法律Q&A

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手形の不渡りに対する対応(その2:会社の再建又は清算のための手続)

弁護士 菊地 健治
2000年10月:掲載

資金繰りがつかず不渡りが出そうなのですが、どう対処したらよいでしょうか。

当社は広大な土地等の資産を保有しておりますが、いわゆるバブル経済の崩壊後の平成不況のあおりをまともに受け、3期連続で赤字を続けております。景気も上向きになっており、大型の取引がまとまりかけていますので、「あと少し頑張れば。」と思っていた矢先、大口取引先が倒産したため、街金融から一時的に借金してしのいでいたのですが、金利が膨らんでこのままではどうしようもなくなり、このままでは当社も手形の不渡りを出しかねない状況に追い込まれました。法的に対処するとしたらどのような制度があるのでしょうか。

早期に清算か再建かの選択をします。

1.
  会社が資金的に行き詰まり、債務超過の状態に陥るなどして会社経営を継続することができなくなったときを会社の倒産といいます。
 手形の不渡りを出すということは決済資金を用意できないということですから、会社の倒産といえます。また、手形は6カ月以内に二度の不渡りを出すと銀行 取引停止処分を受け、会社の信用はなくなってしまいますから、事業継続することはほとんど不可能になります。
2.
 会社が倒産したときに会社の債務を整理しなければなりませんが、この方法としては、会社を清算するか、再建するかという点からと、裁判上の手続で行うか、それとも裁判所への申立を行わずに会社が債権者と交渉することによって債務を整理する方法(これを任意整理とか私的整理といいます)の二点から分類することができます。
3.
 裁判上の手続は、裁判所の監督の下に手続が進行しますから、公平、公正な手続が期待できる一方、倒産会社の財産の換価等の手続に時間と費用がかかるため、債権者への配当まで場合によっては何年も待たなければならないことがあります。
4.
 裁判所を用いない任意整理の場合は、費用が安くあがり、時間もかからず、弾力的かつ柔軟な債務整理ができますが、いわゆる整理屋(暴力的手段を用いて債務整理手続に介入して金員を要求する者)等が債権者のなかにいた場合など、一部の債権者が不当に利得を得る恐れがあるようなときは手続を進行させることができないという短所があります。
5.
 裁判上の手続で清算型の手段には、破産、特別清算があります。特別清算は株式会社のみに適用がありますから、有限会社の清算手続は破産のみです。
 裁判上の手続で再建型の手続には、民事再生、会社整理、会社更生があります。会社整理、会社更生は株式会社のみに適用され、特に会社更生は債権者の権利行使が大幅に制限されるため、会社をつぶすことが社会的に大きな影響を与えるような大きな株式会社の倒産のときに用いられます。
 一方、民事再生は、平成12年4月より施行された民事再生法に基づく手続で、従来の問題の多かった和議手続を改めた新しい手続です。最近では、そごうがこの手続で処理されています。
6.
 任意整理は、清算型、再建型いずれも考えられます。いわゆるバブル崩壊後倒産する会社数は増える一方ですが、そのほとんど(約9割)は任意整理によって処理されています。裁判上の手続だと費用と時間がかかることが原因と思われます。

対応策

1.
 したがって、会社が倒産するときには、解説で述べた各手続の長所短所を考慮に入れていずれの手続を選択するか決定しなければなりません。

2.
 本件では、あなたの会社は街金融から借金をしているということですが、この街金融が利息制限法を超えるような利息をとる違法業務を行っている暴力金融業者のような場合には、債権者が公平、平等に扱うことが不可能と考えられるので、任意整理を選択することは避けるべきです。
 裁判上の手続で再建型、清算型のいずれを選択するかですが、今後仕事の受注が見込めること、会社所有の財産を担保にとっている金融機関や大口債権者が債権の一部免除や分割払いに応じる見込みがあること、など会社経営にとってプラスの要素がある場合には再建も可能であると思いますが、今後借金や利息が増えるだけの結果が予想される場合には、早期に清算型の手続を選択するべきです。

予防策

 本件の場合には、事前に取引先の情報収集を積極的に行っていれば、連鎖倒産を防ぐことが可能であったかもしれません。また、街金融から借金をする前に、債務の整理を行っていれば会社経営を継続することができたかもしれません。
倒産を防ぐには、取引先の情報収集を絶えず行い、早期に対策をたてることが重要です。

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