法律Q&A

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債権時効

弁護士 相川 泰男
1997年4月:掲載(校正・小林 昌弘2001年2月)(再校正・村木 高志2007年12月)

債権を時効消滅させないためにどのような手段があるか。また、日常の債権管理上の注意点は?

商取引から生じた債権の消滅時効は普通の債権の消滅時効より短いと聞きましたが、この時効を防ぐにはどのような方法がありますか。また、債権を時効消滅させないために、日常どのような点に注意すればよいのでしょうか。

一部でも弁済を受けたり、債務承認書を徴求するなど定期的に時効中断の措置を取るほか、債権管理帳簿を整備せよ。

1.商事債権の消滅時効
 売掛金や貸金などの債権は、何もしないで一定の期間放置しておくと権利がなくなってしまいます。これを債権の消滅時効といいます。時効にかかる期間は、債権の種類によって異なり、民法上の取引行為によって生じた債権の消滅時効は原則10年(民法167条)、商取引によって生じた債権(商事債権)の消滅時効は原則5年(商法522条)となっています。このように商事債権が短い消滅時効にかかるのは、商人の世界では迅速に取引が行われ、早期に取引関係を安定させることが必要となるからです。ここでいう商事債権とは、当事者双方にとって商行為である場合に限らず、当事者の一方のみにとって商行為である場合も含まれます。また、商行為によって生じた債務の不履行に基づく損害賠償請求権についても5年の消滅時効にかかります。
2.短期消滅時効
 更に、5年よりも短い消滅時効も多く定められています。例えば、技師、棟梁および請負人の工事に関する債権などのいわゆる工事請負代金は3年(民法170条)、生産者、卸売商、小売人の売却代金などのいわゆる売掛代金は2年(同法173条)、運送賃や飲食代金、動産賃貸借の賃料は1年(同法174条)で、それぞれ消滅時効にかかります。また、手形債権は特に短い消滅時効にかかる場合があります。このように商事債権の中には、原則の5年より短い消滅時効にかかる場合が多いので注意が必要です。
3.時効の起算点
 なお、消滅時効の起算点は、「債権者が権利を行使しようとすればできたとき」と定められており(同法166条)、支払期限のあるときは期限が到来したときから、期限の定めのないときは債権成立のときから、起算されることになります。

対応策

1.時効中断の方法
 債権が消滅時効にかかりそうな場合には、時効期間の進行を中途でくい止める必要があります。これを時効中断といいます。一旦時効が中断すると、その中断事由がなくなった時点から改めて時効期間の進行が始まることになるので、定期的に時効中断の方法をとることにより、消滅時効を防ぐことができます。
 時効中断の方法には、請求、差押え、仮差押えまたは仮処分、承認の3つがあります(同法147条)。
 請求には、裁判上の請求と裁判外の請求(催告)とがあります。裁判上の請求は、訴えの提起のほか、支払督促の申立、和解、調停等の申立、破産、和議債権の届出などの方法によるもので、手続をとった時点で時効が中断し(ただし、手続が却下されたり、取り下げた場合には中断の効力は生じません)、確定判決や、裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって請求した権利が確定すると、消滅時効の期間はその時点から一律10年に延長されます。裁判外の請求(催告)は、簡便な方法ですが、その後6か月以内に裁判上の請求などの手続をとらなければ時効中断の効力は生じません。しかし、時効期間が間近に迫っていて、訴え提起などの準備をする余裕がない場合には、この催告をしてとりあえず時間をかせぐことができます。なお、催告を何度繰り返しても時効中断の効力はありませんので、催告から6か月以内に裁判上の請求などの手続を取らなければなりません。
 債務者の財産に対して差押え、仮差押えまたは仮処分の手続をしたときも時効は中断されます。なお、差押えなどの手続を保証人に対して行ったときには、時効の利益を受ける者、つまり主債務者に通知をしなければ時効は中断しません。
 債務者が債務を認めたときも時効は中断されます。承認と認められるのは、支払猶予の懇願、手形書替の承諾、利息の支払、一部弁済、反対債権による相殺、借主の承諾のもと貸主が担保物からの収益を受け取って利息に充当した場合などがあります。したがって、債務者からたとえ僅かでも一部弁済を受けることができれば、承認によりその時点で時効が中断します。

予防策

1.債権管理帳簿の整備
 営業上の債権については、確実に債権の回収、保全の措置が取れるよう、債権の発生、変動に応じて、債権の状況を把握して行くことが必要です。多くの会社では、取引発生の都度、複式簿記による仕訳伝票を起こし、これを総勘定元帳に転記するシステムを採用していますが、取引態様に応じて管理して行くため、各種の元帳やその補助簿を作成しています。そこで、債権管理のために、例えば売掛金元帳や受取手形記入帳を作成し、顧客毎の売掛金の発生・消滅を記録するほか、担保や回収の条件、状況を把握するための補助簿を工夫して、常に消滅時効の期間を把握しておくべきでしょう。
2.債務承認書の徴求
 このようにして管理した債権の時効が近づいてきたときは、最も簡便な時効中断の方法として、債務者に債務の承認をさせるようにします。
 そこで、まず、債務の全額でなくとも一部だけでも支払うよう請求することです。債務の一部弁済であっても、一部の弁済であることを明示しておけば、債務全部について承認したものとされ、時効中断の効果が発生するからです。次に、一部でも支払うことができないという場合には、残高確認書等を債務者から徴求することが行われます。この確認書は、方式を問いませんが、債権の発生原因及び金額を特定し、作成年月日を記載した書面に、債務者が署名ないし記名捺印するのが通常です。特に承認の年月日は時効の中断日として重要ですので、これを確実に証明するため、公証人役場で公証印をもらっておくと一層確かになります。

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