法律Q&A

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支払命令

弁護士 相川 泰男
1997年4月:掲載

支払命令の申立方法とは。

裁判上の簡易な督促手続に支払命令の申立てという方法があると聞きました。どのような手続をすればよいのでしょうか。

簡易裁判所に支払命令申立書を提出し、仮執行宣言付支払命令が発令されると強制執行ができます。

1.支払命令とは
 支払命令は、督促手続とも呼ばれ、債権の存在について争いのない場合に、簡易迅速に確定判決と同様の効果を得られる手続です。
 支払命令は、裁判所が、債務者の言い分を聞かずに、債権者の申立てのみを書面審査して発令し、不服のある債務者は支払命令に対して異議申立てをするという手続になっています。債務者から異議申立てがあると、自動的に通常の訴訟に移行することになるので、この手続は、債権の存在に争いのない場合に利用するのが適当です。 支払命令申立ての要件は、まず、金銭その他の代替物または有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求であることが必要です。つまり、支払命令は、貸金や売掛金などのもっぱら金銭請求のために設けられた手続で、家屋明渡などの請求について申し立てることはできません。また、債務者に公示送達の方法によらないで支払命令を送達できる場合でなければなりませんから、債務者の居所が全くわからないときはこの手続を利用できません(民訴法382条但書)。

対応策

1.支払命令の申立手続
 支払命令の申立てをするには、債務者の住所を管轄する簡易裁判所に、請求の趣旨および請求の原因を記載した支払命令申立書を提出します。
 支払命令の申立手続は、債権者の申立てだけを書面審査するのが原則ですから、証拠書類などを添付する必要がありません。申立書に、債権の発生根拠となる事実の「請求の原因」から、矛盾なく「請求の趣旨」が導き出されるよう記載されていれば、支払命令は発令されることになります。
 また、支払命令を申し立てる場合の手数料の額は、訴えを提起する場合の手数料の額の半額です。申立てにあたり、この手数料のほか、この督促手続に要した費用も債務者に請求することができます。

2.支払命令発令後の措置
 裁判所から支払命令が発令されても、債務者が任意に支払をしないときは、強制執行により債権回収を図ることになります。そこで、支払命令に引き続いて仮執行宣言の申立てを行い、債務名義となる仮執行宣言付支払命令を得る必要があります。この仮執行宣言の申立て期間は、債務者に支払命令が送達された日から2週間の異議申立期間が経過した後、その日から30日以内です。債権者が期間内にこの申立てをしないと、支払命令そのものが効力を失うことになるので特に注意が必要です。
 この仮執行宣言の申立てをすると、裁判所は、債務者から異議申立てがない場合には、仮執行宣言を付し、これを記載した仮執行宣言付支払命令を再び当事者に送達します。 仮執行宣言付支払命令は債務名義になりますので、これが送達されると直ちに強制執行に着手することができます。更に、債務者が仮執行宣言付支払命令の送達を受けた日から2週間以内に異議を申立てないと、支払命令は確定し、以後確定判決と同一の効力を有するものとして扱われます。
 なお、債務者からいずれかの段階で異議申立てがあると、この請求については、支払命令申立てのときに訴えの提起があったものとみなされるので、その後は通常の民事訴訟として進行します。ただし、当初の支払命令に対する異議申立てがあると支払命令の効力そのものが失われるのに対し、仮執行宣言付支払命令に対する異議申立ては、支払命令が確定することを妨げるものの、その執行を停止する効果はないので、別途債務者の執行停止の申立てが認められない限り、債権者はこの仮執行宣言付支払命令に基づいて強制執行の手続をとることができます。

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