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抵当権の実行方法

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2008年5月:掲載

抵当権を実行して債権回収を図りたいのですが、具体的にはどのようにして実行すればよいのですか。手続の流れを教えてください。

甲社は、乙社に乙社所有の土地と建物を抵当として金3000万円を貸していましたが、支払期限が過ぎてもなんら連絡がないので甲社からの幾度にも及ぶ催促をしました。しかしながら、乙社の態度に何らの誠意が見られないことから、甲社としては抵当権の実行を決意しました。どのような手続になるのでしょうか。

裁判所に必要書類をそろえて競売の申立てをしてください。後の手続きは解説の通りです。

1.抵当権の実行方法
 抵当権者が優先弁済を受けるための手続きは、通例は、民事執行法の定める不動産競売の手続きによります(民事執行法180~188・194条)。民事執行法の施行(昭和55年10月)以前においては、抵当権の実行としての競売と、一般債権者がその債権の強制的実現を図るためにする強制執行としての競売(強制競売)とは区別され、後者が民事訴訟法によって規律されたのに対し、前者は競売法という別個の法律によって規律され「任意競売」と呼ばれていました。民事執行法は、それまでの手続きの不備・欠陥を是正し、より合理的なものとするために制定され、強制執行及び担保権の実行としての不動産の競売は「不動産競売」と呼ばれています。
2.不動産競売の要件
【1】抵当権が存在すること
  まず、有効な抵当権が存在することが必要です。民事執行法は、抵当権の存在を証する確定判決もしくは家事審判法15条の審判またはこれと同一の効力を有するもの、公証人の作成した公正証書、抵当権の登記(仮登記を除く)のある登記簿のうち、いずれかの謄本を提出しなければなりません(同法181条1項1~3号)。抵当証券の所持人が競売の申立をするには、抵当証券を提出しなければなりません(同条2項)。

【2】被担保債権が存在すること
  抵当権は、被担保債権の弁済を確保するために存在しますので、被担保債権の存在が必要です。なお、抵当権者は、競売申立てにあたって、抵当権の存在を証する文書を提出すれば足り、被担保債権の不存在や消滅は、債務者・所有者の側から、競売開始決定に対する執行異議(同法182条)や、担保権不存在確認の訴え等によって主張することとなります。

【3】履行遅滞にあること
  被担保債権の履行期が到来していることが必要です。ただし、抵当権者の側が、履行期の到来を立証する必要はありません。

 【4】第三取得者による抵当権消滅請求
  抵当不動産につき所有権を取得した第三取得者は、抵当権消滅請求をすることができます(民法第378条)。抵当権者は、抵当権消滅請求を受けた後2ヶ月以内に競売を申立てないときには、抵当権消滅請求者の評価額を承諾したものとみなされますが、評価額に不服があるときは、この期間内に競売を申し立てることにより、抵当権の消滅を避けることができます(民法第384条1号)。

3.競売手続き
(1)競売開始決定
 適法な競売の申立てがあったときは、裁判所は競売開始決定をします(民事執行法188・45条1項)。競売開始決定は、債務者及び抵当権不動産の所有権者に郵送され(同法45条2項・181条4項)、裁判所書記官の嘱託により差押えの登記がなされます(同法48条1項)。差押えにより不動産所有者はその抵当不動産について処分することが禁止され、たとえこれに反する処分をしても、この競売手続きとの関係ではその効力が認められません。なお、差押え後も不動産所有者は、通常の用法にしたがって不動産を使用または収益することはできます(同法46条2項)が、抵当権者が民法371条の規定によって、その果実に対して優先弁済権を行使してきたときは、果実を収取することができなくなります。

(2)売却手続き
 競売開始決定の後、裁判所は、執行官に現況調査を命じ、評価人を選任して、これら現況調査及び評価に基づき、適正な売却条件を決定します。評価人の評価に基づいて売却基準価額を定めます(同法60条)。裁判所書記官は、売却方法決定し(同法64条1項)、入札又は競り売りによるときは売却日時を定めて執行官に売却させます(同条3項)。裁判所は、売却決定期日を開いて、最高価買受申出人につき売却の許可・不許可の決定を行います(同法69条)。売却許可決定の確定によって最高価買受け申出人が当該不動産の競落人になります(民事執行法では、この競落人を買受人と呼んでいます)。

(3)売却の効果
 買受人は、裁判所の定める期限までに代金を納付しなければなりません(同法78条1項)。買受人は、代金を納付したときに不動産の所有権を取得します (同法79条)。買受人が代金を納付しないときは、売却許可決定は効力を失います(同法80条1項)。買受人の代金納付後は、抵当権の不存在・消滅を理由として、買受人の所有権の取得を争うことはできません(同法184条)。もっとも、抵当権設定者がそもそも抵当不動産の所有者でなかった場合には、我国では登記簿にも競売にも公信力がないとされていますので、真実の所有権者は自己の所有権を主張することができ、その結果、競売の効果は覆され、買受人は当該不動産の所有権を取得することができなくなります。更に、不動産上に存する先取特権、使用・収益をしない旨の定めのある質権・抵当権及び仮登記担保権は売却によって消滅します(同法59条1項、仮登記担保法16条)。これら以外の権利のうち、売却によって消滅する抵当権に優先する権利(つまり、この抵当権者に対抗することができる権利)は、売却によって消滅しません。この売却によって消滅しない用益権・質権及び留置権は、買受人に引き受けられますが、利害関係人の同意に基づいて特別の売却条件で売却された場合には、その定めによります。
 最後に、買受人の代金納付があると、裁判所書記官は、買受け人の取得した所有権の移転の登記、売却によって消滅した権利等の登記の抹消を嘱託しなければなりません。(民事執行法82条1項)。したがって、買受人は自ら登記手続をする必要はありません。

対応策

以上のとおりで、読んで頂ければ分かるように高度に専門的で複雑な手続ですので、手続ですので、注意が必要です。弁護士に依頼することも含めて、十分な注意が必要です。

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