なことです。会社にとって最も注意すべきことは取引先の倒産による債権の焦げつきであり、債権の焦げつきは、即自社の連鎖倒産をも招きかねないからです。
 債権の焦げつきを未然に防止するには、取引先の信用や資力を把握し、焦げつきが生じない範囲で取引をすることにあると言えましょう。
2.
 取引先の信用の調査方法をいくつか挙げて説明をします。

(1)取引先の関係者、同業者からの聞き込み調査
 最もこちらが知りたがっている取引先の情報を持っているのは、既にその会社と取引のある会社でしょう。それから、取引先の同業者も、情報を持っているといえます。したがって、これらの会社に営業担当の社員を派遣させて、情報を収集してみることです。うわさにとどまるような話もあるかも知れませんが、うわさの中に意外と真実が隠されていることもあります。

(2)信用調査会社による調査報告
 企業信用を調査する会社に対して、調査を依頼すると様々な取引先の情報が得られます。代表者の人格、家族、学歴等の経営者個人の事柄から、取引銀行及び預金額や借入額、貸借対照表、所有物件の有無、担保の設定額、主要取引先等のデータが得られます。
調査費用は決して安くはありませんが、費用をかけるだけの価値のある情報が得られます。

(3)登記簿謄本による調査
 取引先の商業登記簿謄本を取り寄せてみます。登記簿謄本は、誰でも閲覧、謄写ができます。商業登記簿謄本には、会社の本店所在地、資本金、発行済株式数、会社役員名、支店所在地、代表者の住所、氏名等が記載されています。これらの記載から、会社の規模が予測できます。なお、本店所在地に赴いたところ、実際には何もなかったというような幽霊会社もありえますから、必ず本店所在地には足を運ぶべきでしょう。
商業登記簿謄本を取り寄せてみたら、本店や支店の所在地、代表取締役の住所地の不動産登記簿謄本を取ってみます。そうすると、その会社が自社物件なのか、賃借しているのかが分かります。本店が賃借物件ですと、担保を提供する資力もない会社ということになります。
代表者の自宅の謄本も取れば、代表者に個人保証の資力があるかどうかもわかります。
なお、自社所有や、代表者個人の所有物件でも、担保割れしている場合には資力がないのと同様ですから、不動産登記簿の乙区欄(担保権の記載のある欄)には充分注意を払って、登記簿を見るようにしてください。

3.その他の調査
 以上に掲げたものが典型的な信用調査方法ですが、この他にも、取引先の経営方針が会社規模に即しているものかどうか等、日々の営業マン等による情報収集がかなり重要です。

対応策

 結局このような形で情報は収集しますが、最終的に会社を守るのは、正確な情報に基づいて、取引先との取引限度枠(与信枠)を焦げつきの出ない範囲で設定するこ とです。
 取引開始後も、現金決済を手形決済に変更してきたとか、支払いを分割払いで要求してきたとか、その他決済条件を変更してきたとき等に取引先の資金繰りが困難になってきたことを素早く察知し、取引を減少するなどの対策を採ることが必要です。
 会社を債権の焦げつきから守る方法は、正確な情報収集以外ないと言っても過言ではないと思います。

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