法律Q&A

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手形の不渡りに対する対応(その1:手形の依頼返却の制度)

弁護士 菊地 健治
2000年10月:掲載

取引先の送金ミスで当座預金が不足して手形が不渡りになりそうです。取引先と交渉してなんとかできませんか?

入金予定の取引先のA社に確認したところ、既に送金手続も終わったとのことでしたので、「今年も無事に何とか終わった」とほっとしていましたが、B銀行の担当者から「当座資金が不足しているのでこのままではY社の手形が不渡りになりますよ。」との連絡が入りました。あわててA社に確認したところ、経理担当者がうっかり送金先をC社と間違えてしまい、新たに送金するのに3日かかるとのことです。Y社と交渉して何とか手形不渡事故の発生を回避する方法はありませんか。

Y社に手形の依頼返却の交渉をします。

1.
 約束手形の振出人は、6カ月以内に手形を二度不渡りにすると、2年間銀行取引停止処分になるという制裁処分があります。銀行取引停止処分になっても会社自体の事業は継続できますが、取引先に対する会社の信用は大きく失ってしまい、実際会社を継続するのは不可能になるといっても過言ではない位、銀行取引停止処分というのは大きな制裁であります。
 そのために、会社経営者は自社の振り出した手形が満期日に決済できるよう、満期前には決済資金の調達に必死になるのです。
2.
 約束手形の支払は、手形所持人が取引銀行に手形を持ち込み、取引銀行が手形交換所にこれを持ち込んで互いに自らの銀行が支払先になっている手形を交換して決済を行う手続を採っています。
3.
 手形の所持人が銀行に取り立てに手形を回すことを取り立ての委任といいます。銀行は取り立ての委任に基づいて、所持人のために手形の決済を行うのです。
4.
 このように手形の所持人が、手形を現金化するのは、銀行への取り立て委任の方法で行うわけですから、Y社にこの銀行への取り立て委任を解除してもらえば、手形が決済されることはないわけです。取り立て委任の解除は取り立てを委任した手形の所持人からしかできませんから、あなたの方からY社に対して事情を説明して、銀行への取り立て委任を解除してもらい、手形を返却してもらうしかありません。
 このような一度取り立てにまわした手形を所持人が銀行から返還してもらうことを手形の依頼返却といいます。
 取引先に手形の依頼返却をお願いする典型的な場合は、本件のように決済資金が不足して、手形の不渡りを出すことが確実な場合に不渡り処分を避けるために行われます。
 しかし、依頼返却をお願いするということは、資金的に行き詰まっていることを意味しますから、取引先に対する信用は不渡りを出すのと同じくらい低下してしまいます。

対応策

1.
 本件の場合は、あなたの会社が資金的に行き詰まったために依頼返却をお願いするわけではなく、単なる取引先の送金ミスが原因ですから、Y社に対しては、その事情をよく説明した上で依頼返却のお願いをするべきです。
 そして、その入金があれば支払えることを説明し、依頼返却してもらいましょう。そのためには取引先のA社の人を同行してY社に説明するとなお良いと思います。

2.
 Y社は、無条件に依頼返却に応じるとは限りません。たとえば、別の手形の振出を要求するとか、現金を何日以内に持参して支払うとかなどです。依頼返却のお願いをするにあたっては、どうやってY社への支払いを確実にすることができるか、同時に説明する必要があるでしょう。そうすれば、Y社も依頼返却をしてくれるでしょう。

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