法律Q&A

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代物弁済

弁護士 菊地 健治
2000年10月:掲載

返済に代えて代物弁済を受ける場合の手続と効果は

当社は、A社に対して1000万円の売掛金債権を持っていましたが、A社から1000万円の支払いをする代わりに、1000万円相当のA社が所有している土地を譲り渡すことで支払いに代えてほしいと言われました。当社はこの土地で支払いを受けてもいいと思っていますが、何か、土地を譲り受けるにあたって注意点はありますか。

譲り受ける物の価格を正確に評価する必要があります。

1.
  債務者が本来有している債務の内容とは異なる他の物を給付することによって、債務を消滅させることを代物弁済といいます(民法482条)。債務者にもはや債務を履行するための金銭がなく、物しかないようなときに、考えられる債権の最終的な回収方法です。
 代物弁済を受けるときには、次の点に注意をしなければなりません。
2.
 代わりに給付を受ける物の価格が、債権額よりも小さいものであっても、債権は全額が消滅してしまいます。例えば、1000万円の債権を有している債権者が、500万円相当の物品の給付を代物弁済として受けた場合、1000万円全額の債権が消滅してしまい、債務者にそれ以上の請求をすることができなくなります。
 したがって、もし、債権の一部について代物弁済を受けるというのであれば、契約書をきちんと作成して、「債権のうち金500万円部分について代物弁済を受ける」旨書面上で明らかにしておく必要があります。
3.
 代物弁済において、不相当に高額な品物の給付を受けると、代物弁済行為を無効にされるおそれがあります。
例えば、1000万円の債権を有する債権者が、1億円相当の物品の給付を受けた場合、代物弁済行為が暴利行為として公序良俗違反(民法90条)によって、無効と評価される場合があります。
 また、債権者が他にもいる場合には、このような債権に比して高額な物の給付を受けますと、他の債権者を害する行為であるとして、債権者取消権(民法424条)による取消を受けることになります。
 この場合、取消が認められますと、給付を受けた物を返還しなければならなくなります。
 したがって、給付を受ける物の価格を正確に評価することが重要です。
4.
 不動産で代物弁済を受けるときには、代物弁済は、給付が完了しなければ債権の消滅という効果は生じないので、所有権の移転登記が完了した段階で、債権が消滅することになります。
 したがって、それまでに登記の名義を第三者に移転されてしまうと、代物弁済を受けることができなくなります。
 このような場合に備えて、代物弁済を受ける前に、所有権移転の登記の仮登記を代物弁済の予約名目で行っておけば、第三者に対抗できますので安全です。
5.
 給付を受ける物が債務者の所有であっても、債務者が他社から買い受けた商品であったりすると、債務者が他社との清算を済ませていないときには、動産売買の先取特権を主張されたりすることがあるので、他社から債務者に対して納入された商品を代物弁済で譲渡を受けるときには注意が必要です。

対応策

 代物弁済は、債務者の倒産前後に債権回収方法として行われることが多く、そのようなときに代物弁済を受けることは、他の債権者から取消などのターゲットにされる可能性が充分にあります。
 ですから、代物弁済行為が取り消されたりすることのないように、契約書を必ず作成し、代物弁済で給付を受ける物の価格を正確に評価することを怠らないようにすることが重要であると考えます。

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